2024年07月04日( 木 )

中国は原発でも人工知能(AI)の開発速度でもアメリカを追い抜いた!

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、6月28日付の記事を紹介する。

AI イメージ    中国とアメリカの技術開発競争は中国に軍配が挙がりそうです。たとえば、原子力発電に関していえば、中国はアメリカに15年近くも差を付けていることが、アメリカの情報技術イノベーション財団の最新研究で明らかにされました。

 中国は現在、56カ所で原発を稼働させながら、新たに27カ所で建設中です。このペースで行けば、2030年までに中国はアメリカを抜くことが確実視されています。アメリカではジョージア州で2基の原発を建設中ですが、当初の予定より完成は大幅に遅れ、しかも予算はオーバーしているため、新たな建設計画はゼロです。

 かつてニクソン大統領は1973年のオイルショックを機に、「2000年までに1000基の原発を建造する」と豪語していましたが、今では誰も覚えていません。しかも、中国の強みは第4世代の原発開発技術において世界をリードしているという点です。今後は、中国製の原発が世界の主流に君臨する可能性が出てきています。

 中国の強みは原発に限りません。現在進行中のアメリカの大統領選挙戦においても、中国はAIロボットを使ってアメリカの有権者になりすまし、政治的プロパガンダを拡散しています。 

 マイクロソフトによると、中国が背後で操る偽のソーシャルメディア・アカウントのネットワークが稼働しており、アメリカ社会の分断を狙ってのことでしょうが、選挙結果を左右する危険性も生まれている模様です。中国公安部は「生成AI」と呼ばれる技術を利用してアメリカの有権者を模倣し、これまでよりも「目を引くキャンペーン」を展開しているとのこと。

 しかも、最新のマイクロソフトの分析によれば、「中国の作成している画像は、AIを使用して魅力的な画像を作成するだけでなく、時間とともにそれらを改善する方法を学習するディフュージョン駆動型の画像生成器によって作成されたものと推察できる」というのです。マイクロソフトが驚くレベルまで、中国のAI技術は進化を遂げていることがうかがえます。

 さらに注目すべきは、中国が運営するAIボットネットワークの焦点の当て方がアメリカの国内事情を徹底的に分析している点です。具体的には、銃の暴力や人種差別など、国内が分裂するようなテーマや、アメリカの著名な政治家やシンボル的存在を貶めることに焦点を当てたスキャンダルなどを「さもありなん」と納得させるようなかたちで次々と繰り出しています。

 マイクロソフトが中国製の偽装画像として取り上げているのが、「自由の女神」が攻撃用ライフルを掲げ持っているもので、その説明書きには次のような説明が添えられているのです。

 「アメリカではすべてが捨てられています。自由も捨てられました。その象徴がこの暴力の女神です」

 一事が万事で、中国のプロパガンダ画像は、安物の中国製偽ブランド製品の宣伝と同様に、これまでは非常に安っぽく偽装されていました。ところが、中国が運営するAIボットがインターネットを乗っ取り、「偽ニュース」や「プロパガンダ」を巧妙に拡散することで、画像処理やメッセージの内容もアメリカ人の深層心理により巧妙に訴えるように進化してきているのです。このままでは、アメリカ人の思考回路もコントロールされかねず、新たな脅威として成長する恐れすらあります。

 現時点ではまだ限定的ですが、そのうち選挙に限らず、次世代のエネルギーに関してもアメリカ人の生活全体を一定方向に誘導するような可能性もあり得るという話です。こうした状況が進めば、アメリカのみならず日本にも情報操作やエネルギー源のコントロールという未曾有の津波が押し寄せることになりかねません。


著者:浜田和幸
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