2024年11月25日( 月 )

低油価で苦戦する韓国経済(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

korea2000年の前半には20ドルくらいであった原油価格は上昇を続け、ピーク時には150ドルまで上昇した。しかし、2008年に世界金融危機が発生し、原油価格は一時的に80ドル前後まで下落したが、その後また価格を取り戻し、100ドル前後を推移していた。高油価時代であったこの時期は産油国にとっては黄金時代で、原油輸入国にとっては大変な時代であった。

 このまま高油価時代は続くのかと思っていたら、2014年の後半から原油価格はまた下落し、現在は40ドル台の価格を形成している。原油価格が下落すると、輸入国にとっては財政的に余裕がでてくる。原油価格が10%下落すると、韓国経済のGDPは0.4%引きあがる効果があるという統計があるほど原油下落は韓国経済にとっては確かにプラスの側面はある。

 個人的にはガソリン代が下がると、可処分所得が増加するので、嬉しい限りである。しかし、低油価はこのようにプラスの側面だけだろうか。今回は、低油価が韓国経済にどのような状況をもたらしているかを考えてみたい。それに、今の世界経済は密接につながっているので、低油価は世界的に各国経済にどのような現象を引き起こしているかも追ってみたい。

 最近、韓国の証券市場でサウジアラビアの国富ファンドは3兆ウォン以上の株式を売却している。アメリカの金利引き上げに備え、資金を確保するためであろう。原油価格が下落した現在、ロシアなどをはじめ、多くの産油国は通貨下落、財政圧迫を経験している。その典型的な例のひとつであるブラジルの例を見てみよう。ブラジルは人口も多く、今後の経済発展が期待されている資源国の一つである。ブラジルは資源の中でも深海油田の開発に熱心であった。深海油田の開発コストは平均すると80ドルくらいなので低油価時代には意味がなかったが、原油価格は100ドルになってくると採算性がでてくる。ブラジルは深海油田の開発に着手した結果、2006年にはトゥピ油田を、2009年にはリブラ油田を開発した。この油田開発の成功することによって、ブラジルの油田の価値は2,000億ドルから一気に3兆ドルに急上昇した。これだけ一気に国の資産が増加すると、ブラジルはこの資産によってブラジルの未来は保障されたものだとはしゃいだ。

 そのようななかで、ブラジル政府はペトロブラスを通じて油田開発をもっと積極的に推進することになる。2010年にペトロブラスは株式公開をして645億ドルの資金を確保することになる。ペトロブラスはその資金だけでなく借り入れをして積極的に深海油田に投資をした。ペトロブラスの借入金は2006年には66億ドルくらいだったが、2014年には1,326億ドルになり、何と20倍も増加していた。即ち政府もペトロブラスも資産と負債の莫大な資金を深海油田に投資したわけである。ペトロブラスの場合には投資の売上高に占める比率が30%に達するほどの投資を敢行した。当時としては妥当な判断であった。

 しかし、その夢は一瞬にして幻として消えてしまった。というのは、2014年の後半から原油価格は下落に転じ、半分程度まで下落してしまったからだ。今の原油価格は開発コストを下回っていて、油田を開発すればするほど損が出るような構造になってしまった。しかも、負債は海外からの借り入れが多く、原油価格がこのまま続くと、ブラジル経済はメキシコ危機のような事態を招きかねない。

(つづく)

 

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