駅前に新たなランドマーク 南の副都心・大橋（1）

「OHASHI HILL」 25年3月開業へ

　福岡市南区の西鉄天神大牟田線・大橋駅前で現在、新たな複合商業施設「OHASHI HILL」の開発が最終段階に入ってきている。

　「OHASHI HILL」は、福岡市が実施していた「ゆめアール大橋跡地活用事業」に係る事業者公募において、2022年8月に優先交渉権者に決定した（株）えんホールディングス（HD）によって開発が進められているもの。同跡地活用事業は、南市民センターの改修・リニューアルに併せて移転および既存施設が廃止となった「ゆめアール大橋」（大橋音楽・演劇練習場、南区おおはし子どもプラザ）の跡地において、移転後施設の恒久化や機能強化等に係る財源の確保を図るために売却し、民間による跡地活用を行っていくもので、跡地活用にあたっては、福岡市都市計画マスタープランに位置付ける南部広域拠点核における「まちづくりの視点」や市の重要施策を考慮するとともに、施設全体として新たな社会課題や価値観の多様化に対応した民間事業者の活用提案を評価し、地域の魅力向上や賑わいの創出に資する跡地活用としている。

　同跡地は、大橋駅を中心として商業・業務機能などの多様な機能が集積する南部広域拠点に位置し、鉄道とバス等の交通結節拠点である交通広場に面している駅前一等地。敷地面積は2,500.01m²、用途地域は商業地域、建ぺい率80％／容積率400％、航空法上の高さ規制は約43mとなっている。なお、23年8月からは地域に開いた広場「OHASHIはらっぱ」として、自由に休めるベンチや天然芝のオープンスペースなどを設けて暫定的に開放されていたが、24年3月に広場の開放を終了。同月に「OHASHI HILL」の着工となった。建物はS造・地上6階建、延床面積約9,800m²で、設計は（株）BAS建築設計、施工は（株）未来図建設がそれぞれ担当。25年3月の開業を予定している。

　えんHDによる提案では、「OHASHI HILL」は「ウェルネス」「多様性」「環境」「文化芸術」をコンセプトとし、大橋駅前にみんなが「居場所感｣を得られる施設を生み出すとしている。植栽を立体的・重層的に組み合わせることで緑の大きな塊を駅前に出現させ、大橋の新たなランドマークとなるように計画されており、壁面・屋上緑化の監修を庭園デザイナー・石原和幸氏が務める。名称の「OHASHI HILL」は、地域住民が抱く緑豊かな南区のイメージを立体公園の概念によって建物を緑で覆うことで継承するとともに、地域に愛されアイコンになる複合施設となることを目指して付けられた。施設内には、調剤薬局やカフェ、ベーカリー、物販テナント、クリニック、オフィスのほか、子育て支援施設（運動スクール・一時保育所等）なども備え、さらには地域の活動拠点となる新施設「おおはしラボ」も開設する。また、1階部分にはアートベンチやデジタルサイネージを設置した半屋外の空間「木かげ広場」を整備するほか、屋上にはトラックやベンチなどを備えた多様な人々が憩い・遊べる広場「スターパーク」なども整備していく。さらに、福岡市が推進する「Fukuoka Art Next」や「一人一花運動」「都心の森1万本プロジェクト」などにも参加。開業後もまちに彩りを与えることを目的に、魅力的かつ継続的な企画や運営に取り組んでいくことで、南区の文化芸術の発信となる施設を目指していくとしている。

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　駅前に新たなランドマークが誕生しようとしている大橋エリア。過去に弊誌vol.26（20年7月末発刊）でも、「オールラウンドなまち福岡･大橋」として大橋エリアの歴史的な成り立ちや土地の特性、当時の開発動向などを取り上げたことがあるが、それから約4年半が経過し、まちの状況も少々変わってきた。今回は大橋エリアに再びスポットを当てて、改めて取り上げてみたい。

（つづく）

【坂田憲治】