2024年11月22日( 金 )

世界と日本の経済と人口の行方は?(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS、中川十郎会長)より赤阪清隆元国連事務次長・元国連大使の世界情勢に関する論考を提供していただいたので共有する。

 ウクライナ戦争、イスラエルとハマスの戦争など、先の見えない混沌とした国際情勢が続いています。ロシアにプーチン、中国に習近平、北朝鮮に金正恩など、権威主義国のリーダーが、まるで世界の時計がストップしたかのように、いつまでも権力の座に居座っています。そこに、トランプ前米大統領がまた返り咲きかねないというのですから、世界は前に進むどころか、泥沼にはまり込んで動けないような状態ですね。現在の国際情勢を覆う共通の感情は、出口の見えない「閉塞感」といってもいいのではないかと思われます。

 そこで、このような世界のなかでわたしたちはどう生きたらよいのかという難しいテーマで、先日新潟で講演をしてまいりました。食の新潟国際賞財団のご親切なお招きを受けて、「激動する世界情勢と食料問題」と題する講演会で、私と国連世界食糧計画(WFP)の津村康博日本事務所代表のそれぞれの講演でした。

 皆さんに少しご注目いただきたい点だけを取りあげますと、以下の通りです。

 (1)世界は、自由主義国圏と権威主義国圏に分断されているわけですが、その間を右往左往する、いわゆるグローバルサウスの国々の存在感が増大しています。そして、驚くべきことに、最近の世論調査では、ロシアに好感を持つ新興国・途上国が増加しており(スライド4)、また、ASEAN10カ国中、米中なら「中国を選ぶべき」とする人々が過半数を占めたということです(スライド5)。

 (2)トランプがもし再選されたら、という「もしトラ」の場合に起きうるシナリオについては、佐々江賢一郎元駐米大使の日本記者クラブでの発言要旨をまとめました(スライド8)。英国のフィナンシャル・タイムズ紙のコメントは明快です。トランプには、「カネの亡者」として対応するのがよいとすすめています。「金で動く人物なのだ。それも法外な金額でなくてもいい」と言い切っています(スライド9)。

 (3)中国の経済力が米国を追い抜くのかどうかについては、これまで諸説が飛び交ってきました。以前、2030年ごろには中国のGDPは米国を追い抜くと見られていましたが、22年12月に日本経済研究センターが米国越えは困難となったと発表して、「なんだ、米国が世界一を続けるのか」と思わせました。ところが、23年12月には、英国のシンクタンクが、37年には米中のGDPが逆転するとの予測を発表して、「やはりそうか」という状況です(スライド11,12)。この予測で注目されるのは、38年には、中、米、インドに続いて、日本が4位に残っていることです。現在の日本の経済力は、米、中、ドイツに続く4位で、もうすぐインドに抜かれると巷では予測されているのですが、どっこい、ドイツは再び日本の後を追うことになるとのことです。それでも、現在のような円安が続けば、このような予測もどうなることやら。

 (4)これからは、データとAI(人工知能)の世紀になることは間違いがないと思います。すでに企業へのAIの導入が日米とも急速に進んでいます(スライド14~17)。

(つづく)

(後)

関連キーワード

関連記事