2024年11月23日( 土 )

韓国経済ウォッチ~岐路に立つ韓国半導体産業(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 しかし、韓国の半導体業界を取り巻く環境は、明るいだけではない。米国と中国の追い上げが半端ではないので、韓国は、今現在は絶好調でも、安穏としていられる状況ではない。とくに中国は、メモリ半導体市場を韓国から奪うために、躍起になっている。

pc 中国の国営企業であり、中国の最大手のチップ設計メーカーであるチンファ・ユニグループは、子会社であるスプレッドトラムが大株主になっているウェスタンデジタルを通じて、アメリカのフラッシュメモリ会社であるサンディスクを買収した。このチンファ・ユニグループは、インテルが昨年15億ドルを投資したことでも有名な企業で、清華(チンファ)大学の支援を受けて創業された企業である。ウェスタンデジタルは、HDD事業がパソコン需要の減少によって伸び悩んでいるため、これからHDDの代替品として成長が見込まれるSSDの部品を生産するサンディスクに投資をしたのだ。間接的にサンディスクを手にいれた中国は、今後、NANDフラッシュ事業にも力を入れて行くのは間違いない。サンディスクは東芝と提携して、NANDフラッシュのラインを3つ稼動している。
 今回の買収には、190億ドルという莫大な金額が投入された。一説によると、チンファ・ユニグループの最終的な狙いは東芝であるという観測まで流れている。

 いずれにしても、中国政府は10年以内に、メモリ分野で世界3位になることを目標に、半導体産業を育成しようとしている。その理由は、中国は世界半導体の生産量の55%を使用しているのにもかかわらず、今現在、中国国内で生産している半導体は4.8%にとどまっているからである。そのため、2030年までに半導体需要の40%は中国製で賄うという野心的な計画を立てている。

 将来、メモリ市場の脅威になり得るのは、中国だけではない。半導体業界で最大手である米国のインテルも、30年ぶりに中国と提携してメモリ市場に戻ってきた。今年の8月に「3Dクロスポイント」という新しいコンセプトのメモリ半導体の開発に成功したことに次いで、最大で55億ドルを投資して中国にメモリ半導体工場の建設を予定している。中国政府はこれを歓迎して、土地の無償提供をはじめ、法人税の免除などいろいろな特典を付与している。「3Dクロスポイント」技術は実現すれば画期的なもので、この技術を応用すれば、スーパーコンピュータが小さい箱サイズになれる可能性があるとのことだ。

 このような外国企業の動きとは正反対の動きが韓国では起こっていて、専門家は韓国の半導体産業の将来を懸念している。具体的な例を挙げるならば、SKハイニックスは利川(イチョン)に工場増設の許可を得るのに、8年という歳月がかかったという。環境規制が厳しくなって、巨額の投資をSKハイニックスが決定しても、なかなか許可が下りなかったのだ。サムスン電子は平沢(ピョンテク)に新工場の建設に着手しているが、地元住民の送電線の設置反対にぶつかり、苦戦を強いられている。

 何よりの懸念材料は、半導体産業に集まってくる若い人材が不足しているとのことだ。その間、半導体産業の人材が育たず、半導体部門にディスプレイの人材を取るしかない現象まで起きているようだ。中国の動きに対応するためには、もう一度官民が一体になって、半導体産業を育成していく必要があるが、中小企業を支援せず大手企業を支援するのかという非難などを恐れて、なかなか政府は支援策を打ち出せないのも実情である。

 1990年代の半導体成長の主役がパソコンであったとすれば、2000年代はモバイルが半導体を牽引してきており、これからは「IoT(モノのインターネット)」が大きな成長要因になるに違いない。すべての製品がインターネットにつながる時代に、半導体の新しい大きな需要が予想される。
 このような新成長産業に向けて、韓国企業はまた力を結集する時期である。それに、自動車もこれからは、パワー半導体など大きな需要が見込まれる。韓国の輸出を支えてきた大事な産業だけに、これからも半導体の第2の黄金期を迎えられるようにしなければいけない。

(了)

 
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