24年地価調査・牽引役は博多&天神&ららぽーと

上昇率上位は「沖縄」「北海道」

　9月、「令和6年度地価調査」の結果が発表された。全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇したほか、上昇幅も拡大した。全国の上昇率ランキングでは、移住や別荘需要が目立った沖縄県、ラピダス効果による北海道が多数を占めた。いずれも平米単価は10万円未満がほとんど。商業地ではTSMC効果により大津町（熊本県）、菊陽町（同）が上位を占めた。

　商業地で最も上昇率が高い都道府県は東京都（8.4％）、住宅地は沖縄県（5.8％）。福岡県は住宅地（3.8％）、商業地（6.7％）ともに3位となった。東京都区部および人口50万人以上の都市の平均変動率では、住宅地（9.5％）、商業地（13.2％）ともに1位となった。

　福岡県内の市町村別では、44市町（前年は38市町）の住宅地が上昇となり、商業地では38市町（同33市町）が上昇となった。下落地点数は、前年の168市町から148市町へ減少した。住宅地では福岡市、春日市、大野城市、粕屋町が12年連続、商業地では福岡市、大野城市が12年連続、工業地では福岡市が11年連続で上昇を続けている。マンション用地需要を背景に、全域で上昇傾向が見てとれるものの、「建売住宅の在庫が膨らんでいること」から、小郡市（10.1％→6.7％）、春日市（6.5％→5.6％）、大野城市（8.9％→8.4％）、宇美町（8.2％→7.7％）、須恵町（7.3％→4.6％）といったように、地価減速エリアも見られ始めた。

　福岡市の地価上昇は、すでに述べたマンション用地需要に加え、ホテル、飲食ビル、オフィスビルの取引が活発であることの影響が大きい。その傾向はこれまでと同様に、博多エリアの拡張、天神エリアの拡張、ららぽーと福岡周辺の住宅開発に大きく分けられる。ここからは、今回の地価調査の結果を踏まえて、現状を見ていこう。

＜博多の拡張＞
15％超の上昇も多数 旧博多部で上昇続く

　ここ数年、博多駅の北部・旧博多部エリアの地価上昇が顕著となっている。2021年の地価調査では商業地の上昇率で全国1位となったことも記憶に新しい「綱場町9-28」は、以降4年連続で15％超の上昇率を維持しているだけでなく、上昇幅を拡大中。福岡市地下鉄・呉服町駅、同・中洲川端駅のいずれにも近い立地で、今回は18.0％の上昇率となった。幹線道路・昭和通りに面しており、指定容積率も600％あることから、平米単価は177万円と天神アドレスをしのぐ評価を得た。

　「綱場町9-28」を含む博多部からは、「神屋町10-19」（16.0％増）、「中呉服町4-26」（14.2％増）、「冷泉町5-32」（11.0％増）が基準地として選定されており、いずれも10％超の上昇となっている。

　幹線道路・那の津通りに面する「神屋町10-19」は、容積率500％で前年に続き15％超の伸びとなっており、平米単価は100万円を超えた。「中呉服町4-26」は、明治通り沿いのオフィスビルで、こちらも容積率は500％、地下鉄・呉服町駅にも近く、14％超の伸びを見せた。「冷泉町5-32」は、祇園駅に近い大博通り沿いの大型オフィスビルで、容積率は600％。伸びは鈍化したものの、平米単価は350万円を超えており、依然として11.0％の上昇となった。

　ここ数カ月で確認できた旧博多部の不動産取引では、地下鉄・中洲川端駅から徒歩7分のオフィスビル（古門戸町）、地下鉄・呉服町駅から徒歩5分にある大博通り沿いの築浅オフィスビル（奈良屋町）、地下鉄・祇園駅から徒歩4分のオフィスビル（冷泉町）などが挙げられる。その他、築港本町や石城町でも賃貸マンションの売買が複数確認された。旧・十八銀行博多支店跡をはじめ、エリア内では建替えを前提とした不動産売買が多数確認されており、今後も新陳代謝が進んでいきそうだ。

（つづく）

【永上隼人】