2024年09月03日( 火 )

多彩な顔持つ福岡市の湾岸(3)

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 北側が博多湾に面する福岡市──。その湾岸エリアは港湾施設やレジャー拠点のみならず、公園や住宅地など多彩な表情をもつ。また、東区のアイランドシティでは新たなまちづくりが進行するなど、さらなる発展の余地も残されている。今回はそうした福岡市の湾岸エリアについて焦点を当て、これまでの開発の経緯や今後について見ていこう。

異色の「大人のまち」や再整備進む西公園&須崎公園

 同マンションの南側には、福岡市屈指の人気ラブホテル「チャペルココナッツ ホテル イポラニ 福岡」がある。これについては一時期、他の用途の建物への建替えが噂されていた。しかし、福岡市内において新規のラブホテル建設ができないこと、コロナ禍後のホテル需要の増加によりビジネス客や家族連れの宿泊、女子会などでの利用が増えていることから、今後も存続することとなったようだ。周囲には数件のラブホテルが点在するほか、個性的な飲食店なども多数存在するなど、福岡市内でも異色の「大人のまち」となっている。

 その南側を貫く那の津通り沿いでは、大名小学校の跡地利用に次ぐ再開発が完了している。簀子小学校跡地活用事業で、桜十字グループとJR九州グループが医療・福祉施設を共同開発。「りすのこスクエアとして24年1月にオープンした。具体的な施設内容は、「桜十字メディカルフォレスト(桜十字大手門病院と有料老人ホーム「ホスピタグラン大濠公園」)」、有料老人ホーム「SJR ザ・クラス大手門」のほか、「すのこ芝生広場」「すのこ体育館」「すのこハウス」で構成されている。

(左)「チャペルココナッツ」の外観  (右)1月にオープンした「りすのこスクエア」
(左)「チャペルココナッツ」の外観
(右)1月にオープンした「りすのこスクエア」

 この地区は、西公園と大濠公園にも近く、自然豊かな都心のオアシスだ。市の中心部天神・博多エリアへのアクセスにも優れ、近隣エリアは居住区として高い人気を得ている。西公園でも新たな賑わい創出を目指し、ドッグラン整備や展望施設の新設、回遊性の向上を図るための園路整備など、リニューアル工事が着々と進行中。また、福岡城跡や春には約1,000本の桜が見頃を迎える、お花見スポットとしても有名な舞鶴公園と隣接しており、両公園では現在、セントラルパーク構想の下、一体的な再整備が進められている。

 天神や歓楽街・中洲にも近く、市の施策により将来の生活利便性の向上も期待がもてる須崎公園周辺エリアでは、市が総事業費約260億円を投じ、再整備が進められている。須崎公園では、福岡市民ホール(地上5階建)が25年3月頃オープン予定。代わりに、これまで舞台やコンサート会場として親しまれてきた福岡市民会館は解体され、跡地は公園として生まれ変わる。新・須崎公園は、27年3月頃の供用開始を予定している。同公園まで徒歩5分程度の須崎橋側では、須崎橋ビルの解体工事が進められているほか、その裏手では(株)グッドライフカンパニーによる「(仮称)須崎町_180」(RC造・地上10階建、延床面積1,950m2のワンルーム36戸)が計画されている。

建設中の福岡市民ホール
建設中の福岡市民ホール

マンション開発が相次ぐ荒戸地区

 大濠公園と西公園という2つの都市公園の間に位置する荒戸エリア。千鳥橋(博多)から西公園下交差点(中央区)までを結ぶ、那の津通りを跨いで広がる同エリアだが、地下鉄空港線・大濠公園駅まで徒歩10分程度と、相応の交通利便性が確保されており、民間投資が活発化している。

 大濠公園駅に近い荒戸1丁目では、サムティ(株)(大阪)による「(仮称)福岡市中央区荒戸1丁目」が計画されている。設計者は(有)セクション・D・アーキテクツで、建築物の概要はRC造・地上10階建、延床面積1,877.18m2のワンルーム外32戸。着工は10月頃を予定している。ほかにも、(株)モダンプロジェによる「(仮称)modern palazzo荒戸1丁目」(店舗付、RC造・地上8階建、延床面積999m2のワンルーム外14戸)や、三井不動産レジデンシャル(株)九州支店の「(仮称) 福岡市中央区荒戸三丁目計画」(RC造・地上14階建、延床面積8,985.74m2のワンルーム外104戸)などが計画されている。

 大濠公園や西公園よりも港に近いエリアでは、(同)OWNERによる「(仮称) BIJOUX OHORI.BLD」(RC造・地上6階建、延床面積610.13m2)など、テナントビルの開発計画も散見された。「(仮称)荒戸1丁目ビル」(設計者:東洋建設工業(株)、事務所付、RC造・地上7階建、延床面積1,250m2のワンルーム外18戸)も計画されており、前述の各都市公園の再整備ならびに多種多様な物件開発により、荒戸エリア全体で新陳代謝が促進されている。

サムティが開発を行う「(仮称)福岡市中央区荒戸1丁目」
サムティが開発を行う「(仮称)福岡市中央区荒戸1丁目」

再開発で生まれ変わる福岡競艇場

 福岡競艇場は市の中心繁華街である天神から徒歩でわずか10分と近く、平和島競艇場(東京都)と並んで「都市型競艇場」の代表格として挙げられる。昨年9月に創設70周年を迎えたことを受け、福岡市ではボートレース場の施設の有効活用や、多くの市民が楽しめる場の提供と新規顧客の獲得を図る目的で「ボートレース福岡パーク化事業」に取り組もうとしている。同事業ではさまざまな遊具やスポーツ設備などを配置したイベント広場の整備に加えて、カフェやショップなどの設置も計画されている。なかでも話題になったのが、初心者から上級者まで誰もが楽しむことができるスケートボードパークゾーンの存在だ。

 全天候に対応した屋内施設(約3,000m2)で、300人以上収容可能な常設の観客席・観覧スペースも設ける。コースは安全に練習できる平坦なコースのビギナーゾーン、オリンピック競技にも採用されている街中を滑るようなコースのストリート(約950m2)、複雑なかたちをした窪地状のコースのパーク(約800m2)の3種類。総事業費は約23.4億円で、26年10月頃の供用開始を目指している。

BOAT-RACE福岡の外観
BOAT-RACE福岡 の外観

(つづく)

【田中直輝】

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