生存権断ち切る冷酷な与野党
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NetIB-NEWSでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は「国民に寄り添う真の革新野党を打ち立てなければ、この国は終わる」と訴えた2月11日付の記事を紹介する。
安倍派が消えれば問題が解決するということではない。2012年12月の総選挙で第2次安倍内閣が発足。野田佳彦内閣が自爆解散を打って大政奉還した結果として誕生したのが第2次安倍内閣。「アベノミクス」は「大企業利益の成長」=「一般国民不利益の成長」を目指す政策だった。その象徴が消費税率の5%から10%への引き上げ。これで日本経済の息の根が止められた。
一次産業自由化、医療自由化、労働規制撤廃、法人税減税、特区創設が推進された。大企業利益は史上空前の規模に拡大したが、労働者一人当たりの実質賃金はアベノミクスの下で8.3%も減少した。
2023年には1年を通じて勤務した給与所得者の51%が年収400万円以下、20%が年収200万円以下。世帯所得の中央値は1995年の505万円から2019年の374万円へと131万円も減った。世界最悪の賃金減少国。そして、米国並みに広がる格差。圧倒的多数の中間所得者層が下流に押し流された。
数の力で台頭した安倍派は暴政の限りを尽くした。このなかで噴出したのがモリ・カケ・サクラの不祥事。さらに、統一協会との癒着、裏金不正事件が露見した。
2024年10月総選挙で主権者国民は厳しい審判を下した。自公を大敗北させて衆院過半数を大きく割り込ませた。驕(おご)れる者も久しからず。盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理(ことわり)をあらわす。
しかるに、日本政治の新たな地平が開けていると言えるか。残念ながら希望の光は差し込んでいない。これまでの政治を根底から刷新する新しいうねりを創り出す必要があるが、現実に広がるのは旧来路線の継続だ。
政治の主役は主権者である国民。この主権者が新しい方向を定める責務を負う。しかし、この主権者の意思に沿う政治勢力が台頭しない。旧来の政治を踏襲する守旧勢力が跋扈して政治刷新の気運がまったく浮上しない。少数与党であるから野党が結束すれば政府を動かすことができる。いま、この国を覆っている危機は「生存の危機」である。
生存権が根底から脅かされている。日本国憲法はすべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しているが、この条文が有名無実化している。論点として浮上しているのは「高額療養費制度」。「生存」を保障するには医療が必要不可欠。そのなかに高額な医療がある。しかし、大半の国民はその医療費を負担し得ない。「生存権」保障の観点から本人負担に上限を定めている。
それでも、その負担は極めて過酷である。ギリギリの状態で生存を果たしている国民が多数存在する。その本人負担を大幅に引き上げることは「生存」の断念を強要するもの。「生存権」を断ち切るものだ。
※続きは2月11日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「生存権断ち切る冷酷な与野党」で。
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