2024年11月25日( 月 )

苦境に立たされた韓国造船業界(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

zousen2 韓国の造船業界は、建造量では世界トップを争うほど成長し、韓国の輸出に大きく貢献してきた業界である。しかし、近年になって、その造船業界に暗雲が立ち込めている。
 その原因としては、原油価格の下落、造船・海洋プラントの受注減少、競争力の低下、収益性の悪化などが上げられ、韓国造船業界はまさに史上最悪の危機に直面している。それに、中国企業の低価格攻勢と、日本の技術力と円安を武器にした造船企業の競争力回復も大きな脅威になっている。上記のようにいろいろな要因が重なって韓国造船業界は苦戦を強いられているが、特に造船業界の大手3社を苦しめているのは、大手3社が受注した海洋プラント(原油などを掘削・生産する装置)である。海洋プラントが足を引っ張る形で造船3社は、第2四半期に次いで第3四半期も巨額損失を出し、業界が騒然としているし、今の状況を改善できるこれといった方策もないので、業界では懸念している。
 世界で一番建造能力を持っている大宇造船海洋は、このような海洋プラントの損失を隠すために2兆ウォン近く粉飾決算を行なって業界を騒がせたのは数カ月前である。大宇造船海洋だけでなく、他の造船会社も巨額損失が明るみにでて、造船業界に対する不安は増幅している。
 韓国造船業界に今何が起こっているのか、海洋プラントはなぜ造船業界の足を引っ張っているのかを今回は追ってみよう。

 韓国の造船大手3社は近年それぞれ、海洋プラントや掘削船を集中的に受注してきた。しかし、激しい競争のなかで受注を確実にするため、低価格で受注を敢行した。低価格だけでも損失が発生するのに、技術不足による工期の遅れなども重なって損失が膨らんだ。弱り目に祟り目で、最近の原油価格の低下で石油メジャーは海洋プラントの契約キャンセルを続発させ、造船会社の収益に大打撃を与えている。大手3社は低価格受注が影響して、今年の第2四半期にもそれぞれ営業赤字を計上し、営業赤字の合計金額は何と4兆7,509億ウォンに達していた。現代重工業は第2四半期に営業損失を計上していて、その金額は1,710億ウォンであったし、大宇造船海洋も第2四半期の営業損失を3兆318億ウォン出し、サムスン重工業も創業以来最大となる1兆5,481億ウォンの営業損失を計上した。それだけでなく、大手3社は第3四半期にも大幅赤字を計上した。大手3社のなかで唯一第3四半期に黒字をキープしていたサムスン重工業は、海洋プラントがキャンセルされ、最終的に赤字に転落する結果となった。

 韓国の造船業界は、2017年まで建造して引き渡すことになっている海洋プラントの受注量は75兆ウォンである。しかし、このまま原油価格の低迷が続けば、グローバル石油メジャーは、石油開発を先送りする可能性も十分あるため、海洋ブラントの受注案件は今後韓国造船会社にとっては時限爆弾になりかねない。

 韓国の金融監督院によると、大手3社の第3四半期の営業損失合計は2兆1,247億ウォンであるということだ。サムスン重工業は10月には第3四半期の営業利益を846億ウォンであると開示した。しかし業績発表3にち後に米国の掘削会社であるPacific Drilling社からドリルシップの契約を一方的にキャンセルされてしまった。
これにより、サムスン重工業はこの損失を第3四半期の業績に反映し、100億ウォンの赤字になったことを修正開示した。
 現代重工業もノルウェーのフレッド・オルソン社からのドリルシップのキャンセルがあり、それを反映し、第3四半期の営業損失を6,784億ウォンから8,976億ウォンに修正した。

(つづく)

 
(後)

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