大国に翻弄されながらも独立心を守り続けたウクライナ
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ロシアによるウクライナ侵攻が始まって2月24日で3年となった。トランプ大統領が戦争終結の仲介をしているが、2025年末まで戦争継続が可能な支援をバイデン前政権が行っており、ウクライナは妥協しないという。ウクライナは、モンゴルや帝政ロシア、旧ソ連に支配され、第2次大戦ではドイツとソ連の戦場となったが、今日に至るまで独自の歴史や文化を守り抜いてきた。
戦争継続が厳しいロシア
足掛け3年におよぶウクライナでの戦争は、米ロが停戦交渉開始で合意し、停戦・和平に向けて動き出した。しかし、当事者であるウクライナ政府・国民はトランプ大統領による頭越しの「停戦交渉」に疑問符をつける。
3年続いた戦いで、ウクライナ、ロシア両国共に疲弊している。プーチン大統領も、どこかで戦争をいったん終わらせたいと考えていたことは間違いない。ロシア側が予想した以上の死傷者が出ており、膨大な軍事費の支出で戦争継続が厳しい状況にある。
ウクライナ側も多くの都市が破壊され国民生活は疲弊しきっており、欧米の支援も全面的なものではない。だが、トランプ大統領はゼレンスキー大統領を「独裁者」と呼ぶなど、プーチン氏に肩入れしており、ウクライナ国民は、こうした状況を容認できないだろう。
知日派・ボグダン氏の訴え
ウクライナ人ジャーナリストのボグダン・パルホメンコ氏は自身のYouTube動画で「バイデン政権は2025年まで戦争継続可能な支援をしており、トランプ政権が揺さぶりをかけても年内いっぱいはもちこたえることができる」と述べ「ウクライナは軍事装備の55%を自国で製造または資金提供しており、ゼレンスキー大統領も冷静に対応できる」との見方を示した。
さらに「報道ほどロシアは成果がでておらず、経済崩壊しかねず、トランプと組んで外交手段でウクライナの資源を『トランプに差し出す用意がある』というのは、それだけロシアはピンチということ」とも指摘した。
ボグダン氏は、母とともに来日し、阪神大震災で被災した。大阪市内の小中学校を卒業後、ウクライナの高校・大学を経て、三菱商事に就職。その後、貿易会社を経営し、現在、YouTubeを通じてウクライナの状況などを日本語で発信しており、多くの日本のメディアにも登場している。
同氏が語るように戦争をやめたがっているのはむしろロシアの方で、プーチン大統領にとって友人ともいえるトランプ氏の大統領就任は絶好のチャンスなのだろう。
しかし、2月18日にサウジアラビアで米ロ外相らが停戦交渉開始の条件などを協議したが、当事者であるはずのウクライナは招かれていない。2月27日、トランプ大統領は英国のスターマー首相と会談したが、和平交渉について「非常に順調に進んでいる」と楽観的な見解を示し交渉におけるロシアの行動を評価する発言をした。
サウジでの交渉直前には次のような発言もあった。BBCの記者が「ウクライナ南部クリミアがロシアに併合された14年以前の国境に、ウクライナが戻る可能性はあるのか」と質問を行ったがトランプ大統領は「領土の一部は戻ってくると思う」と述べる一方で「14年以前の国境に戻る可能性は低い」と語ったという。
モンゴル支配からウクライナをめぐる歴史
こうしたロシア寄りのトランプ大統領の姿勢に、欧州諸国は懸念や警戒感を示しているが、一番の問題は、大国同士のパワーゲームに翻弄されることだ。
現在の国境線でウクライナを理解すれば認識を誤ることになる。13世紀にモンゴルの支配を受けたことは知られている。チンギス・ハーンの後継者となった息子のオゴデイ・ハーンが西方地域への攻勢を命じたのは1235年。モンゴル軍は現在のウクライナを含むキエフ大公国の諸都市を席巻し、40年に大公国は崩壊した。それから約200年、ウクライナ地域はモンゴルの支配下に置かれた。
ウクライナの西部は歴史的にポーランドの一部で、それ以前はリトアニア大公国の統治下にあった。東西のウクライナをまとめてソ連が占領し、国境線を引いたことでウクライナが誕生。このようにウクライナはめまぐるしく支配者が交替してきた。
ウクライナは国土全域が第2次世界大戦時の「独ソ戦」の戦禍に見舞われた。ウクライナには、世界で最も肥沃な土壌とも言われる「チェルノーゼム」が広く分布しており、小麦の穀倉地帯として知られる。ヒトラーはウクライナを占領することでスターリン政権下のソ連を「日干し」にしようと企てた。日本でも2022年に上映された映画「バビ・ヤール」は、独ソ戦でウクライナに侵攻したドイツ親衛隊がウクライナにいた多数のユダヤ人を虐殺した史実を描いている。
歴史的に大国の思惑に翻弄されてきたウクライナであるが、ボグダン氏が語るようにウクライナ人は、「コサック魂があり、自由を愛するメンタリティーがある」。だからこそ、巨大国家・ロシアの侵攻に対しても屈することなく戦い抜いており、「トランプ大統領何するものぞ」という不屈の魂は、日本人も見習うべきではないだろうか。
【近藤将勝】
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