「青春18きっぷ」の改悪と今後の展望(中)
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運輸評論家 堀内重人
利用者から好評の「青春18きっぷ」は、2024年冬の発売分からルールが変更される。自動改札機が通過できるようになる半面、従来は使用日にスタンプを押す方式であったが、3日用・5日用というかたちに変更となり、連続した日しか利用できなくなる。これにより、従来であればグループで1枚の「青春18きっぷ」を使用して旅行することができなくなるなど、リタイヤした高齢者の外出促進という効果が、そがれることになる。「青春18きっぷ」は快速も含めた普通列車の普通車自由席が乗り放題になる企画乗車券として、利益率は決して高くないものの、固定層がいるため、JRにとって貴重な収入源でもある。「青春18きっぷ」が改悪される背景と今後について言及したい。
「青春18きっぷ」が改悪される要因(つづき)
一方、以前販売されていた「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」は、1枚の切符で有効期間のうち、3回利用が可能であったが、1枚の切符で3人が日帰り旅行するかたちでの利用も可能だった。
だが「秋の乗り放題パス」は、有効期間が利用開始日を基準として連続した3日間に変更された。その結果、有効期間内であれば、どの日であっても希望する日に3回利用することや、1枚の切符を複数人で使用することができなくなった。かつ利用開始日が発券時に印字されるため、何時から使用するかを、購入時に決める必要が生じた。
「秋の乗り放題パス」は、従来の「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」と同様、10月上旬の土曜日から、中旬の日曜日までの16日間が利用期間となっている。
それ以外の要因として、無人駅の増加や、未使用で残っている乗車券の金券屋への売却、クレジットカードで購入し、みどりの窓口でキャンセルして現金化する行為も無視できない。
国鉄時代は、駅の無人化などが進んでおらず、ローカル線であっても駅には職員がいて、改札などの業務を行っていた。ところがJRになると、ローカル線の無人化が進んだだけでなく、大都市近郊の駅であっても無人化や、職員がいる時間が短縮されるなどの合理化が実施された。
そうなると無人駅から乗車して、無人駅で下車したり、駅員不在の時間帯に下車したりなどをされた場合、運賃の取りこぼしが生じるようになった。
その点、「秋の乗り放題パス」であれば、利用可能日が連続する3日間と決まっているため、JRにとってみれば運賃の取りこぼしが回避できる。
未使用の「青春18きっぷ」を金券屋へ売却する行為は、国鉄時代から実施されていたが、昨今では現金を手に入れるため、クレジットカードで購入し、みどりの窓口でキャンセルする動きがみられることも、無視できない要因である。
つまり「青春18きっぷ」の改悪は、JRの経営上の都合から実施されたといえる。
「青春18きっぷ」改悪によって予想される
悪影響と類似乗車券の存在「青春18きっぷ」が改悪されることで、まず利用者の減少が予想される。連続する3日・5日となれば、グループ利用の需要が減少するだけでなく、学生であればまだしも、会社員などは春・夏・冬休み中に、会社を連続して休むことは困難であるから、この層の利用も減少する。
「青春18きっぷ」が発売された当初は、学生などの若い人向きの企画乗車券であったが、昨今では高齢者グループや女性友達のグループが利用する企画乗車券としての色合いが濃くなっている。ある面では、輸送力にゆとりがあった列車を活用した増収策から、高齢者の外出促進という、「福祉政策的」な側面が強くなった。
「青春18きっぷ」が改悪されることになるが、それに代わる以下のような企画乗車券がJRだけでなく、民鉄の近鉄からも販売されている。
(1)北海道&東日本パス
(2)JR東日本の週末パス
(3)近鉄週末フリーパス
(4)九州満喫きっぷ(1)はJR東日本とJR北海道が販売する企画乗車券である。JR東日本・JR北海道だけでなく、並行在来線を運行する青い森鉄道線、いわて銀河鉄道線だけでなく、北越急行線の普通列車も、利用することが可能である。価格は、大人が1万1,330円、子どもが5,660円であるから、JR東日本・JR北海道エリアのみを旅行する人にとっては、「青春18きっぷ」よりお買い得である。なお、24年は12月10日~25年1月10日までの利用が可能である。
(2)はJR東日本の関東・南東北エリアの全路線と地方私鉄14社が乗り放題になるフリーきっぷである。乗り放題になるのは、JR東日本の女川、小牛田、くりこま高原、湯沢、酒田以南の全線と、会津鉄道、富士急行、北越急行、えちごトキめき鉄道など14の民鉄線であり、これらの路線の普通、快速が乗り降り自由となる。特急列車や東北・上越・北陸新幹線に乗車するには、別途、急料金を支払えば利用が可能となるが、新幹線が乗り放題にはならない。
この企画乗車券は、土休日だけ利用が可能であり、利用日前日までに購入しなければならない。有効期間は土休日の2日間であるが、ゴールデンウイーク、お盆、年末年始は、土日でも利用できない。値段は大人8,880円、子ども2,600円と、子どもの価格が割安で、少しでも家族利用を促進させたいとの狙いがある。
(つづく)
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