本質は地盤の土質と三井住友建設!杭打ち不正問題で専門家が提言
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横浜のマンションが傾斜したことからクローズアップされた杭打ち不正問題。杭打ち大手のジャパンパイル(株)でもデータ流用が判明し、問題が広がっている。杭の先端が支持層に届いたかどうか、それを確認する電流計のデータを流用したことだけが取りざたされているが、杭打ち不正問題の一番重要な問題は隠されている。「ユーザーに安全な建物を供給するという基本」に立って、1人の専門家が衝撃の提言をNETIB-NEWSに寄せた。提言したのは、協同組合建築構造調査機構代表理事の仲盛昭二氏(一級建築士)。重層下請け構造の建設業界で、特定のゼネコンや意匠設計事務所に属さない“一匹狼”だから言える正論、その内容とは――。
横浜のマンション傾斜に関して
協同組合建築構造調査機構
代表理事 仲盛 昭二横浜のマンション傾斜の問題では、旭化成建材の責任が最も大きいという報道が、連日続いています。私は、これについて違和感を覚えましたので、個人的な意見でありますが、少し書き記してみます。
横浜のマンションで採用されていた杭の工法は「ダイナウイング工法」という国交大臣認定の工法です。既成杭の認定工法は、一般的な杭の工法と較べ、2~3倍もの支持力が得られる為、多くの杭業者が認定を取得しており、現在の建築においては主流となっています。
一般的な既成杭では、支持地盤に到達している杭先端部分の支持力と杭周面摩擦力の比率は8:2程度ですが、認定工法では、この比率が5:5程度と周面摩擦力を大きく採る例もあります。このように、従来の一般的な杭工法よりも相当大きな支持力が得られる認定工法においては、厳密な認定条件が定められています。
旭化成建材のダイナウイング工法においては、報道で話題になっている「電流計による地盤の確認」も、勿論、認定条件となっています。しかし、最も大きな点は、「認定工法では杭先端部分の土質が限定されている事」です。同工法の認定は、「砂質地盤」「礫質地盤」のみを対象としています。しかし、問題となっているマンションの支持地盤の土質は「土丹層」という粘土質の地盤であり、認定の対象外です。
設計・施工を担当した元請業者である三井住友建設の社長の記者会見では、この点に関する質問に対して、同社社長は「最適な工法と判断した」と回答しています。
認定外の地盤に認定工法を採用すれば、認定で設定された支持力を得られません。「支持層に届いていない杭がある」という現在の問題に留まらず、「認定外の土質のため、杭が支持層に到達していても、設計通りの支持力を有していない」という大問題に発展します。つまり、傾斜した棟以外の棟も、杭が認定条件を逸脱した違法な状態になっており、設計通りの支持力を有していないという事であり、すべての杭が法律違反となっているのです。一般的な杭工法では電流計による支持地盤の確認は義務付けられていないので、「電流計云々」よりも、「認定外の土質に認定工法を採用した」という設計の誤り(偽装)の方が遥かに大きな問題です。三井住友建設や旭化成建材側は、安全確認を強調していますが、そもそも、すべての杭が認定外の違法状態であるという大前提においては、安全確認の意味を為しません。
三井不動産レジデンシャルは、いち早く、傾斜していない棟も含めた全棟の建替えを表明しました。この背景には、「違法状態が発覚する前に建替えを進めたい」という思惑があったのではないかと、個人的に推察します。旭化成は、調査が終わったと報告していましたが、一体、何を調査したのか? 「認定に適合する地盤である事を確認できたのか?」という事が明らかになっていません。また、横浜のマンションでは、三井住友建設が、支持層の深さを測定する為に、サウンディング試験調査を行っていますが、この調査方法では、地中の土質サンプルを採取できない為、事前に採取した見本との比較ができず、土質の確認ができません。「調査をしている」というポーズが目的としか思えません。
建築において、杭の仕様を決定するのは設計者です。この建物では三井住友建設です。設計が誤っていれば、建築確認の審査機関が指摘し是正を求める事が義務付けられています。施工段階でも元請施工業者が是正を進言すべきですが、同社の設計・施工であった為、施工段階でのチェックができませんでした。設計、建築確認、施工、全ての段階で、「このマンションの支持層が認定工法に適合していない事」を見落としていたのです。末端の杭施工業者の作業員は設計図に忠実に仕事をされる事が一般的と思われるので、工法認定の条件までは完全に把握できてないと思います。肝心要の設計者(三井住友建設)の「認定外の杭を採用する」という、設計の誤り(偽装)が出発点となり、このような事態に至りましたが、これは、設計者、建築確認機関、元請施工業者、杭施工業者による共同不法行為です。現在の報道は、「電流計のデータの流用」にばかり偏り、最も重大な本質を見落としています。認定工法でありながら認定外の土質の地盤に採用している事例は、全国的に調査をすれば、凄まじい数に上る事は間違いありません。建築業界の悪しき体質を一掃し、ユーザーに安全な建物を供給するという基本に立ち返っていただきたいと願うばかりです。
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