2024年12月31日( 火 )

萩生田候補支援の櫻井よしこ氏が「熱狂的演説」

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 裏金議員で統一教会との関係も明らかになった萩生田光一・元政調会長(自民非公認)と、統一教会問題を追い続けるジャーナリストの有田芳生・元参院議員(立憲公認)が激突する東京24区は、全国屈指の注目選挙区だ。

 公示日の15日には、立憲民主党の野田佳彦代表が八王子駅前で有田氏の隣で第一声を上げ、「裏金議員を(統一教会が)裏から支える『裏、裏、裏』の自民党政治に決別しようではないか」と呼びかけた。これに有田氏も同調、「裏金だけではなく、カルト教団べったりの政治を八王子から終わらせよう」と訴えた。立憲は東京24区を最重要選挙区に位置づけ、大物裏金議員・萩生田氏を落選させようとしているのだ。

 文化人も続々と現地入り。公示日には八王子市内で前川喜平・元文科省事務次官が講演。その2日前の13日にも田中優子・法政大学前総長が市内で講演、有田氏との対談も行った。

 「裏金カルト議員はいらない」と銘打った落選運動もスタート。12日には、「萩生田議員を当選させてはらない!!」「壺と裏金全員排除」「企業に政治を買わせるな」と書いたのぼりやプラカードをもった数十人が市の中心部をデモ行進。萩生田氏の事務所前では「出てこい」と掛け声が飛んだ。

 一方、守勢に立たされたように見えた萩生田氏だが、大物政治家や有名人が次々と駆け付けてもいた。公示2日前の13日には櫻井よしこ氏、公示翌16日には安倍昭恵氏、17日にも高市早苗・前経済安保担当大臣、そして19日にも「維新の創業者」である松井一郎・前大阪市長が応援演説をしたという具合だ。

 そのなかでも萩生田氏が「強力な助っ人が現れた」と感謝感激したのが櫻井氏だ。13日の国政報告会で櫻井氏は予定時間を大幅に超える熱弁を振るったのだが、それを横で聞いていた萩生田氏はマイクを握るなり、「一時間講演したら100万円の櫻井さんが(国政報告会で)40分も話してくれた」と切り出し、石破首相への怒りをバネに櫻井氏が手弁当で萩生田氏の応援に駆けつけた経緯を紹介したのだ。

 ちなみに三連休(10月12日~14日)の中日に開かれた国政報告会は報道関係者には告知されず、支持者向けの集会だった。週刊現代10月26日・11月2日号(10月21日発売)が「13日には八王子市内の貸し会議室で、保守の論客である櫻井よしこを招いて国政報告会を開いたが、メディアは入ることが許されなかった」と紹介したのはこのためだが、私はこのときの音声データを入手。ネット番組の「横田一の現場直撃」(14日公開)や「アークタイムズ」(13日公開)で紹介した後、日刊ゲンダイにも取材協力。「萩生田光一候補は裏金と旧統一教会で『東京24区』背水の陣なのに…嫌韓の櫻井よしこ氏が“援軍”に?」という見出しの10月16日付の記事のなかで、一部抜粋のかたちで櫻井氏の発言が以下のように掲載された。

 「こういう政治の現場に出て、誰それさんの応援は本来しないことに決めているのですが、今回は例外中の例外にして、私は萩生田さんの応援に徹しようと思います」
「よりによって何で石破さんが総理になったのだろうかと思う方がいたら手を上げて。安倍総理が『この男だけは絶対に総理にしてはならない』と言っていた人が少なくとも2人いました。石破さんと河野太郎さんなのですね」
「清和会、安倍派は昔から『記載しなくても派閥の方でちゃんとやっているから』ということを萩生田さんも言われたし、他の人たちも言われて、そういうふうにしていたわけ」「政治資金不記載問題は、裏金とは違います。その証拠にみんな裏金と思わないで、これでいいのだという発表を、派閥の先輩たちから言われた通りの処理をして、たまたま、それが政治資金規正法にひっかかって、記載していなければいけないものを記載していませんでしたということで」
「萩生田さんに『裏金議員』とレッテルを貼って(略)、何か悪いことがあると、萩生田さんの写真をボーンと貼る。また何かあったのかと思って記事を読んでみたら、まったく関係のない記事なのに写真が出ている。(略)安倍さんと同じように左のメディアに不条理に理不尽に叩かれている萩生田さん」
「私は自民党の不公正なルールに心から憤っています。石破さんのやり方に心から嫌悪感を抱いています」
「有田芳生という、スターリンの名前をもらった共産党主義者のような人が戦いを挑んできている。万万が一、百万分の一でも萩生田さんが有田さんに負けたら日本国は終わりだと思う」

 以上のように櫻井氏は、萩生田氏が有田氏に敗れると大変なことになると危機感を煽りながら、支持拡大を呼び掛けたといえるが、注目すべきは有田氏以外の野党系候補を名指ししなかったことだ。有田氏が野党系候補のなかで最も有力候補であり、萩生田氏と一騎打ち状態にあることを示したといえるのだ。

 櫻井氏自身が意図していなくても、「萩生田氏を落選させるには誰に投票したらいいのか」という戦略的投票行動を取ろうとする有権者に「有田氏に投票するのが最も有効」と示す役割をしてしまったのだ。乱立した野党系候補を一本化する役割をはたしたともいえる。

 「萩生田氏を落選させる最有力候補」というお墨付きをもらった有田氏に、櫻井氏の発言の受け止めを聞いてみた。14日の八王子駅前街宣を終えたときのことだ。

    ──昨日、櫻井よしこさんが萩生田さんの応援に入って、「安倍元総理の後継者は萩生田さんだ」「有田さんが当選したら日本は終わる」と言っていたが、どう思うのか。

 有田 萩生田さんを応援される方は櫻井よしこさんや安倍昭恵さんを含めて、アベ政治そのものだから、もし仮に萩生田さんがうまくいかないということになれば、アベ政治の終わりだと思う。日本が終わるのではなくて、アベ政治が終わる。
 アベノミクスと言って「10年経ったら国民の年収が150万円上がる」と言ったのは安倍さんだし、そんなデタラメ政治。安保法制を含めて日本をどんどん危険な方向にもって行ったアベ政治を終わらせる、非常に大きな象徴になるというふうに思っている。

 一方、櫻井氏が「裏金議員ではない」と擁護した萩生田氏にも声掛け質問をしてみた。告示日の15日午後の市西部地区(四谷交差点)での街宣を終えたときのことだ。

 ──(裏金の使途)証明していないではないか。統一教会からの支援、依頼するのか。一言も(街宣で)言っていないではないか。

 萩生田 (無言)

 ──2,700万円、使途がハッキリしていないではないではないか。「(使途)不明」では納得しないのではないか、有権者は。

 萩生田 (無言)

 ──統一教会との関係、断ち切ったのか。(街宣で)一言も釈明しなかったではないか。朝日(新聞)の写真について一言。ズブズブの組織的関係だったのではないか。

 萩生田 (無言のまま手を振って車の助手席に座って走り去る)

 街頭演説で萩生田氏は統一教会について一言も触れず、裏金問題についても櫻井氏と同様、一方的な潔白釈明で事足りている。対照的な選挙戦を展開する両候補だが、10月27日の投開票結果が注目される。

【ジャーナリスト/横田一】

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