中国はドルや米国債を見放し、金(ゴールド)確保に走り出した。日本はどうする?
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NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、5月24日付の記事を紹介する。イランのライシ大統領の乗ったヘリコプターが墜落し、同大統領と同乗していた外務大臣ら8人が死亡しました。現時点では墜落の原因は不明ですが、イラン国内の反政府勢力の関与やイスラエルによる工作ではないかと言った見方が広がっています。
いずれにせよ、この事件が引き金になったかのように、その直後から金の取引価格が急騰し始めました。スポット買いは1オンス2,450ドルと高値を更新。金につられるように、銀やレアメタル系の価格も急上昇しています。
要は、投資家の間では「ライシ大統領の死によって、イランとイスラエルの戦争が本格化する可能性が高い。中東の政治、経済情勢は不安定化するだろう。原油価格も揺れるはずだ。今のうちに安全なゴールドを買い増しておくのが得策だ」という判断が巻き起こった模様です。
実は、今回のライシ大統領の死亡事件が発生する前から、中国が主導するかたちで、各国の中央銀行や投資家の間では金の買い入れが猛スピードで進んでいました。いうまでもなく、日本でも投資家の間では非常時に備える意味もあり、裏付けのないドルや国債を手放し、金に乗り換える動きが顕著になってきたことは間違いありません。
そうした流れを受けて、あの「安売り」で知られる「コストコ」のアメリカ本店ではスイス製と南アフリカ製の金の延べ棒の販売を始め、大きな話題となっています。コストコといえば、日本でも人気を集める日用品の大量販売店ですが、災害や緊急事態に備えて非常食の缶詰やドライフードが売れ筋となっていたものです。
しかし、本場のアメリカでは景気の先行き不安に加えて、治安の悪化やドルへの信用失墜から、消費者が安全パイとしての「金」へ注目するようになったものと思われます。そこに注目したコストコは昨年9月から金の通信販売を始めました。すでに1億ドルを優に超える売上を記録。
世界的にも金の需要は高まる一方で、なかでも顕著なのは中国の投資家です。中国の中央銀行はこれまでにないペースで金の購入と備蓄を進めています。加えて、中国は530億ドル相当の米国債を2024年の第一四半期に放出しました。
その背景には、中国が直面している経済的困窮が隠されている模様です。さらに、アメリカの国債やドルを手放すことで、人民元の価値を高めようとする意図も隠されているとの指摘もあります。しかも、アメリカ政府は中国からの輸入商品に高関税を課すようになりました。
万が一、トランプ氏が大統領にカムバックした暁には、本人も公言しているように、これまで以上の対中経済制裁に踏み切る可能性があります。中国とすれば、あらゆる可能性を視野に入れ、アメリカ依存度を低めておこうという魂胆に違いありません。
これまで中国はアメリカとの通商貿易関係を拡大してきましたが、アメリカ政府が直面している財政赤字や予算問題にも危機感を募らせ始めているわけです。アメリカの2023年度の財政赤字は、1兆7,000億ドルを突破し、国家の負債は33兆5,000億ドルにも達しています。これほど深刻な財政危機に陥っているアメリカのドルや赤字国債を買い支えるリスクは、もっていれば膨らむばかりでしょう。
中国の人民銀行は2002年から2019年の間に、1,448tの金を確保したと公表。恐らく実際には、それをはるかに上回る金を世界中から、とくに最近はロシアから大量に調達している模様です。
金の購入を加速させているのは、中国に限りません。非ヨーロッパ諸国の間では、2022年に過去最大となる1,136tの金がシンガポールやインドなどの中央銀行によって、買い増しされ、その動きは今も続いています。BRICSのなかでも、ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国だけで、この10年間でほぼ3,000tもの金を購入しています。
日本においても、こうした脱ドル化の動きと新たな金本位主義的な経済政策が求められるようになってきました。
世界情勢は不安定さを増すばかり。第3次世界大戦の可能性も指摘されるほどです。となれば、金の市場価格はまだまだ高まっていくものと予測されます。
著者:浜田和幸
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