2024年11月21日( 木 )

高市総裁ならアベノミクス相場の再来へ

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 NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
 今回は9月20日発刊の第364号「高市総裁ならアベノミクス相場の再来へ」を紹介する。

鍵となる経済政策で圧倒的優位の高市氏

 事実上日本の次期首相を決める自民党総裁選(9月27日)が、一週間後に迫っている。今回の総裁選挙は派閥解消後初で9名が立候補し、大混戦になっている。各候補の主張にも大きなコントラストがみられ、国民には投票権はないが、ネット、SNSを巻き込んで国民的政策論争を引き起こしている。

 どの候補者も一回目の投票で過半数を獲得できず、上位二名による決選投票となることはほぼたしかである。しかしさまざまな世論調査から、決選投票に残るのは石破氏、高市氏、小泉氏の3氏に絞られてきたようである。その場合、決戦に残らなかった候補者を支持していた党員、議員票がトップ2のうちどちらにつくかで勝者が決まる。決選投票は国会議員の367票と都道府県の各代表の47票の構成なので、国会議員がどちらを支持するかで大勢が決まる。そして次期総裁は年内解散総選挙を打ち出すことが既定路線と見られているので、自民党国会議員は次期選挙に勝てるアジェンダ設定が総裁選びに決定的に重要になる。となると経済政策の優劣が雌雄を決する要素になる可能性が高まる。

 そこで、チャットGPTに決戦に残る可能性がある3候補のうち誰が株価に最もプラスに働くのかを聞いたところ「最も株価にプラスに働く可能性が高いのは、高市早苗氏と考えられます。彼女の積極的な金融緩和策や財政出動の姿勢は、アベノミクスの延長線上にあり、投資家にとって短期的な安心感を与え、株式市場を押し上げる可能性があります。小泉進次郎氏は、グリーン政策の推進で特定のセクターにプラスの影響を与える可能性があるものの、市場全体の反応は規制強化のリスクなどで不透明です。石破茂氏は、長期的な構造改革を重視するため、短期的な株価上昇にはつながりにくいですが、地方経済や特定産業にはポジティブな影響があるかもしれません」との回答となった。この見方は筆者を始め大半の専門家が共有する見解である。

充実した稼ぐ力をいかに家計に回すか

 日本経済がデフレ脱却の正念場を迎えたときに、石破氏と小泉氏が経済政策に適正解をもっていないということは驚きである。両氏は経済政策の設定段階で大きなミスをしてしまったといえる。両氏に任せておいたら、岸田政権の新しい資本主義・積極財政・アベノミクス路線から、新自由主義・財政再建優先・金融規律重視の反アベノミクス路線に変わるリスクが高まる。

 2013年のアベノミクスから10年を経て、打ちひしがれていた日本の稼ぐ力は大きく向上した。日本人が稼ぐ所得総額(名目GNI)は647兆円、前年同期の630兆円比2.7%増、前々年同期の593兆円比9.1%増と鋭角的に拡大した。円安インフレの進行と、日本企業のグローバル化による海外利益急増に支えられている。名目経済成長に連動する企業利益は2.2倍、株式時価総額は3.3倍、一般会計税収は1.6倍になった。

 しかし他方で個人生活が取り残されてきた。実質個人消費支出は、過去10年間では、2014年3月の消費税増税(5→8%)直前の2014年1~3月がピークで、その後一度もそれを上回っていない。この好調な業績・株価と低調の実質消費との乖離をどう埋めデフレ脱却を確実にするか、物価と賃金がともに上がる経済の好循環を実現するか、今はまさに正念場となっている。

8月の大暴落が戒める尚早の引き締め政策

 7月末の利上げと植田日銀総裁の前のめりの金融引き締め発言が25%、10,500円という驚愕の日経平均株価暴落を引き起こした。翌週の内田副総裁の「わざわざ危ない時に利上げしない」との打ち消し発言で株価が急回復したことから、株価急落は尚早の政策転換を戒めたものであったことは明らかである。にもかかわらず8月中に、植田総裁、高田、中川、田村各審議委員がこぞって利上げバイアスのスピーチを行い、市場の疑心暗鬼を強めている。

 日本は、尚早の金融財政の引き締めが回復の腰を折り、失われた10年で済むはずが、失われた30年になってしまったという苦い経験がある。日本の土地と株式を合計した国富時価総額は、1989年末3,142兆円でピークをつけ、2002年末の1,723兆円でいったん底入れし回復に転じたが、リーマン・ショック後さらに下落し2011年末1,512兆円になった(なお2023年末では2,410兆円と顕著に回復している)。この二番底は正しい政策を取っていれば回避できたはずである。

アベノミクス相場の再現可能性、
日経平均10万円が見えてくる

 高市内閣が成立すれば、日銀には利上げ抑制、金融緩和継続を求めるだろう。また、インフレによる実質増税の弊害を受けている家計支援計画と成長投資のための大規模な財政支出を柱とする経済政策を打ち出すだろう。総需要が総供給を上回る米国流の「高圧経済」の創出は高市氏のキャッチコピーになっている。それは企業の投資拡大と生産性向上による実質賃金の上昇に結び付く。経済政策を争点に掲げて、年末までに解散総選挙を実施するだろう。

 2012年末の解散総選挙、第二次安倍政権の成立から2年半かけて日経平均が2.5倍となるアベノミクス相場が始まったが、高市内閣が成立すれば、同様のスケールの株価上昇が起きる可能性が高まる。5~10年で日経平均が10万円に到達するという夢が現実のものとなるかもしれない。

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