2024年12月22日( 日 )

お盆にお墓と向き合う~家族、生き方、お墓が変わる(後)新しいお墓のかたち

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 今年もまたお盆の季節がやってきた。お墓を訪れるのは1年でこのときばかりという人も少なくないだろう。しかし、お墓の問題はいずれ誰もが何らかの形で直面しなくてはならない問題だ。お盆はお墓のことについて改めて考える良い機会である。
 昨年9月にお墓について連載した記事を改編して再掲する。

家墓以外の選択──樹木葬の例

 (株)鎌倉新書(東京都中央区)が運営する日本最大級のお墓の情報サイト「いいお墓」が、2023年1月に実施した「第14回 お墓の消費者全国実態調査(2023 年)」の調査結果を発表した。「いいお墓」経由でお墓を購入した人にアンケートしたもので、購入したお墓の種類としては「樹木葬」が51.8%でトップ。次いで「納骨堂」20.2%、「一般墓」19.1%となり、初めて樹木葬が過半数を超えたことが分かった。

樹木葬の例(新宮霊園)
樹木葬の例(新宮霊園)

    樹木葬とは、霊園等によって異なるものの、一般的には樹木を墓標の代わりとする永代供養墓のいち形式である。樹木の下に個別の区画をとって納骨され、墓標が置かれる。13回忌や33回忌などを区切りに、遺骨は合祀墓へまとめられ、墓標は整理される。合祀墓とは遺骨がまとめられるお墓のことで、まとめられた後は遺骨を分けて取り出すことはできなくなる。

 最初から合祀型の樹木葬もあるが、個別の区画を設ける場合は基本的に、個人墓あるいは夫婦墓、埋葬人数が多くても6人程度のひと家族だけが入る規模の墓である。墓所の維持管理や合同供養は霊園や寺院が行うため、墓守は必要ではない。つまり、お墓の維持を承継者に委ねず、納骨からその後の管理と墓仕舞いまでを、すべて納骨される本人が生前に決定し負担するお墓だ。それが樹木葬という形式で受け入れられるのは、自分の死を委ねる相手が子どもや子孫から樹木=自然へ移ったことを象徴的に表す納骨のかたちだからだろう。

「ご先祖様のお墓」から
「自分と承継者のためのお墓」へ

 樹木葬の人気が示しているのは、自分の死後の葬られ方は自分で決めるとともに、後代に負担を残さない墓地形式に対する要望の高まりだ。「〇〇家之墓」といった従来の家墓は、家父長制を背景に、お墓に入る権利とご先祖様を祀りお墓を守る義務とが紐づいていた。しかし、家族のかたちが変わることによって、お墓を立てるうえで配慮すべき対象が大きく変わりつつある。

 少子高齢化や非婚の増加によって、死後にお墓の承継者がいないことを前提に、納骨後のお墓の管理や墓仕舞いまで明確にプラン化された個人墓を買い求める人が増えている。また、そのようなお墓を買い求める人は、家墓をもたない人ばかりではない。すでに自分が入る権利を有する家墓をもちながら、それを墓仕舞いして、ふたりだけの小さな夫婦墓に入る、あるいは個人墓に入るという選択肢を取る人もいる。遠方に住む子どもに墓守の負担をかけたくない、自分の死後のことは自分で責任をもって自分で決めたいなど、理由はさまざまだ。

 お墓は今、ご先祖様という観念から解き放たれ、自分自身の死の象徴として意義づけを変えつつある。自分が生きているうちに墓を買い(生前墓)、あらかじめ自分の死後の始末をつけておくことが、この世の仕事の1つになりつつある。ラテン語には「メメント・モリ(死を想え)」という格言があるが、生前における死の自覚は、人生を豊かにする自己決定権の1つとして、ますます意義を高めていくことと思われる。

新しいお墓の提案~新宮霊園の例

 ここからは新宮霊園を例に、新しいお墓の具体例を見ていこう。

 福岡県糟屋郡新宮町にある、「格調とやすらぎの公園墓地」として知られる新宮霊園。開園は1978年、2023年で45年を迎えた。長渕剛のコマーシャルソングが流れるテレビCMでも有名だ。そのような歴史ある霊園が、時代の最前線で新しいお墓のかたちを提案している。

前方後円墳型永久墓

 新宮霊園は2022年4月から、前方後円墳型永久墓を売り出した。見晴らしがよい丘の上にある墳墓は、全長53m、円墳部分は直径16.3m、高さ3.5m、全体が瑞々しい緑の芝生で覆われる。この墳墓上に1人分30cm四方の区画をとり、15cmほど掘り下げた場所に骨壺が入る程度の納骨室がある。埋葬方法は、遺骨を土に返すために、綿の納骨袋に遺骨を入れて埋葬する方法と、骨壺に入れたまま埋葬する方法を選ぶことができる。埋葬された場所には番号札が置かれ、墳墓そばに建てられた銘板に埋葬された個人の名前とそれぞれの埋葬場所を示す番号が記されている。墳墓全体で3,100人分を納骨できる。

 価格は1区画(1人分)が28万円。家族や友人で複数区画をまとめて購入することもできる。その場合割引が適用され、2人目25万円、3人目22万円、4人以上は20万円となる。また、1人あたり別途7万7,000円の永久管理費が必要となる。以上の費用に埋葬手数料、名前彫刻料、供養料、墓所の維持管理費など一切が含まれ、これ以外の費用はかからない。一般的な永代供養と異なり、後年に合祀や納骨場所の撤去は行われず、永久に個人区画として保証される。墓守の負担を誰にもかけることなく、毎月1回、霊園による合同法要が執り行われ、霊園がお墓の管理の一切を約束する。

 古墳の周囲には死者の魂を鎮めるために素焼きの埴輪(はにわ)が40体ほど並ぶ。静謐であるが、暗さはまったくない。明るくすがすがしいお墓だ。見学にきて、即決する人が後を絶たないという話がよく分かる。個人で1人分を購入する人はもちろん、友人同士で購入する人もいれば、最大7人分をまとめて購入した人もあったという。22年4月の販売開始以降、予想を上回る売れ行きで、1年余りで1,000人分が契約された。

 古墳という歴史的文化的にも考慮されたお墓の形態をとったことも興味深い。弥生時代後の3世紀から飛鳥時代前の7世紀頃まで、古墳が多くつくられた時代として古墳時代と呼ぶが、大陸・朝鮮半島とも交流があった九州北部は古墳が多くある地域で、古墳を採用するにふさわしい。開発にあたっては、八女市などにある「八女古墳群」を視察するなどして、慎重に構想を温めたという。

 埋葬は因習に従うところが大きい。新しい形式の墓を購入しようとする場合、近代の伝統となっていた家族墓の形式から外れることに、なにがしかの不安を感じる人もいるかもしれない。しかし、はるか古代に営まれた古墳という形をとることによって、歴史と親和する埋葬として死後の安らかな眠りを感じさせる効果があるのだと思われる。

明るく楽しい霊園へ

 新宮霊園は古墳型永久墓以外にも新しい形式のお墓を提案している。

 新宮霊園のなかでもひときわ見晴らしがよい、小高い丘の上に整備された区画に、樹木葬、ガーデン墓、桜墓、特別墓がある。すべての墓石の高さが目線よりも低く設定されているため、墓地全体の見通しが良く、明るい空間になっている。また、よく手入れされた樹木や草花が墓石に寄り添い華やかさを添えている。ここでは墓地が決して暗い、怖い場所ではなく、むしろ明るく楽しい場所となるように工夫されている。ここに新宮霊園が提案する新しい霊園のかたちがある。

見晴らしの良い高台にある墓地、遠くには玄界灘の相島も見える~新宮霊園の新区画
見晴らしの良い高台にある墓地、
遠くには玄界灘の相島も見える
~新宮霊園の新区画

樹木葬

 新しいお墓の形式で代表的なものは樹木葬だ。冒頭で触れたように近年、樹木葬に対する需要は大きい。豊かな自然に囲まれた新宮霊園にも樹木葬がある。墓石の周りには日々成長していく樹木が植えられ、故人への弔いと、また故人になっても心のなかに生き続ける永遠の命の象徴のように植物がお墓に寄り添い、訪れる人を慰める。新宮霊園の樹木葬では、2人用から6人用までのお墓が用意されている。お墓のタイプによって年間共益費が異なっている。墓じまいの費用は掛からず、その後は合祀墓へ合祀される。

桜墓

 新宮霊園は桜の名所としても有名だ。霊園の正門を入ると道路沿いは桜並木となっている。そんな名所に相応しく、晴れやかな桜の下を安らかな眠りの場所とする永久家族墓「桜墓」が用意されている。桜墓には2人用と4人用のお墓がある。また、プランとして、永久管理費を一括して支払うプランと、年間共益費を毎年払うプランがある。永久管理費は2人用墓が20万円(以下いずれも税込)、4人用墓が25万円(同)。これを支払えば墓は永久墓としてそこに葬られた人の永久区画として管理される。一方、年間共益費は、2人用墓は5,500円、4人用墓は6,600円。多くの人が永久管理のプランを選ぶという。

桜墓
桜墓

ガーデン墓

 とくに鮮やかに花々で彩られた区画がガーデン墓である。王宮庭園をイメージした敷地は、専属の庭師が日々管理を行っており、春と秋、年に2回見ごろを迎えるバラをはじめとして、季節に合わせた鮮やかな花々が墓地を彩り、故人を偲ぶ参詣者の心を優しい華やかさで慰める。

特別墓

 ひときわ見晴らしの良い場所に、代々受け継がれるお墓を設けることもできる。訪れる家族が和やかに過ごせる特別な空間となるように、3m2、4m2、5m2の3種類の区画プランが用意されている。いずれも個別水道が付属している。

特別墓(予約済みの区画が多く、多くで施工がすすめられていた)
特別墓
(予約済みの区画が多く、多くで施工がすすめられていた)

新しいお墓まいりの提案

 霊園が単にお墓がある場所ではなく、訪れる人にとって楽しい場所となるように最大限の配慮が施されている。墓地のそばには整った休憩所が設けられており、無料の飲料機と、電動カートも貸し出されている。また、休憩所からは、なだらかな丘になった墓地全体を眺めることができる。休憩所の前の区画は公園のような芝生になっている。新宮霊園の職員は次のように語る。

 「休憩所前の芝生は今後も残していくつもりです。そうすると、お墓まいりに来られた人たちが、芝生の上でお弁当を広げてご飯を食べることもできます。お墓のそばでご飯を食べながら楽しく、亡くなった人を偲ぶことができるのではないでしょうか。お墓まいりが楽しいピクニックになる、そんな霊園になることを目指しています」。

 新宮霊園が提案する新しい霊園のかたちは、お墓まいりについての新しい提案でもある。従来の家制度のもとに成立していたお墓の形式が変わり、墓地の見え方が変わることによって、お墓まいりが変わり、お墓に対する人の意識もきっと変わる。新しいお墓は、そのような変化を私たちに教えている。

<お問い合わせ先>
(公財)新宮霊園

TEL:0120-089049
ホームページ:https://shinguureien.jp/distribution/
※こちらは「お墓購入のご案内」のページにリンクします。

(了)

【寺村朋輝】

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