アメリカ大統領選挙顛末記:トランプもハリスも似た者同士?(後)
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国際未来科学研究所
代表 浜田和幸確かに、ハリス候補の選挙集会には大勢の支持者が集まっていたようですが、その大半は有名なタレントを無料で見物できることを期待していたに過ぎなかったようです。いわば、著名人を壇上に挙げ、「カマラをよろしく!」と言わせれば、得票に結び付くと勝手に思い込んだのでしょう。
残念ながら、そうした期待は水泡に帰してしまいました。白人女性の投票数を見ても、トランプ候補のほうがハリス候補を上回っていたからです。ハリス陣営は大統領選挙史上、最高額の資金を集めたのですが、その支払先の上位500人を見ると、すべてがメディアとコンサル企業、そして動員されたタレントでした。
要は、カネで買われたに等しいメディアやタレントにとっては、ハリス候補を本気で支える気はさらさらなかったといえるでしょう。その上、勝負がついた後の経理状態を見ると、驚きます。
なぜなら、トランプ陣営は集めた資金3億8,000万ドルから3億5,000万ドルを使っていました。ところが、ハリス陣営は10億ドルを超える資金を集めていたのですが、使ったお金は13億ドルを超えていたことが判明したのです。表には出ていませんが、多額の借金を抱えて、選挙戦を終えたわけで、これから借金の返済に追われるはず。
カネの使い方に関しては、不動産王の異名を取ってきたトランプ氏のほうが上手で、それゆえに「勝利の女神」も微笑んだということでしょう。結局、アメリカの大統領選挙はそんなトランプ前大統領の圧勝で幕を閉じました。
民主主義の象徴とされる選挙ですが、「金銭資本主義」の象徴でもあります。民主、共和の両党とも、PACと呼ばれる政治活動資金の受け皿組織を通じて、多額の献金を集めることにしのぎを削っていました。激戦州はもとより、広い国土のアメリカで長丁場の選挙戦を戦うには、莫大なお金が必要になります。
実は、11月5日の投票日まで、カネをめぐる争いは伯仲していました。とくに、ハリス副大統領の陣営では「厳しい情勢を土壇場で覆すにはカネがいる」との結論に至ったようです。
そのため、投票日の早朝から、全米の民主党支持者に対して、「このままではトランプが勝ちそうだ。逆転させるにはカネがいる。ペンシルベニア州を落とすわけにはいかない。皆さん、20ドルを大至急振り込んでください」との緊急メールが発信されたとのこと。ただ、
使い道の説明は一切ありませんでした。追って、「このままではトランプに勝利をもっていかれてしまう。そうなれば、人工妊娠中絶の権利は失われる。出産に関する選択の自由を奪われます。一刻を争うので、もてるお金をすべて大至急、ハリスを当選させるために送金してください」というメッセージが民主党党員に届いたのです。
しかも、ターゲットになったのは比較的若い女性の民主党員でした。この緊急メッセージを発信したのは「選択の自由を求める多数派」と銘打った団体で、女性の権利を擁護すると訴えています。本年1月に誕生したばかりで、民主党の政策をアピールしていますが、ハリス副大統領とは無関係の「選挙相乗り組織」に他なりません。なぜなら、この組織は集めた360万ドルものカネを一切、ハリス候補の選対本部には送金していないからです。
どういうことかといえば、民主党本部の元職員らが、在職中に得たデータを悪用し、「母性保護戦略」というロビー団体を立ち上げ、あたかも民主党の組織であるかのような偽装を施し、資金を集めていたのです。フェイク政治団体ですが、「選択の自由を求める多数派」が集めた資金の受け皿にもなっていたというから驚きます。
一事が万事で、大統領選挙で支持する候補者のために資金を送金したはずなのに、実はフェイク集団の裏金になっていたという話です。「選挙にカネがかかる」という現実を逆手にとって、有権者からお金を奪うという新手の詐欺といっても過言ではありません。
こうした不正が次々と明らかになっているのがアメリカ政治の実態です。民主主義のご本尊のような顔をしているアメリカですが、その屋台骨は「腐ったカネまみれ」と言っても過言ではありません。日本も「他山の石」とすべきではないでしょうか。
(了)
浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。関連記事
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