2024年12月23日( 月 )

城ガールが巡る日本の名城~浅井氏終焉の地・小谷城(3・前)

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浅井氏三代の居城・小谷城

 小谷城は浅井亮政によって築かれた山城で、北近江を統治した浅井氏三代の居城であり、「戦国武将・浅井長政と織田信長の妹・お市の悲劇の舞台」としても知られている。

 標高495mの小谷山全域に築かれた城は、日本五大山城の1つとして数えられており、1937(昭和12)年に本丸跡を含む山城部分が、1995(平成7)年に武家屋敷があった清水谷地区が国指定史跡に指定されている。
 1564(永禄7)年、三代目当主であった長政は織田信長と同盟を結び、信長の妹・お市を妻とする。しかし、その後、信長が浅井の盟友・朝倉氏を攻めたことを機に同盟を破棄。4年にわたる攻防の末、1573年(天正元年)に小谷城は落城。長政は自害し、浅井氏は滅亡した。

ガイドのおじさんとの出会い

小谷山<

小谷山

 滋賀県・彦根駅からのんびり電車に揺られ、河毛駅へと着く。駅構内にあるコミュニティハウスの受付の方から、小谷城への行き方や城の登り口などの説明を受けていると、赤いベストを着たおじさんが現れた。
 小谷城でガイドをしているというこのおじさんに、「歩いて麓まで行くけど、一緒に行く?」とお誘いを受けるが、個人的な事情(体力に自信がない)で辞退。そんな失礼な私に「じゃあお城であったら解説してあげるね」と笑顔をくれる。その優しさに思わず「やっぱりご一緒したいです!」と言いかけ耐える。

 おじさんとの再会を祈り、小谷城に向かって自転車(駅でレンタル)を走らせた。

お祭りで賑わう

 小谷城の麓にある、小谷城戦国歴史資料館前の広場では、小谷城戦国まつりが開催されていた。特設ステージでは武将に扮した子ども達による劇が行われており、広場は大勢のお客で賑わい。
 広場を通りすぎようとしたとき、「長政さんの好物ですよ~!いかがですか~!」の呼び声。その声に釣られ、おはぎときなこ餅が入ったパックを買ってしまう。お値段なんと100円。あまりの安さに驚く。

 お餅を鞄に入れ、歴史資料館へと入る。その日は特別に入館無料だという。
 内部には小谷城、そして浅井氏の歴史についての解説、それにまつわる資料が展示されていた。映像資料も流されており、お城を登る前に是非押さえておきたい場所と言える。小谷城のミニチュア模型もあるので、立体で城の全貌を把握したい方にもおススメだ。なお、館内での撮影は禁止。

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山に潜む恐怖

 歴史資料館を後にし、お城情報を求め「戦国ガイドステーション」へ向かった。
 屋内に職員さん以外の人影はなし。しかし、中央に異様な存在感を放つ張り紙が。

お客様各位 10月3日

10月3日小谷山番所跡付近にて小熊の目撃がありました。小谷山への入山につきましては十分ご注意ください。
ご入山中の個人行動は行わないように、お願い申し上げます。

戦国ガイドステーション

 私が小谷城(小谷山)を訪れたのは10月4日、つまり熊が目撃されたのは前日。一人旅なので、全てにおいて個人行動となる。
 下調べで『熊が出るかもしれない』という情報は得ていたが、『昨日出た』という衝撃は大きかった。職員のお姉さんに確認すると、「番所跡付近は最近ちょっと目撃情報が多いんです」という返答。
 熊が目撃された番所跡は、小谷城を見て回るには絶対通らなければいけない場所である。お姉さんからの勧めもあり、熊除け鈴を購入することにした。

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険しく遠い道のり

 鈴を身に付け、ガイドステーション向かいの道から小谷城へ向かって登り始める。番所跡までは車で登ることができるため、途中まで舗装された道を進んでいく。
 「番所跡まで約1.2km」と書かれた案内板と、その横に山頂へつながる階段が見えた。

 進んでいくと、木でつくられた階段から、大小の石が転がる坂道へと変わる。盛り上がった土と、ごろごろと転がる石に足を取られそうになりながら、険しい道をひたすら登っていく。辺りは静まりかえり、聞こえるのは風で草木が揺れる音、鞄に付けた熊除けの鈴の音、そして自分の荒い呼吸音。唐突にこの静けさが恐ろしく感じる。“熊が出たらどうしよう”と、とりあえず鈴を振り鳴らすが、効果があるのかわからない。
 登る、(疲れる)、止まる、鈴を振り鳴らす、を繰り返しながら少しずつ進んでいくが、まったく先が見えてこない。進んでも(先が見えない)地獄、戻っても(静かで恐ろしい)地獄、“私、何をしているんだろう・・”と思わずぼやく。

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※クリックで拡大

 しばらくすると、舗装された空間に出た。“やっと番所跡についた!”と感動するが、すぐ脇に「望笙峠」の看板。手持ちの地図で現在位置を確認(地図)。登り始めたのが10時36分、現在時刻11時16分。“40分登ってまだここなのか・・”と一人うなだれる。デスクワークで衰えた体にはきつすぎる道のりに、心が折れかけていた。

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(つづく)
【城野 円】

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(3・後)

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