福岡県議会の公費海外視察は無駄?~議員外交の重要性
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福岡県議会の主要会派の代表などが、4月に南アフリカなどを公費で視察・訪問したことが問題となっている。主な目的は、次期世界獣医師会会長に、蔵内勇夫県議の就任が決定した大会への出席であり、議員外交のはたす役割は小さくない。
ワンヘルス国際会議招聘の大義
そもそも、今回の海外派遣の目的は、どのようなものだったのか。県議会の重鎮である蔵内氏が、世界獣医師会の会長に就任するにあたり、南アフリカ・ケープタウンで開催される大会や、アクロス福岡に福岡本部を置く国連人間居住計画(ハビタット)本部(ケニア)も訪問し、ワンヘルスの国際会議の福岡誘致を目指すという大義のもと、行われた訪問であった。
服部誠太郎福岡県知事も、県政の重点政策にワンヘルスの推進を掲げて、取り組んできており、世界会長のお披露目でもある大会に、蔵内氏1人というわけにはいかない。
議会事務局によると、香原勝司議長、自民党県議団、民主県政県議団、新政会の代表ら5人と議会事務局職員5人が公費派遣された。ほか自民党を中心に11人の県議が参加した。
今回の海外派遣を議決した2月定例会では、訪問の目的を「ワンヘルスの国際会議の誘致」とし、視察先を世界獣医師会の大会が開催される南アフリカとハビタット本部のあるケニアの2カ国としていたが、実際にはドバイも訪問していた。さらに費用の見積もりが示されていなかった。これを一部メディアが問題視し、報じたことで多くの県民が知るところとなり、「税金の無駄遣い」など批判が噴出した。
高まる批判を受け、7日夕方、県議会議長室に、香原議長と自民、民主、新政の3会派代表が集まり、県政記者クラブ加盟の一部報道機関に対して報告書を開示した。香原議長は「視察は適切だった」と強調している。
近年、生活が苦しい人も増えているなか、議員の海外視察には厳しい目が向けられている。香川県議会では、2023年11月に行われたブラジルなどへの海外派遣は「違法で不当な公金の支出である」として、市民団体が費用の返還を求める住民監査請求を行う事態になっている。香川県議会の場合も、福岡県同様、参加した議員は「海外の県人会との友好関係強化は、県の発展に成果をもたらす」と海外派遣の意義を強調している。
萎縮しかねない議員外交
今回の問題を受けて、実際に南アフリカなどを訪問した県議を含めて、話を聞くと、「議員外交、友好親善の必要性」に関して一様に認めていた。一方で「どれだけの費用対効果が得られるのかなど考えるべき点はある」との声も聞かれた。
外交の主体は、主権国家であり、その国を代表する政府が担うことが基本だが、議員外交やNGOなどの交流活動も「セカンドトラック」と呼ばれ、近年、重要度が高まっている。
福岡県議会は、従来から、国際交流が盛んであり、中国、韓国、台湾、タイなどアジア諸国を中心にさまざまな国との友好議員連盟がつくられている。
外交は、時間をかけてお互いの信頼関係を深めていく必要がある。議員外交といえども日本、福岡県を代表してのものであり、それに見合った品位が求められる。円安などの影響を考えると一概に旅費が高すぎるとはいえないだろう。今回の件で、そうした議員外交、国際交流までもが委縮してしまうことが懸念される。
蔵内氏は、各地での講演などにおいて「人獣共通感染症が発生するのは世界のなかでもアジアからである」と警鐘を鳴らしてきた。新型コロナ感染症の世界的流行などを受けて、グローバルな観点での人と動物に共通する人獣共通感染症への対策が急務となるなか、人や動物、生態系の健康を1つとみなす「ワンヘルス」の考え方に注目が集まっている。
今回の世界大会への出席は、ワンヘルスの普及において、重要な意味をもち、多くの県議会議員を帯同した訪問を通じて、福岡をアピールするまたとない機会になったことは間違いない。見直すべき点は見直すとしても、福岡県と海外との関係を構築する取り組みは、続けていただきたい。
最後に1つ苦言を呈しておきたい。今回の報告書の公開は異例だが、視察・訪問の成果を示す海外視察報告書は、情報公開請求を行わないと確認することができない。
昨日の会見も、一部報道機関しか出席しておらず、県議会事務局は、県政記者クラブ未加盟の当社に対して、報告書の公開を拒んでいる。大手メディアには出しても、その他のメディアには出さないというのは、明らかな差別である。問題は、海外派遣の費用よりも情報公開に対する消極性ではないか。
国政における政治資金の在り方などが問題となっているが、地方議会の在り方も旧態依然としたものでよいのか。もう一度原点に立ち返って考えることが求められている。
【近藤 将勝】
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