韓国経済ウォッチ~留学はペイするのか?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
韓国の両親は、子どもの教育のことなら、自らを犠牲にしてでもやるべきであるという意識を持っている。韓国は、ことわざにもある「孟母三遷」を最もよく実践している国と言っても過言ではない。
親の子どもに対する期待度は、韓国が86%であるのに対して、日本は50%を下回っている。韓国の親は子どもに対する期待が大きく、それが教育熱心というかたちで表現されている。これは、調査結果にも如実に反映されている。ニューヨークタイムズの記事によると、OECD加盟国23カ国を対象に調査を実施したところ、親の世代より子どもの世代の学歴が上昇しているのは、韓国が96%で、調査対象国のなかで、1位になっている。このような韓国社会の教育熱心は、現在の経済発展の土台になった反面、受験戦争、私教育の膨張など、副作用も起こしている。韓国では「課外」と呼ばれる塾通いが社会問題にもなっているが、塾通いは学生本人だけでなく、家計にも大きな負担になっている。年間で塾通いにかかる費用は10兆ウォンを上回っているという統計もある。
それではなぜ、このように韓国人は教育に対して熱心になったのか――。
歴史的には、「科挙制度」の影響が色濃く残っている。「科挙」とは、国の公務員を試験で採用する制度で、中国では隋の時代からスタートし、韓国では高麗時代から採用された制度である。科挙に受かることが、その当時では出世の道だったため、当然、一生懸命に勉強するようになるわけだ。その制度が続くことによって、社会は徐々に教育熱心に変わっていったのだろう。とくに、植民地時代に韓国では日本留学をして、日本の進んだ学問を学習した人が重用されたため、より一層、知識を大事にする風土は強化された。
その後も、韓国社会が発展するにつれて、教育は投資以上の効果を発揮したので、教育熱心に拍車がかかる。教育熱心であることは良いことだが、今はそれが身分上昇の一手段に転落してしまった感もあるので、残念なことだ。
だが、資源も何もない韓国では、もっぱら教育によってのみ地位を確保することができたので、教育熱心にならざるを得なかったのは頷ける。貧しい家庭で産まれても、自分で一生懸命頑張ることで、立身出世した物語は多くあったし、それを推奨するような雰囲気もたしかにあった。しかし、最近は私教育費の負担で、貧しい家庭では、なかなか良い人材を輩出できなくなったのも現実である。今は少しずつ、学歴に対する偏見は、希薄になりつつあるが、韓国はいまだに学歴社会で、入社試験でも学歴優先だし、学歴がないと、良い結婚相手にめぐり合えない社会であるのは事実である。
この教育熱の一形態として、韓国の上流家庭に流行っているのが「海外留学」である。それでは、いつ頃から韓国では海外留学が流行るようになったのか――。
(つづく)
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