【特別対談】ザイム真理教から脱却して日本再生を 強欲資本主義との決別を目指す(後)

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政治経済学者 植草一秀 氏
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衆議院議員 原口一博 氏

 2024年10月27日投開票の衆議院選挙で、政権を担う自民・公明は過半数割れし少数与党に転落した。しかし、財政出動に否定的なザイム真理教や、グローバリズムの影響力は依然根強い。政治経済学者の植草一秀氏と、立憲民主党佐賀県連会長などを務める原口一博氏に、日本の現状、そして米大統領選などを受けての今後の世界の行方について、タブーなき議論をしていただいた。(対談日:2024年11月27日)

利権分配の政治から消費税での政界再編を

政治経済学者 植草一秀 氏
政治経済学者 植草一秀 氏

    原口 私は消費税ゼロを主張したんですけど。

 植草 政界の再編を行う必要があります。総選挙の比例代表選挙では、自公でだいたい2,000万票です。立憲、社民、れいわ、共産を合わせると約2,000万票。ほぼ互角の状況なのでしっかりまとまれば日本の政治を変えられます。しかし、立憲のかなりの部分に、実はアメリカの支配下に置かれている人たちがいて。消費税についても財務省の支配下にあります。そこはきちっと切り離して、本当の意味で自立をはたさなくてはなりません。消費税を5%に戻すことを軸にした政策で、もし1つにまとまれば多分国民は大きく動くのではないでしょうか。

 原口 仰る通りですね。売上税で大きく反発を食らったために、消費税は間接税だと嘘ばかり言っていますが、実質、直接税と同じですね。赤字の企業にもかかる税です。9兆円の増税で、財政赤字も拡大したわけですね。経済はもうどん底に落ちました。野田毅さん(その後、自民党に復党、自民党税調会長を務める)と、それから元日銀理事の鈴木淑夫さんが中心に、『政策不況・脱出の道筋』(東洋経済新報社、1998年)を書きました。

 ところが、当時私や鈴木さんがいた新進党っていうのは、自民党出身者が多く、構造が似ていました。利権に絡むかたちで改革的なものが潰れていくわけですね。細川内閣も民主党政権も共通のものがありました。

 2009年の民主党政権では、今度は左の社民が離れていきました。ディープステートの戦争屋に後ろから鉄砲を撃たれたのは同じコース。もう1つは、ザイム真理教で消費税を上げるってやったわけですね。私や松原仁衆議院議員などは絶対にダメと戦いましたが、でも、私が当時、ザイム真理教から完璧に抜けていたかというと、そうじゃないんですよ。

 宮沢大蔵大臣(当時)は、あるとき、私にこうおっしゃったんです。「原口さん、若いころから勉強熱心なのはいいですけど、こんなものはあっても何の役にも立ちません」。宮沢元大臣がいうように、一般会計と特別会計、政府歳出全体を見ないとわかりません。歳出全体の構造で見ると、消費税はまさに「反労働者税」です。

 あと、リベラルか保守かというところは、私はその点に関しては、何がリベラルかっていう定義もかなり怪しいと思っています。オール沖縄は、自民党を離党した翁長さんが中心で、歴史や伝統を中心とするアイデンティティーと憂国を真ん中に置いて、左右にウイングが広がっていくことではないかと思います。

 植草 日本の税の問題ですが、1989年度に消費税が導入されて2023年度までにだいたい500兆円吸い上げてきました。消費税の導入、あるいは増税をしようとしたときになかなか賛成が得られないので、財界を味方に引き入れるべく法人税減税を行いました。

 12年に野田内閣が消費税10%にする法律を強行制定しました。これが「社会保障と税の一体改革」と呼ばれたものです。その前、07年度に実はあの政府税制調査会が税制改革の在り方について報告書を出しています。このときに、各国の企業の税および社会保険料負担の国際比較を行いました。日本の法人負担は、アメリカに比べると若干高めですが、ヨーロッパよりはかなり低いので、日本で法人負担を軽減する必要はないという結論を出しました。

 しかし、12年、その結論を横に置いて法人税減税を行いました。現在、日本の上場企業の株式の3分の1以上が外国人保有になっています。外国資本が日本で法人税を払いたくないということで、某氏などを通じて法人税減税という指令を出して減税を行わせました。その穴埋めのために消費税がどんどん増税されてきた構造です。

 私はもし社会保障、すべての国民に保障する社会保障制度が完備されているのであれば、消費税のような税は1つの方法としてあり得ると思っています。しかし、日本の場合は、社会保障もアメリカ以上に実は貧困です。その国で消費税を上げるっていうのはまったくおかしい。立憲民主党は消費税を上げれば社会保障に使えると主張していますが・・・。

財政力は高いが社会保障が脆弱な日本

衆議院議員 原口一博 氏
衆議院議員 原口一博 氏

    植草 消費税だけ上げたら、アメリカの貧困な社会保障と、ヨーロッパの重い付加価値税負担の組み合わせとなり、悪魔の組み合わせです。日本の問題は、なぜこれだけ巨大な財政なのに社会保障がこんなに手薄いかというと、予算配分のほとんどが利権支出に回っていることにあります。与党が利権支出で特定の事業者・業界に予算配分を行い、政治献金としてキックバックが来る仕組みであり、これは実質的に合法的な賄賂政治の構造が出来上がってしまっていることを意味します。これからつくる新しい政治の核としては、やはり企業献金の禁止が柱になります。そして、消費税廃止です。

 ザイム真理教は、「減税すると政府が財政破綻する」と主張しますが、それは論理上ありえないです。民間企業でも巨大な債務を抱えている企業がありますけれども、長期債務に見合う資産として実物の設備をもっている。装置産業なんかそういう構造で、バランスシート上でそのようになります。利払いさえ円滑に支払われれば、何の問題もありません。政府の場合には最終的には徴税権という強制権力をもっていますので、民間企業の比ではないんですね。

 もう1つの課題である予算配分としては、実は支出の大半が利権支出なんです。20~23年度の4年間に、実は補正予算に154兆円計上された。1年あたり40兆円に近いんですけれども、ほぼ利権支出です。こうした政治を変えるには、党派を超えたグループが必要です。

 原口 草の根の国民による政治の実現がゆうこく連合の理念です。政党で変わったためしがありません。僕も代表世話人ですけども、ゆうこく連合という国民運動を中心にそれをやっていく。植草さんがいわれた通り、10~21年度の上場企業の自社株買いの総額は8兆円、配当金は約30兆円です。株主への分配純利益の約60%で、それに対して1人あたりの従業員報酬というのは5%しか増えていません。現預金が70%増えているにもかかわらずです。

 政治資金の透明化なんて甘っちょろいことはダメです。企業団体献金を禁止して、議員が1人逮捕されれば、その分の政党助成金を国庫に返還させる必要があります。

 社会保障が何のためにあるかといったら、病気になったり、障害を負ったり、高齢になったり、あるいは小さくてまだまだ人の援助が必要な人、そのように社会的に立場の弱い人たちのためのセーフティネットとしてあるのです。現状は、セーフティネットをバンバン切って、多くの人を叩き落としている状態です。この馬鹿さ加減に気づくべきです。消費税を社会保障に使うといっているのはまったくの嘘です。「社会保障と税の一体改革」のなかにある合意文があります。僕はあのとき妻をなくして、ほとんど機能不全でしたが、改めて読み直すとひどいです。実質的に「民営化」と呼ぶ「私物化」です。

 ゆうこく連合では今何をやっているかというと、支持議員の紐付けです。国民運動として市井のレベルでやっていくことが大事です。この国では、上からの改革で変革を望むことはできません。それをいきなり新党で実現しようとするから実現しない。新党で成功した例はないんです。続いていません。なぜ続かないかというと、党が弱いからというより、なかに裏切り者が必ず入るからなのです。今回も野田佳彦氏が立憲の代表になりましたが、野田氏では野党共闘などできないに決まっているではないかとほかの野党からは背を向けられてしまっています。それを主導した人間がいるわけです。そういう人がいるから、新党などとは軽々しくはいえないのです。まだ敵味方の区別が国民はついていません。敵は、売国奴、日本の敵ですね。

断末魔の叫びを上げる強欲資本主義

 植草 私たちは「ガーベラの風」という名前の運動をしています。ガーベラという花は色とりどりの多様性があります。戦争と弱肉強食を、平和と共生に変えていく。現在の状況では、1つの政党が水と油の混合物のようなことになってしまっています。私たちは、それぞれの候補者が示す公約に基づいて「この人は推薦できる。この人は推薦できない」とする。党派ではなく、その人の掲げている公約に基づいて支持するかしないかを決めます。国会議席の過半数を取れば、それで政策に基づく政権も樹立できます。そういうアプローチは、原口さんが言ったゆうこく連合の考え方とも非常に近いです。それを進めていきたいです。

 原口 水と油は必ずしも悪いことばかりではなくて、水と油っていうことがよくわかったわけです。松下政経塾には五誓というのがあります。素志貫徹のこと、自主自立のこと、万事研修のこと、先駆開拓のこと、感謝協力のこと、です。松下幸之助さんの教えを基に考えれば増税というのは絶対ないはずです。財政が税だけで成り立っていると考える国は日本だけです。

 植草 今回の103万円の壁の話が出るときに、これは憲法25条の生存権の問題だという話も出ました。生活に必要な部分の控除するために、その制限額を上げないと生活ができない。これはその通りではあります。消費税があると、所得がゼロでも100万円でも10%まるまるかかってしまって、それは生存権の問題に直結する。日本で生存権を支える最後のセーフティネットは生活保護となりますが、生活保護の受給要件を満たしている人のうち、利用している人の比率は2割以下です。

 つまり利用していない人たちにとってセーフティネットは存在していません。そうした人たちにも消費税はかかっていて、それを苦にして、自ら死を選ぶようなことも発生している状況です。経済政策上非常に大事な問題です。

トランプ再選で変わる世界の在り方

国会議事堂 イメージ    植草 24年に私は『資本主義の断末魔』(ビジネス社、2023年)という本を出しました。資本主義は断末魔の叫びを上げている。資本主義の断末魔がつくるビジネスモデルで「断末魔ビジネスモデル(DBM)」と呼んでいます。断末魔の資本主義が収益源として再重視しているのがWPF(W=War、P=Public、F=Fake)です。

 あの戦争と、ワクチン薬害と、CO2の問題です。アメリカでトランプ政権が誕生しますが、顔ぶれは、厚生長官にロバート・ケネディ・ジュニア、エネルギー長官にクリス・ライト、国務長官にマルコ・ルビオ。マルコ・ルビオはウクライナ戦争を終結させるとのトランプ氏の主張に賛成しています。トランプ氏は、ディープステート支配というものに対する「ノー」をかなり鮮明なメッセージとして出しています。それがトランプが何度も命を狙われている背景ではないでしょうか。

 原口 そうですね。僕はトランプ氏の最大の支援母体「CPAC JAPAN」に入っていますが、トランプ氏だから全部いいなんて思ってなくて、たとえばマンハッタン計画になぞらえる発言は取り消せと抗議しました。横田基地から入国するのも、アメリカは、パンチと握手の力で相手を図りますから、そのやり方の1つです。

 これからトランプ氏が相手にするのは、ディープステート、軍産複合体、それから金融です。今回私がトランプ政権の顔ぶれで注目しているのはロン・ポール氏です。彼はリバタリアンで、12年の大統領選の共和党候補にも名乗りを上げていました。彼が何を言っていたかというと、中央銀行を中心とした利権システムをぶっ壊すと言っていたわけです。

 やはり日本でもアメリカでも、財務・金融関係の利権というのが根幹で、国を支配しています。ロン・ポール氏の人選はトランプ政権がそれを改革するという意思表示です。日本もザイム真理教とまでいわれる財務省の利権構造をぶっ壊す必要があります。

(了)

【文・構成:近藤将勝】


<プロフィール>
植草一秀
(うえくさ・かずひで)
植草一秀「資本主義の断末魔」1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーヴァー研究所客員フェロー、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)=TRI代表取締役。金融市場の最前線でエコノミストとして活躍後、金融論・経済政策論および政治経済学の研究に移行。現在は会員制のTRIレポート『金利・為替・株価特報』を発行し、内外政治経済金融市場分析を提示。予測精度の高さで高い評価を得ている。政治ブログおよびメルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。

原口一博(はらぐち・かずひろ)
1959年、佐賀市生まれ。佐賀県立佐賀西高等学校、東京大学文学部心理学科を卒業後、松下政経塾へ第4期生として入塾し、松下幸之助の薫陶を受ける。現在、衆議院議員9期目。立憲民主党佐賀県第1区総支部代表。衆議院予算委員会委員、郵政民営化に関する特別委員会理事、民主党佐賀県連代表を経て総務大臣、衆議院総務委員長、予算委員会委員、決算行政監視委員長などを歴任。立憲民主党佐賀県連代表、ゆうこく連合代表世話人。

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