2024年12月28日( 土 )

船井電機会長・原田元環境相、政治家としての遍歴(後)

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 東京地裁から破産手続開始決定を受けた船井電機の代表取締役会長で元環境相の原田義昭氏が2日、東京都内で記者会見を行い、民事再生法の適用を東京地裁に申請し、受理されたと明らかにした。破産手続きと民事再生法の適用申請が、ほぼ同時期に行われる異例の事態となっている。

東京高裁、取締役に疑義

 船井電機の破産手続きをめぐって、同社代表取締役の原田義昭会長(元環境相)が、東京地裁の開始決定に反対し、即時抗告を申し立てていたが、東京高裁が26日付で却下していたことがわかった。原田氏は、東京地裁に民事再生法の適用を申請しているが、こちらに関しては、地裁の判断はまだ出ていない。

 原田氏は申立書において、船井電機の100%株主である親会社が約50億円の資金を用意しており「支払い不能ではない」と主張し、船井電機は約100億円の資産超過で「債務超過ではない」としていたが、同社の破産管財人の弁護士は「即時抗告は、何ら根拠がない」と反論していた。

 今回、東京高裁が即時抗告を却下したのは、原田氏が船井電機の代表取締役会長に就任したことについて「(船井電機の)取締役であるかどうかについて疑義があることは否定しがたい」と指摘し、原田氏の即時抗告は「不適法であるから却下を免れない」との判断を下している。

保守分裂選挙の弊害

 船井電機をめぐる原田氏の言動だけでなく、政治家としての同氏の歩みを振り返ると、本職である弁護士の立場がそうさせるのかもしれないが、波風を立てることが少なくない。

 原田氏は21年の衆院選で落選したが、昨年の筑紫野市長選では、元県議の平井一三氏を支援し、衆院選でも自民党公認の栗原渉氏に対抗して候補者を擁立する動きを水面下で行うなどしていた。

 昨年の県議選では、太宰府市選挙区において県連の公認候補に対して別の候補を支援した。原田氏の元秘書で太宰府市議会議長も務めた陶山良尚市議は、平井氏の選挙報告会において当社記者に「県連の候補は応援しない」と語るなど対立が激化した。

 こうした原田氏の動きを、当然ながら地元福岡5区内の保守系地方議員の多くは、快く思っていなかった。今年2月23日に、ホテル日航福岡において原田氏の旭日大綬章叙勲の祝賀会が開催されたが、福岡5区内の地方議員の多くは欠席した。

 自民党県議団所属のある県議会議員は、当社の取材に対し「御招待として案内いただいたが、これまでの経緯があり欠席することにしました」と語っていた。

 祝賀会の発起人には、麻生太郎自民党副総裁や横倉義武元日本医師会会長、小林元治日本弁護士連合会会長などが名を連ねており、新型コロナウイルス感染症対策室長を務めた尾身茂氏が特別講演を行った。

 錚々たる発起人のなか地元議員の多くが欠席したのは、原田氏への反発もあるが、タイミングとして自民党派閥の政治資金問題が大きな問題となっていた時期で、福岡市内で開かれる大規模なパーティーに出席しにくかったこともあった。

地方議員の率直な声

 原田氏と近しかった筑紫野市議会議員・横尾秋洋氏(元議長)は「長年、原田先生を応援してきたが、栗原氏に対抗馬を立てたのはよくなかった。それで筑紫地区の地方議員のほとんどが反目となった。国家観など自民党内でもしっかりしたお考えの方だけに残念だった」と語っていた。

 太宰府市議会議長・門田直樹氏は「地域振興やインフラ整備をもっと充実させてほしいというのが地元の願い」と述べるなど、これまでの原田氏の取り組みの不十分さを指摘していた。

 自民党も地方創生を掲げ、地域の成長・発展を目指して予算付けを行い政策を立ててきたが、政治家の役割が社会基盤の整備であることは間違いない。福岡市に隣接する福岡都市圏の南部地域である福岡5区では筑紫地域の渋滞緩和、朝倉地区では災害対策が望まれていた。そうした地元の声を原田氏がどれだけ受け止めていたのかというと、疑問を感じざるを得ない。

 今月で、筑紫野市にある原田氏の事務所(弁護士事務所となっていた)は閉鎖される。原田氏を評価する声もあるが、少なからず地元の分裂を生んだことの弊害は、すぐに改善されるものではない。栗原渉氏が当選したことで、今後の5区内の発展に地元から期待の声が高まっている。

(了)

【近藤将勝】

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