2024年12月16日( 月 )

船井電機会長・原田元環境相、政治家としての遍歴(前)

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 東京地裁から破産手続開始決定を受けた船井電機の代表取締役会長で元環境相の原田義昭氏が2日、東京都内で記者会見を行い、民事再生法の適用を東京地裁に申請し、受理されたと明らかにした。破産手続きと民事再生法の適用申請が、ほぼ同時期に行われる異例の事態となっている。

「マルチ商法の広告塔」との批判

イメージ    原田氏が、船井電機の代表取締役会長に就任した経緯も不可解であったが、現職の国会議員であった際にも、脇の甘さが指摘されていた。そのうちの1つとして、マルチ商法疑惑のある企業の広告塔になっていたことが挙げられる。

 全国で多くの訴訟が起こされた(株)ジェイコスメ・ジャパン(東京都品川区、以下、ジェイコスメ社)と原田氏との間には深いつながりがあった。ジェイコスメ社は、2014年に化粧品を販売する企業として設立された。同社は、会員登録して化粧品を購入することを基本に、高配当を謳い規模を拡大していった。

 会員は一口10万円の出資で、1年満期14万ポイントの配当が支給されていた。ポイントは現金への交換も可能で、約40%という高利率を目当てに多くの会員が換金していたという。また、会員を集めると紹介料を受け取ることができた。典型的なマルチ商法だが、同社は短期間で急成長を遂げた。

 ジェイコスメ社は、配当が止まる19年夏までの年3回、出資者を集めた大規模なパーティーを東京で開催。そこに原田氏も出席して挨拶などをしていた。それだけではなく、原田氏が支部長を務めた自民党福岡県第5選挙区支部の収支報告書(17年分)には、同社から約400万円の寄付を受けたとの記載もあった。

 弁護士資格をもつ原田氏は、同社のパンフレットに「顧問弁護士」と記載されていた。当然「現役の与党国会議員が顧問だから、間違いはないだろう」と考えて入会した会員がいたことは想像に難くない。

 原田氏は悪徳商法など消費者問題を所管する衆議院消費者問題特別委員会の委員長も務めたが、問題が一部週刊誌に報じられた際、自身のFacebookで「選挙妨害」と批判していた。その後、福岡県内の被害者が原田氏と面会した際には、真摯な対応を約束したようだが、政治家として慎重さが足りなかったことは間違いない。

 政治家が広告塔などの役割をしたマルチ商法がらみの事件として、ジャパンライフ(株)による詐欺事件が挙げられる。ジャパンライフは、磁気ネックレスなどの購入を勧誘し、それを貸し出すことで配当が得られる「レンタルオーナー制度」を展開していた。

 ジャパンライフの会長は、安倍政権時代の15年に開催された「桜を見る会」に招待されている。下村博文元文科相への献金や、官房長官も務めた加藤勝信氏と同社会長が会食をしており、宣伝パンフには「加藤大臣と会食した」と書かれていた。

旧統一教会から受けた選挙支援

 マルチ商法に限らず、さまざまな企業や団体が思惑をもって政治家に接近してくる。原田氏は、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との接点も深いことで知られる。22年7月の安倍晋三元首相の事件後、教団と政治家の関係が問題となった。原田氏は、関連団体の行事に出席していた他、議員連盟の会長・顧問も務めた。

 同年12月、筑紫野市の事務所で原田氏を取材する機会があり話を聞いたところ、共産主義反対など自民党の政策と一致しており、「一生懸命応援してくれる」と教団を評価したうえで、「10以上の宗教団体から支援を受けた」「選挙では、電話がけを中心に支援を受けた」と語っていた。多くの政治家が沈黙するなか、実態を正直に語っていたのは間違いない。

 国は昨年10月、教団に対して宗教法人法に基づく解散命令請求を東京地裁に行った。来年1月にも審理を終え、年度内に宗教法人としての解散に関する結論が出るとみられる。長い間、深いかかわりをもってきた原田氏の心境はどうだろうか。

 社会的に問題のある団体との関係を隠さない原田氏に対し、地元では冷ややかな反応が少なくなかった。もちろん、安全保障や外交に対する原田氏の見識や姿勢を高く評価する人たちもいる。

 自民党議員に地域が期待することの1つにインフラ整備が挙げられるが、「筑紫地区をはじめ、交通インフラが不十分。国家論もいいが、もっと地元の利益を大切にしてほしかった」と語る地元の地方議員からの声がきかれた。後編では、地方議員の声などを紹介していくことにする。

(つづく)

【近藤将勝】

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