2024年12月22日( 日 )

アメリカ大統領選挙顛末記:トランプもハリスも似た者同士?(中)

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国際未来科学研究所
代表 浜田和幸

イメージ    意外な動きも出てきました。トランプ次期大統領は選挙戦で支援を受けたロバート・ケネディ・ジュニアとの約束を反故にしようとしているのです。大統領選の途中で、トランプ支持を鮮明に打ち出し、多くの集会でトランプのために応援演説を繰り返してきたのがケネディ氏でした。

 抜群の知名度をもつケネディ一族の一員ですが、トランプ氏へなびいたのは、バイデン政権が進めた「ワクチン推進政策」への反発でした。ケネディ氏は自らが主宰する「子どもの健康を守る会」の活動を通じて、アメリカの保険衛生当局が製薬業界の影響を受け、「有害な薬品やワクチンを承認している」との批判を展開。

 アメリカではワクチン懐疑派を中心に一定の支持を集めていました。そのため、トランプ氏はケネディの名前のもつインパクトへの期待もあり、また大手製薬メーカーへの不信感を抱く有権者を取り込めると判断したのでしょう。トランプ氏は当選した暁には、ケネディ氏を保健衛生行政の責任者に抜擢することを匂わせていました。

 また、ケネディ氏からすれば、自分の父親や叔父にあたるジョン・F・ケネディ元大統領暗殺の真相を明らかにしてくれることをトランプ氏に期待したはずです。ケネディ氏もトランプ氏も「CIAが黒幕」との見方では一致しており、ケネディ氏はトランプ氏とともに「CIAを解体する」とも発言していました。

 ところが、雲行きが怪しくなってきています。なぜなら、トランプ氏が新政権の大統領首席補佐官に選対本部長を務めたスーザン・ワイルズ女史を起用すると発表したからです。トランプ氏の言葉を借りれば、「アイス・メイデン(氷の乙女)」というわけで、彼女はアメリカ政財界を裏から仕切る「影の仕掛け人」で、「アメリカで最も恐れられている女性」に他なりません。表向きは選挙戦略のコンサルタントですが、裏では「アメリカの製薬業界を自由に操るロビイスト」なのです。

 ケネディ氏が目の敵にしているファイザーやジョンソン・エンド・ジョンソンなどが直面する薬害問題に関する訴訟を解決するために司法当局と掛け合ってきた人物です。そんな彼女が大統領の首席補佐官に起用されたということは、「製薬業界の敵」と見なされているケネディ氏が期待したような要職に就くことはないでしょう。

 トランプ氏はワイルズ女史の采配で当選したわけで、すでに「ケネディ氏は用済み」として遠ざけるに違いありません。その代わり、ケネディ氏の「子どもの健康を守る会」には製薬業界から多額の資金提供が約束されているとのこと。アメリカでも「裏金」が政策を動かす原動力になるというわけです。

 要するに、アメリカの大統領選挙は「カネまみれ」との批判もありますが、勝敗を決したのは、「カネの使い方」だったようです。当初、接戦が予想されていたのは、ハリス副大統領のほうがトランプ前大統領よりも、はるかに多額の選挙資金を集めていたためでした。

 バイデン大統領が選挙戦からの離脱を宣言し、ハリス副大統領を自分の後任に指名したことで、民主党支持者の間では「若くて能力も高く、初の女性大統領の可能性が高い」との期待感から瞬く間に献金が集まったわけです。その額たるや、選挙管理委員会によれば、10億ドルを軽く突破していました。

対するトランプ氏の場合は、3億8,000万ドル強でした。ハリス陣営がトランプ陣営より3倍もの資金を集めることに成功したのです。この潤沢な資金を使い、ハリス陣営ではメディアを懐柔しました。その影響で、アメリカの主要メディアは「ハリス有利」を匂わせる報道を開票日まで続けていたのです。

 しかも、ハリス陣営ではレディー・ガガやビヨンセなど有名な女性歌手やオプラ女史のような名司会者に高額な謝礼や選挙集会の会場までの往復のプライベートジェットの提供まで行っていました。

(つづく)

浜田和幸(はまだ・かずゆき)
    国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。

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