2024年09月30日( 月 )

「グラングリーン大阪」先行まちびらき

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うめきた公園は、ニューヨークのブライアントパーク、シカゴのミレニアムパーク、ロンドンのダイアナメモリアルの海外の公園を参考に整備
うめきた公園は、ニューヨークのブライアントパーク、
シカゴのミレニアムパーク、ロンドンのダイアナメモリアルの
海外の公園を参考に整備

 三菱地所(株)を代表企業とし、阪急電鉄(株)、オリックス不動産(株)、積水ハウス(株)など9社が携わる、JR大阪駅前のうめきた2期開発「グラングリーン大阪」の先行まちびらきが9月6日に行われた。今回開業したのは、都市公園「うめきた公園」の一部、ホテル、商業施設、中核施設であるイノベーション施設。全面開業は2027年度を予定している。総事業費は約6,000億円で、同じうめきたエリアで13年にオープンした「グランフロント大阪」を含めると1兆円を超える大規模な再開発となる。27年度には、うめきたエリア全体で年間1億人の来場者を目指す。

スタジアム構想から緑の公園へ、
長期的な都市競争力を向上

9月3日の記念式典で挨拶する
吉村洋文・大阪府知事

    先行まちびらきに先立ち、9月3日に吉村洋文・大阪府知事、横山英幸・大阪市長、中島篤・三菱地所社長など関係者約400人が参加して、記念式典が執り行われた。

 吉村知事は、「10年前の貨物ヤードが生まれ変わった。うめきたエリアは大阪の中心地であり、関西中から人が集まってくる関西経済の中核である。もっと成長させていくためには都市の真ん中に本物の緑をつくることが必要」と挨拶した。地元の推進協議会により、うめきた2期開発条件の策定が行われ、大阪駅前に緑を中心とした公園を整備することを決定。当初、スタジアム構想などがあったが、大阪には緑が少なく、長期的に都市の競争力を高める意味で緑あふれる公園がふさわしいと判断した。

 「グラングリーン大阪」の全体像は、北街区と南街区に分かれており、北街区には最高25億円の分譲タワーマンション、ホテル、中核機能、商業施設が、南街区にはオフィス、ホテル、中核機能、商業施設、住宅がそれぞれ整備される。エリアの規模は、東京・丸の内や渋谷に匹敵。パークマネジメントとエリアマネジメントを一体的に行う「(一社)うめきたMMO」が9月6日から50年間の指定管理を開始した。この組織は、三菱地所などの開発事業者が設立。日常的な居場所として愛される公園・まちになることを目指し、さまざまなコンテンツを提供していく予定だ。活動資金は理念に共感した企業・団体からの協賛で賄う。50年という長期となるが、「ハード面は中長期にあまり変わらないと思っているが、公園の使われ方を含めて使いやすいように注視していく」(三菱地所関西支店の神林祐一・グラングリーン大阪室長)考えだ。

ターミナル駅直結、世界最大級の都市公園

 先行まちびらきでは、北街区と南街区にまたがる「うめきた公園」に加え、商業施設「グラングリーン大阪 ショップ&レストラン」(10月までに20店舗がオープン)、中核機能であるイノベーション施設「JAM BASE」、アジア初進出のヒルトンのライフスタイルホテル「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」が開業した。

「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」の11階バー&ラウンジ「!JAJA!BAR(ジャジャバー)
「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」の
11階バー&ラウンジ「!JAJA!BAR(ジャジャバー)

 「うめきた公園」はJR大阪駅に直結し、オフィスやイノベーション施設、住宅などとつながり、「グラングリーン大阪」の地区面積約9万1,000m2のおよそ半分に当たる約4万5,000m2を占める。JR大阪駅というターミナル駅に直結する都市公園としては世界最大級の規模となる。約4,000m2の芝生広場を中心に、イベントスペースやカフェ・レストラン棟、新たな文化施設「VS.」などを備えている。

 「JAM BASE」は、北街区の複合ビル1~9階に入居し、4階以上は会員向けスペースとしている。4階に会員制交流スペースを設けるほか、92区画の家具付きレンタルオフィス、コワーキングスペースを整備した。また、大阪大学や立命館大学も拠点を設けており、入居するスタートアップ企業などとの交流を図る。

 複合ビルの9~25階に「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」がオープンした。若者やクリエーター、イノベーターなどが集う場所として、ダイニングレストランやバーを用意。総客室数は308室で、このうち53のスイートルーム、19のコネクティングルームがある。1泊の料金はスタンダードルームタイプで約4万円~、最も広い127m2のパノラマビュースイートルームで約30万円~となっている。

会員制交流スペース「Syn-SALON(シンサロン)」には、バーカウンターやライブラリーがある
会員制交流スペース「Syn-SALON(シンサロン)」には、
バーカウンターやライブラリーがある

オフィス内定率は約75%、緑など経営層から高評価

 25年春には南街区のオフィスやホテル、中核機能、商業施設など全体の約8割がオープンする予定だ。オフィスは、南街区に整備する「パークタワー」の6~27階(総貸室面積約9万3,000m2、基準階面積約4,140m2)と「ゲートタワー」の5~17階(同約2万m2、同約1,580m2)に配置。国内外の大手企業などに対して最先端のオフィス機能を提供し、塩野義製薬(株)や富士通(株)の入居が決まっている。オフィスの内定率は75%で、「都市公園の緑によるウェルビーイングな働き方が評価されている。また、企業各社はイノベーションが求められている。『JAM BASE』との連携への期待があり、とくに経営層に評価してもらえている」(神林祐一・グラングリーン大阪室長)と分析している。大阪に不足しているとされる2つの富裕層向けホテルが整備される予定だ。

 27年度中に全体まちびらきとなる。三菱地所の中島篤社長は、「緑とイノベーションの融合拠点をまちづくりの目標に掲げ、官民の連携によって進めてきた。関西経済にとって重要なイノベーションエコシステムのハブとしての機能を担っていく」と期待を込めた。

【桑島良紀】


<プロフィール>
桑島良紀
(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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