【マックス経営講座】中小企業の生き残り戦略(5)『KPIマネジメント』の実践によるROICの向上
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はじめに
第4回で、中小企業が取り組む『ROIC経営』の基本についてお話しました。今回は、ROIC経営を実践するうえで欠かせない『KPIマネジメント』の視点から話を進めたいと思います。
「行動の数値化」という考え方
会社経営では通常、売上や利益などの目標設定を行いますが、それを実現するための活動自体はほぼ社員の判断に委ねられているというのが実情です。しかし、本来は、目指すべきゴール(目標)を社員が主体的に動けるレベルまでKPIをブレイクダウンし、上層部と社員がともにそのKPIを共通認識として行動するというのがあるべき姿です。ただ、そのためには会社が掲げたゴールを達成するための要素を明確にしたうえでKPIを設定し、社員がそのKPI達成に責任と当事者意識をもつところまで浸透させる必要があります。
そこで、「行動の数値化」という考え方がとても重要になります。課題解決に結びつく現場レベルのKPIを設定し、その数値化されたKPI達成に向けて継続的に改善していく行動こそが、結果としてゴールとしての“ROICの向上”につながります。
「行動の数値化」の具体例
簡単な実例を用いて説明します。ある居酒屋でROICを分解した結果、営業利益率が業界平均に比べてやや低いことがわかり、その原因が販管費率、とくに売上高人件費比率の高さにあることが判明しました。しかし、現状のままで当該比率を下げようとすると賃金を下げるか人を減らすしかありません。また、新規顧客を増やすことで売上アップを図ろうとすると、広告費を始めとするほかの販管費も上昇してしまいます。そこで、社長は、現在の客数を維持したままで売上と売上総利益を上げる方策として客単価に着目しました。
ただ、客単価といっても、メニュー価格を一律に上げると客数の減少を招く恐れがあるので、注文点数を増やすことで客単価アップを図るべく、社長自ら現場の厨房スタッフ、ホールスタッフを交えて議論を重ねた結果、ベテランのホールスタッフと新人のホールスタッフの間で“本日のおすすめメニュー”の注文獲得率に差があることがわかりました。社長が各スタッフにヒヤリングを行ったところ、ベテランのホールスタッフは開店前に厨房スタッフから本日のおすすめメニューの情報を入手し、お客さまから質問されたときに産地や味などの特徴を説明できる準備をすることで自信をもっておすすめができるので、1組のお客に接客中平均3回のおすすめをしているのに対し、新人スタッフは事前に情報を入手しておらず、最初の接客段階で1回だけ“本日のおすすめメニューは〇〇になっております”と説明するのみでした。
この店のマニュアルには、そうした細かい行動までは掲載されていなかったので、社長は新人スタッフ用にチェックリストを作成し、①厨房スタッフから入手すべき情報、②声掛けのタイミングと回数、③説明の仕方を明記して、それを着実に実行してもらうようにしました。この場合の『行動の数値化』は、声掛けの回数になります。ただ、併せてチェックリスト①と③も実施した結果、新人スタッフの“本日のおすすめメニュー”注文獲得率は20%から40%に跳ね上がり、店全体としての客単価アップを実現できました。この流れを図式化すると上図のようになります。
まとめ
第3回~5回にわたり、企業価値向上を目指したROIC経営を、中小企業でも実践できるマネジメントの視点に絞り込み、KPIというツールを活用してお話してきました。次回からは、企業価値向上にとって重要な要素である『人的資本経営』についてお話する予定です。
<INFORMATION>
(株)コンシャスマネジメント
所在地:福岡市中央区天神1-4-1
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TEL:092-736-7528
<プロフィール>
(株)コンシャスマネジメント代表取締役/中小企業診断士
西岡隆(にしおか・たかし)
大学卒業後、会計事務所、監査法人などを経て2001年中小企業診断士登録と同時に西岡経営管理事務所を開設。21年、事業拡張にともない(株)コンシャスマネジメントを設立法人名
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