新ヒーロー安藤の一撃でアビスパ3連勝 福岡1-0FC東京

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 今われわれは、新しいヒーローの誕生を目撃しているのかもしれない。

 サッカーJ1リーグ・アビスパ福岡は15日、ホームのベスト電器スタジアムにFC東京を迎えて第6節の試合を行った。

 開幕3連敗から2連勝と、一気に上昇気流に乗ったアビスパ。この試合で目指したのはホーム初勝利だ。対するFC東京は、ここまで2勝2敗1引き分けと五分の星。今季から就任した松橋力蔵監督のもと、ボールをキープしながら攻めるサッカーを構築している。

 試合は、MF紺野和也のいきなりのビッグチャンスで幕を開ける。ホイッスルから30秒余り、MF見木友哉からの見事なパスを受けたMF紺野がドリブル。前に出たFC東京GK野澤大志ブランドンの頭上をループシュートで狙うが、このボールは惜しくもゴール上に外れてしまう。その後もアビスパが圧倒するかたちで試合は進んでいく。キックオフ直前まで雨が降り、冷たい風が吹くこの日のコンディションは、豊富な運動量が必要なアビスパにとっては有利だ。アビスパ攻撃陣は何度も敵陣深く侵入し、シュートを放つ。シュートが防がれても、二度三度と波状攻撃を仕掛け、終始攻勢をかけていく。

前半、攻撃をけん引したMF北島祐二
前半、攻撃をけん引したMF北島祐二

 ベスト電器スタジアムが歓喜で沸いたのは32分だ。ピッチ中央でボールを持ったMF紺野が、前方に長いスルーパスを送る。これに鋭く反応したのが、FWシャハブ・ザヘディだ。一瞬のスピードで抜け出し、エリア内で切り返してから利き足の左で放ったシュートはGK野澤の手をかすめてネットに収まった。これでアビスパ先制…と思いきや、これはオフサイドの判定。幻のゴールとなってしまった。

前半、FWシャハブ・ザヘディがFC東京陣内に攻め込む
前半、FWシャハブ・ザヘディがFC東京陣内に攻め込む

 前半を0-0で終え、迎えた後半もアビスパがペースを握る。56分にはFW岩崎悠人、MF名古新太郎がピッチに送り込まれる。FW岩崎のスピードと運動量、MF名古の巧みなパスと広い視野は、アビスパの攻撃にさらなる強みを加えた。

 だが、FC東京も必死に守る。元日本代表DF森重真人は最終ラインを統率し、元日本代表MF橋本拳人は決定機を何度も防いだ。これは引き分けか…と誰もが思ったそのとき、ついにその時が訪れる。

 アディショナルタイムに入った95分。途中交代で入ったDF橋本悠が後ろに下げたボールを受けたDF田代雅也が、ノーマークでエリア内にクロスを上げる。そこに走りこんでいたのが、DF安藤智哉。190cmの長身を誇るDF安藤がMF小泉慶を完全に圧倒し、ヘディングシュートをねじ込んだ。これが決勝点となり、アビスパはみごとに3連勝を飾った。本来は最後方でゴールを守っているDF田代とDF安藤のコンビで決勝点を奪ったこのプレーは、今季のアビスパを象徴する一撃といえるだろう。試合後の記録を見ると、シュート数では15本対3本と圧倒。攻守両面で試合を完全に支配し、圧倒したことが見て取れる。

DF安藤、頭から飛び込み決勝ゴール
DF安藤、頭から飛び込み決勝ゴール

 そして、DF安藤だ。この試合でも相手FW陣を高さと強さ、スピードと判断力で完全に封じた。さらにチャンスと見るやドリブルで前進し、鋭い縦パスでチャンスを作る攻撃的なプレーも再三にわたって披露。攻守両面で、高い身体能力と緻密な技術を生かす素晴らしいプレーを見せ続けている。安藤がプレーするセンターバックのポジションは、昨年まで主力だったDF宮大樹が移籍し、DF奈良竜樹とDF池田樹雷人は負傷で長期離脱。安藤は開幕戦こそベンチに座っていたが、第2節からは完全にレギュラーを奪取。試合を重ねるごとに評価を高め、今やネット上では「日本代表招集もあるかも」という声が飛ぶほどになった。

 試合後の記者会見で、金明輝監督が「少しずつ歯車がかみ合うようになってきた。微調整してきたところが勝因につながっている」と振り返ったように、今のアビスパは3連敗中では紙一重で逃してきた勝利を、確実につかみ取れるようになっている。この日の勝利で3勝3敗としたアビスパは、6位まで順位を上げた。6位といえば、今季目標とする順位だ。長いシーズンはまだ始まったばかりだが、最後にこの順位に立っていられるように力強く応援していきたい。

試合終了後、DF安藤は笑顔で「博多手一本」
試合終了後、DF安藤は笑顔で「博多手一本」

【深水央】

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