【2025年の行政動向】これだけは知っておきたい!食品表示の変更点/ネット通販の悪質な広告

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 食品の購入時に、パッケージ上の表示は商品選びの決め手となる。表示制度が改正される場合、適切な商品選択を行うために変更点を理解しておく必要がある。また、インターネット通販を安心して利用するうえで、悪質なネット広告の動向を押さえておくとトラブル防止につながる。2025年に予定されている食品表示やネット通販に関する行政動向を紹介する。

機能性表示食品制度の改正 商品選びのポイントとは?

 昨春の「紅麹」問題を機に、機能性表示食品制度が改正された。その一環として、商品パッケージの表示方法も変わる。パッケージの改訂には2年間の猶予期間(2026年8月末まで)を設けている。販売会社によってタイミングは異なるが、今年からパッケージの切り替えが進むことになりそうだ。

 消費者が押さえておきたい変更点として、パッケージの表面に表示される機能性の表現方法がある。たとえば、内臓脂肪に着目した商品が多数販売されているが、そのほとんどでは「内臓脂肪を減らす」などと表示している。しかし、今回の改正により、「内臓脂肪を減らす」というような“言い切り型”の表現は禁止される。これに代わって、「〇〇(成分名)には、内臓脂肪を減らす機能があることが報告されています」と表示しなければならない。ただし、一部の商品では「〇〇(成分名)が含まれるので、内臓脂肪を減らす機能があります」と表示する。

 「~機能があることが報告されています」と「~機能があります」という2通りの表現が混在することになるが、これは機能性の立証方法が異なるためだ。「~機能があることが報告されています」と表示した商品は、研究レビューと呼ばれる方法で機能性を確認している。研究レビューは、国内外の研究論文を収集し、機能性の有無を総合的に判断する手法。多数の研究成果を基に判断することから、信頼性の高い手法とされている。ところが、機能性表示食品の場合は事情が異なり、わずか1~2報の研究論文を基に研究レビューを行う商品も多く、問題視されている。

 これに対し、「~機能があります」という表示は、その商品を用いたヒト試験(被験者が商品を摂取して行う試験)によって機能性を確認したことを意味している。特定保健用食品(トクホ)はヒト試験が必須だが、機能性表示食品では全体の4~5%にすぎない。どちらの手法がより信頼できるかは一概にいえず、ケースバイケースで異なる。このため、慎重に商品を選びたい場合は、消費者庁へ届け出された情報を確認するしか方法がない。

 そこで今回の改正では、「届出番号」をパッケージ表面の上部に記載することも決めた。商品の安全性や機能性の詳細を知りたいが、どうすればよいのかがわからない消費者も多い。その場合、消費者庁ホームページの検索画面を開き、「届出番号」を入力すれば、誰でも簡単に閲覧できる。「届出番号」をパッケージの目立つ位置に表示して、購入前に商品の詳細情報の確認を促すことも改正の背景にある。

機能性表示食品の新たな表示方法の例(出典:消費者庁「機能性表示食品の今後について」)
機能性表示食品の新たな表示方法の例
(出典:消費者庁「機能性表示食品の今後について」)

前面栄養成分表示を導入へ 健康づくりに役立つ表示

 加工食品のパッケージには、熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・ナトリウム(食塩相当量)の表示が義務づけられている。これを栄養成分表示という。これらの5項目は生命を維持するために不可欠で、生活習慣病と深く関わっていることから、健康づくりに役立つ情報源となる。

 ところが、栄養成分表示は消費者にとってわかりにくいという批判がある。というのも、パッケージの裏面に100g当たりに「たんぱく質〇〇g」などと表記されていて、1食分で1日に必要な量の何割くらいを摂取できるのかが不明なためだ。

 そうした事情を踏まえ、消費者庁では「日本版・包装前面栄養表示」の導入を予定している。前述の5項目を対象に、商品パッケージの表面に成分含有量と、1日に必要な量の平均値(栄養素等表示基準)に占める割合を表示することになる。食品単位は、わかりやすいように「1食分」を原則とする考えだ。

 包装前面栄養表示が導入されると、たとえば塩分を控えたい人の場合、ひと目で自分自身に適した食品かどうかを見分けることが可能となる。たんぱく質をしっかりと摂りたい人では、1食分で1日に必要な量の何割くらいを補給できるのかが、ひと目で理解できるようになる。

 包装前面栄養表示は義務ではなく、企業の任意で行う。ただし、国が表示方法やロゴを統一し、消費者が利用しやすい仕組みを整備する。消費者庁は早ければ25年度中にもガイドラインを策定し、スタートさせるとみられている。

今年6月から無許可の「経口補水液」を排除

 激しいスポーツをしたり、夏場に屋外で働いたりすると、大量の汗が出る。放置しておくと脱水症に陥る。そうしたシーンで、スポーツドリンクを利用する人も多いことだろう。現在、市販のスポーツドリンクには「経口補水液」と表示し、カリウムやナトリウムが高含有である旨をうたった商品もある。

 しかし、本来、「経口補水液」は脱水症に用いる病者用の飲み物を指す。無許可で「経口補水液」とうたった商品を利用すると、カリウム・ナトリウム・ブドウ糖などの配合割合や配合量が不適切なものもあり、症状が改善されない恐れがあって危険だ。また、日常的に利用している人もいるが、とくに医師からカリウムやナトリウムの摂取量を控えるように指導されている人では、健康被害につながる。

 こうした事情を踏まえ、消費者庁は特別用途食品制度を改正。今年6月1日以降、無許可で「経口補水液」と表示した場合は、健康増進法違反として取り締まる方針だ。「経口補水液」を同制度の病者用食品として位置づけ、スポーツドリンクなどの販売各社に対し、今年5月末までにパッケージを改訂するよう求めている。

アレルギー表示に「くるみ」
4月から表示義務化が完全施行

 加工食品のアレルギー表示制度で、「くるみ」の表示義務化が今年4月1日から完全施行となる。「くるみ」は表示義務品目に位置づけられたが、商品パッケージの改訂に時間がかかることから、今年3月末までを猶予期間としている。4月からは、原材料に「くるみ」を使用している商品で表示が完全義務化となる。これに加えて、「カシューナッツ」についても表示義務品目に追加する方向で準備が進められている。

 ナッツ類が次々とアレルギー表示制度に位置づけられている背景には、健康ブームによるナッツ人気がある。ナッツ類が健康に役立つという宣伝が目立つようになり、消費量も増加傾向にある。これにともなって、ナッツ類が原因の即時型症例やショック症例の報告も増えている。健康に良いことから消費量が増えた結果、健康被害を生じさせているという皮肉な流れといえる。

 アレルギー表示制度の対象品目の見直しは、3年ごとに実施する実態調査の結果を踏まえて行われる。原因となる食品の変動は大きく、食物アレルギーが心配な人にとっては、同制度をめぐる動向を把握しておくことが、健康を守るうえで大切となる。

ネット通販の広告に注意!
本格化する「ステマ」取り締まり

 インターネット通販で消費者を惑わしたり、騙したりする広告が増加傾向にある。政府は消費者被害の防止に向けて、法改正を視野に入れつつ、具体策の検討を進めている。同時に、取り締まりの強化も見られる。ここ最近のネット広告をめぐる行政動向と、消費者が注意すべき点を紹介する。

 ネット通販の悪質な広告については、手口も多様化している。その代表例に、ステルスマーケティング(ステマ)がある。ステマは、事業者の広告であるにもかかわらず、そのことを隠して、あたかも第三者が公正に評価したと思わせる手法。23年10月から景品表示法で禁止されているものの、依然としてネット通販でステマが横行しているようだ。

 大正製薬(株)がサプリメントの広告に使用したインフルエンサーの投稿をめぐり、法違反に問われた事案は記憶に新しい。また、ステマはインフルエンサーや有名人だけの話ではなく、一般人が巻き込まれることもある。昨年6月の違反事案では、クリニックの来院者がステマに利用されていたことがわかった。

 口コミやSNSの投稿にはステマもあるが、商品の利用者が単に感想を述べていることもある。その見極めは困難なため、ネット通販を利用する場合は、広告に出てくる口コミやSNSの投稿を鵜呑みにしない姿勢が必要だ。

 ステマを排除するためには、取り締まりの強化が不可欠となる。ステマの取り締まりは昨年動き出したばかりで、今年はその動きが本格化すると予想される。

25年は「高評価%表示」の動向に注目

 ネット通販を利用する際には、ナンバーワン表示にも注意しなければならない。「〇〇サプリメント 顧客満足度 第1位」などとうたう広告が目立っているが、“インチキ”も少なくないからだ。

 調査手法が適切ならば、ナンバーワンと表示しても問題は生じない。しかし、実際には、イメージ調査と呼ばれる不適切な手法によって、ナンバーワン表示を行うケースが多い。イメージ調査とは、比較する事業者の各ウェブサイトを見てもらって、その印象を問う手法。しかも、調査対象者が商品を利用した経験があるかどうかも確認せずに、満足度などを調査しているというのが実態だ。

 ステマと同様、適切なナンバーワン表示かどうかの見極めも簡単ではない。ただし、ナンバーワン表示については、調査の実施時期、調査対象者や調査方法・結果の詳細が不明な場合は、“インチキ”の可能性が否定できない。そうしたケースでは、ナンバーワン表示を鵜呑みにしないことが鉄則となる。

 最近では、「医師の90%が推奨すると回答」「管理栄養士の95%が高評価」などとうたう高評価%表示も台頭している。とくに健康食品分野などで目立ち、大手企業でも採用する動きがある。

 調査手法が適正かどうかなど、ナンバーワン表示と同様の問題を抱えていることから、取り締まり当局も関心を寄せている。25年は、行政による高評価%表示の監視・取り締まりの動向が注目される1年となりそうだ。

日本でも動き出した「ダークパターン」対策

 ネット通販の広告で新たな問題が浮上している。“ダークパターン”と呼ばれる手法だ。たとえば、「あと10分で申し込み終了」と表示し、カウントダウンタイマーを用いて、申し込みを焦らす手法もその1つ。サプリメントや化粧品の定期購入コースの解約を妨害するため、複雑な解約手続きを要求する行為も見られる。

 ダークパターンは、事業者にとって都合の良い選択を強要したり、消費者を騙したりするデジタル広告の手法で、さまざまな手口が登場している。最近では、通販サイトや企業サイトにアクセスすると、cookieバナーが画面下に出現するケースが増えている。バナーを見ると、cookieの利用を「承諾する」や「同意して閉じる」というボタンしか表示されておらず、「拒否する」がないケースがほとんど。これはEUでは典型的なダークパターンとして規制の対象となっている。cookieの利用を承諾すると、利便性向上というメリットもあるものの、閲覧者の情報が悪用される恐れもあるからだ。しかし、日本はダークパターンに対する規制が遅れていて、現在の法規制では対応が困難な状況にある。

 そうしたなか、国も重い腰を上げつつあり、ダークパターンを含む悪質なデジタル広告への対応について、今年中に一定の方向性が示されると予想される。ただし、具体策が動き出すまでにはまだまだ時間がかかることから、現在のところ、ネット通販のトラブルを避けるためには、利用規約やプライバシーポリシーを十分に確認するとともに、申し込み画面を保存するといった対応が有効となる。

前面栄養成分表示を検討する「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」
前面栄養成分表示を検討する
「分かりやすい栄養成分表示の取組に関する検討会」

【木村祐作】

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