世界第3位の経済大国を目指すインドのアキレス腱

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、3月7日付の記事を紹介する。

インド 都市 イメージ    このところ、インドの躍進ぶりは目を見張るばかりです。人口規模で中国を抜き、世界1の座に就いたインドですが、成長一途の国内市場を武器にGDPの拡大を加速させています。

 何しろ、今後6年以上にわたり、1年半ごとにGDPを1兆ドルずつ増加させる勢いです。このペースで行けば、2032年までに10兆ドルを超えることが確実視されています。2030年までにアメリカ、中国に次ぐ、世界第3位の経済大国になるでしょう。

 その強みはIT技術を駆使した製造業にあります。そして、いわゆる「メイド・イン・インディア」(インド製)の商品が世界市場を席捲するようになってきました。海外からの投資や人材確保の動きも活発化しており、アメリカ人の留学先や就職先のナンバー1は、今やインドに他なりません。

 また、その逆の流れも顕著で、アメリカに留学し、アメリカで就職し、アメリカ市民権を取得するインド人の数は中国人を抜き、600万人に達しています。とにかく世界を舞台に活躍するインド人の急増ぶりには驚かされざるを得ません。

 そんなインドをけん引しているのが3期目を迎えたモディ首相です。同首相は「2047年までに超大国の座を占める」と檄を飛ばしているではありませんか。強烈なヒンズー至上主義を掲げ、伝統的な「非同盟外交」を推し進めています。

 また、自らが率先して普及に努めているのがヨガです。肉体の柔軟性を養うのみならず、精神的な強靭性を育む健康法として、世界の注目を集めています。

 要は、自らが先頭に立ち、国際社会の危機的状況を打開する道を見出そうと全身全霊で向き合っているわけです。

 実は、同じ精神で、国内に残るカースト制度の残滓や地域間の格差の問題にも取り組んでいます。日本では知られていませんが、ウクライナの戦場にはインド人が数多く巻き込まれています。後方支援活動という名目で高額の給与に惑わされ、ウクライナに連れて行かれたものの、約束と違い、最前線に投入されてしまい、命を失ったり、負傷したインド人が続出している模様です。

 モディ首相はウクライナとロシアの双方に掛け合い、そうしたインド人の救出にも陣頭指揮を執っています。しかも、インド政府はウクライナ戦争の終結後を見通し、ウクライナの農業や鉱業の支援策をウクライナとロシアの双方と協議を進めているとのこと。まさに、インド式「裏技外交」と言っても過言ではありません。

 とはいえ、一見「向かうところ敵なし」とも見えるインドですが、その内実はかなり厳しいものが隠されていることも事実です。例えば、最先端の技術革新、特にロボティックスやリチウム電池の分野では中国に大きく遅れています。

 また、AI搭載の無人ドローンや省エネタイプの監視システムなど、防衛や戦略的応用技術の開発でもスピードが遅いとの指摘が絶えません。

 最大の弱点はビッグデータの蓄積や応用がアメリカや中国に追いついていないことです。残念ながら、中国が世界を震撼とさせた「ディープシーク革命」のような革新的動きはインドでは全く見られません。

 日本はそうしたインドの可能性と課題を見定めた上で、親日国インドとの連携の在り方を模索すべきではないでしょうか。


著者:浜田和幸
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