トランプ革命の衝撃と波紋~トランプ政権発足から1カ月半で何が変わったのか?~
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鹿児島大学名誉教授
ISF独立言論フォーラム編集長
木村朗新シリーズ『ドナルド・トランプとは何者か』
第2回 トランプ革命の衝撃と波紋~トランプ政権発足から1カ月半で何が変わったのか?~第47代アメリカ大統領に就任したドナルド・トランプが、試合開始そうそうレフェリーをリング外に叩き出して始めたマイクパフォーマンスは凄まじい。どの技が“ギリセーフ”でどれが反則技かもわからぬほどの大統領令乱発と、自身の「極悪同盟」としてマスクマンからケネディの亡霊まで色物を集めた閣僚たちもそれぞれに小競り合いを始めている。
ところで当シリーズでは、さまざまな方面の専門家にドナルド・トランプの正体について語ってもらう。
今回の第2回では、鹿児島大学名誉教授でISF独立言論フォーラム編集長・木村朗氏が、政権発足から1カ月半のトランプ政権の動向を取り上げ、この間にトランプ政権が打ち出したさまざまな新政策によってアメリカと世界にどのような変化が生まれているのか、という問題を論じる。1.第二次トランプ政権の閣僚・スタッフの陣容と特徴
トランプ新政権は、前任者よりもはるかに速いペースで上院による内閣の承認を得ている。これまでに上院の指名承認を受けて正式に就任した閣僚・スタッフの主な顔ぶれは、以下の通りである。
副大統領 :J・D・バンス氏 /国務長官:マルコ・ルビオ氏 /財務長官:スコット・ベッセント氏/国防長官:ピート・ヘグセス氏/司法長官:パム・ボンディ氏/司法副長官:トッド・ブランチ氏/米連邦通信委員会(FCC)委員長:ブレンダン・カー氏 /商務長官:ハワード・ラトニック氏 /農務長官:ブルック・ロリンズ氏 /労働長官 :ロリ・チャベス・デレマー氏 /厚生長官:ロバート・ケネディ・ジュニア氏 /米環境保護局(EPA)長官:リー・ゼルディン氏/中央情報局(CIA)長官:ジョン・ラトクリフ氏 /エネルギー長官:クリス・ライト氏 /国家情報長官:トゥルシー・ギャバード氏 /教育長官:リンダ・マクマホン氏 /大統領首席補佐官 :スーザン・ワイルズ氏/ 次席補佐官:ダン・スカビノ氏 /国家安全保障担当の大統領補佐官:マイク・ウォルツ氏 /国土安全保障担当の次席補佐官:スティーブン・ミラー氏/大統領報道官:カロライン・リービット氏/ 駐日大使:ジョージ・グラス氏 /国連大使:エリス・ステファニク氏/ 駐イスラエル大使:マイク・ハッカビー氏 /国境管理の責任者:トム・ホーマン氏 /政府効率化省(DOGE):イーロン・マスク氏 /国家エネルギー会議議長:ダグ・バーガム氏 /米通商代表部(USTR)代表: ジェミソン・グリア氏 /米連邦取引委員会(FTC)委員長:アンドリュー・ファーガソン氏
このうち最後まで上院での指名承認が危ぶまれたのが、厚生保健相長官のロバート・ケネディ・ジュニア氏と国家情報長官のロイター トゥルシー・ギャバード氏、そして連邦捜査局(FBI)長官のカシュ・パテル氏である。
このなかでとくに注目されるのが、ケネディ厚生保健相長官である。ケネディ氏はホワイトハウスでトランプ大統領を目前にして次のような歴史的な演説を行った(ロバート・F・ケネディ・ジュニア氏の保健省長官就任式スピーチ)。
その演説は、JFKと父R・ケネディとのホワイトハウスでの思い出から始まる。父が語った「もし1人の人間がしっかりと立ち、その場にとどまれば、全世界が彼の周りに集まるだろう」という言葉を紹介し、「20年間、私は毎朝ひざまずいて、神がこの国の子どもたちの慢性病の流行を終わらせるための地位に私を置いて下さるように祈ってきました。」と語りはじめた。
そして、トランプが彼との約束をはたし、それは握手のみで約束されたことであったことを明らかしている。
また、今が「軍産複合体の台頭、全体主義の台頭、憲法への攻撃、人々を無力化する驚くべき流行を目の当たりにする時代である」と述べている。
さらに、彼の健康への思い「健康な人には千の夢があるが、病人にはただ1つの夢、『ただ良くなるという1つの夢』しかなく、人口の60%は病気でその1つの夢しか持っていない」という現実を率直に語っている。
そして、伯父であるJ・F・ケネディが創始した国際開発庁(USAID)が「軍産複合体に捕らわれて」変容してしまい、「それは全体主義と戦争を世界中に広める不吉な伝播者となり、ほとんどの人がこの機関の本当の恐ろしさを理解していません」「トランプ大統領はそれを見抜き、見事に立ち向かいました。私たちは子どもたちの健康を奪う機関にも同じことをしたいと思っています」と決意を表明している。
ケネディ氏の発言のなかでとくに注目されるのは、国際開発庁(USAID)について言及していることだ。この国際開発庁は、もともとは、1961年に国際支援・人道支援の目的で立ちあげられた機関であったが、それが今では世界的に混乱を引き起こしている元凶であったことが明るみになってきた。とくに莫大な資金力で多くのメディアを支配下に置いてきたという情報もあり、もしそれが本当であれば日本にもその影響力がおよんでくる可能性が出てくるだろう。
トランプ政権で政府支出の削減策を検討する組織である政府効率化省(DOGE)のトップを務める実業家のイーロン・マスク氏は、海外援助を管轄する国務省傘下のアメリカ国際開発庁(USAID)について、トランプ大統領が閉鎖に同意したと明らかにした。マスク氏はX(旧・ツイッター)上で、USAIDを「犯罪組織」「修復は不可能」などと強く批判し、「(トランプ氏に)詳細を説明し、彼は閉鎖に同意した」と述べている。
またトランプ氏は2月2日、記者団に対し、USAIDについて「過激な精神錯乱者が運営しており、彼らを追い出す。それから(組織をどうするか)決断する」と語っている。このUSAIDは国務省とは独立した組織で、大統領がトップを任命し上院が承認することになっている。米CBSは、同庁が大幅に人員を削減して国務省に吸収されると報じている。USAIDの援助には、メディアを通じて親米世論を形成すためのプロジェクトも多数含まれていることも判明している。
《実際、親米世論を育てることを目的に、主に敵対する左派政権の国々のメディアや市民団体に接近し、俗にいう「民主化運動」で混乱と無秩序を引き起こし、最後にクーデターを起こして、親米政権を樹立する手口を常套手段としてきた。そのためのプロジェクトが、USAIDの方針に組み込まれてきたのである。
今後、このUSAID解体・閉鎖がアメリカだけでなく日本を含む世界に今後どのような影響を与えるのか注視していく必要がある。》(「USAIDの内部資料で露呈した公権力とジャーナリズムの関係、だれがメディアに騙されてきたのか?」:MEDIA KOKUSYOより)。
2.トランプ革命の衝撃と波紋~これから世界はどこに向かうのか~
トランプ大統領が政権発足後に相次いで打ち出している新しい政策・課題は目まぐるしいほどである。トランプ政権が現在取り組んでいる、あるいは今後取り組むことになると予測される多くの問題のなかでとくに注目されるのは、以下の諸点である。
・国境の閉鎖と不法移民の強制送還の開始
・ワクチン接種の全面的禁止と関係者の処罰
・エプスタイン&ディディの人身売買・小児性愛リストの全面公開と関係者の処罰
・2020年の不正選挙と1月6日の米連邦議会“襲撃”事件の真相公表
・ケネディ兄弟暗殺事件とキング牧師の全面的調査と調査結果の公開
・トランプ氏やロバート・ケネディ・Jr.氏の暗殺未遂事件の全面的調査と関係者の処分実施
・9・11事件の真相公表
・米国国際開発庁(USAID)の閉鎖
・CIAの解体とFBIの再編
・ウクライナ戦争終結後の軍事費の50%削減と核廃絶への着手
・「世界の警察」と軍事的介入主義の放棄→世界各地における米軍基地の閉鎖と米軍・米兵の撤退開始
・NATO・日米安保の解体
・メディア改革の実施:首脳陣の総入れ替えと完全な言論の自由の実現
・FRBの解体・再編とNESERA・GESERAの実施現時点でのトランプ政権に対して願望も含めて予想される出来事は、とりあえず以上の通りである。これらの項目の多くは公表済みで、すでにその一部は実施中である。たとえば、CIAの解体やUSAIDの閉鎖はすでに着手されており、今後5年間に毎年8%の軍事費を削減することや国民1人に約80万円を還元する措置はすでに公表されている。
また国防総省は、25年から毎年8%の軍事予算削減を実施する計画を発表した。この削減は、国防総省の組織や指揮系統、軍事戦略に大きな影響を与えるだけでなく、在日米軍基地、とくに沖縄の米軍基地などにも大きな影響を与えるものと予想される。
トランプ大統領は、「アメリカの新黄金時代を切り拓く」という公約を次々と実行に移し、ほとんどの大統領が全任期で達成する以上のことをすでに成し遂げている。
以下は、就任してわずか1カ月余りでトランプ大統領が着手した改革の大まかなリストの抜粋である(「America Is Back — and President Trump Is Just Getting Started」ホワイトハウスのHPより)。
ここでは、そのリストの一部だけをご紹介する。
・我が国の安全保障:トランプ大統領は国境における国家非常事態を宣言し、第10山岳師団を含む軍を派遣し、我が国の安全を確保した。違法な国境越えは、過去数十年間で最低を記録している。
・トランプ大統領は国境の壁の建設を再開した。
・トランプ大統領は不法滞在者とフェンタニルの流入を食い止めるため、中国からの輸入品に10%の追加関税をかけた。
・トランプ大統領は出生権市民権の廃止を命じた。
・トランプ大統領は、公正で相互的な貿易のための計画を発表し、米国はもはや引き剥がされることを容認しないと世界に明言した。
・トランプ大統領は、すべての外交政策は大統領の指示の下で行われなければならないと宣言した。
・国務省は、米国の外交政策は今後もアメリカ第一主義を貫くと宣言した。
・マルコ・ルビオ国務長官の訪問に続き、パナマのホセ・ラウル・ムリーノ大統領は、中国の「一帯一路」構想から離脱することに同意した。
・アメリカのエネルギーを解き放つ:トランプ大統領は、アメリカのエネルギーポテンシャルを最大限に引き出し、アメリカの家庭のコストを引き下げるために、国家エネルギー緊急事態を宣言した。
・トランプ大統領は、我が国から不当に金をむしり取る悲惨なパリ協定から離脱した。
・トランプ大統領は、アメリカ政府の公式方針として、性別は2つしかないとした。
・トランプ大統領は、連邦政府の資金援助を受けている学校でのCOVID-19ワクチンの義務化を禁止した。トランプ大統領は、軍の無意味なCOVID-19ワクチン義務化の下で除隊させられた米軍人を、給与を戻して復職させた。
・トランプ大統領は、軍の無意味なCOVID-19ワクチン義務化の下で除隊させられた米軍人を、給与を戻して復職させた。
・トランプ大統領は世界保健機関(WHO)から米国を脱退させた。
・トランプ大統領は、政府の生産性を最大化し、納税者の資金を最大限に活用するために政府効率化省(DOGE)を設立し、すでに納税者のために数十億ドルの節約を達成している。
・トランプ大統領は、すべての連邦フェイクニュースメディアの契約解除を命じた。
・トランプ大統領は、USAID(米国国際開発庁)における浪費、詐欺、乱用を阻止し、グアテマラでの性転換のような、凝り固まった官僚のペット・プロジェクトに資金を提供するために、納税者がもはや窮地に陥ることがないようにした。
・トランプ大統領は、アメリカ市民に対する連邦政府の武器化に終止符を打つよう命じた。
・司法省は、バイデン政権で起きた政治的動機による法闘争の根絶を直ちに開始した。
・トランプ大統領は、連邦政府によるアメリカ人への検閲をすべてやめるよう命じた。
・連邦通信委員会は、ICEの活動に関する機密情報をリークしたジョージ・ソロスの支援を受けたラジオ局に対し、措置をとった 。
・トランプ大統領は、ジョン・F・ケネディ大統領、ロバート・F・ケネディ、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の暗殺に関する文書の機密解除を命じた。
・トランプ大統領は、ホワイトハウスがデジタル時代における透明性の新基準を設定するなか、ホワイトハウスのプレス・ブリーフィング・ルームをレガシーでないメディアにも開放した。
・トランプ大統領はバイデン政権が黙らせようとしたおよそ440人のジャーナリストの記者特権を復活させた。
・アメリカ国民に力を与える。トランプ大統領は「アメリカを再び健康にする委員会」を設立し、単に病気を管理するのではなく、健康を促進することに国家の重点を移す。いずれにしても、このような現在進行中のトランプ革命の動向から日本を含む国際社会は目が離せないことは間違いない。
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(学カフェ:上野康弘さん)就任1カ月!トランプ革命の衝撃と波紋【木村朗の時代の奔流を読む】
☆エマニュエル・トッド氏の独占インタビュー<前編>
(AERA 2025年2月17日号)
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