武雄アジア大学は誰のための大学か 揺らぐ大義(前)財務確認の状況

 15日、武雄市議会の令和8年6月定例会で、豊村貴司議員が武雄アジア大学に関する質疑を行った。

 豊村議員の質疑は、武雄アジア大学誘致の大義に関わる重要な懸念を提起していた。ポイントを絞って取り上げる。

(以下、発言の引用は武雄市議会の議事録速報版による。一部、話し言葉を読みやすいように編集した。)

答弁する小松政武雄市長(左)と、質疑する豊村貴司議員(右) 出所:武雄市の公式YouTubeチャンネル
答弁する小松政武雄市長(左)と、質疑する豊村貴司議員(右)
出所:武雄市の公式YouTubeチャンネル

武雄市に問われる公費管理上の注意責任

 まず、豊村議員は、武雄アジア大学設置に対して約13億円の補助を行った立場としての注意責任について、市の認識を問うた。

 豊村議員「市として13億円を補助したということの意義、責任や役割をどういうふうに考えているか。(中略)善管注意義務(※)というのがありますが、事前のリスク管理含め、公費の適正管理や、執行責任を負う管理者としてこの補助をしたということに関して責任や役割などをどのように考えているのか、答弁をお願いします」。

※善管注意義務:正式には「善良な管理者の注意義務」。その立場や職務、専門性に照らして、通常求められる注意を尽くす義務をいう。一般に善管注意義務としてよく参照される民法第644条は、「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」と定めている。補助金交付に民法上の善管注意義務がそのまま直接適用されるとは限らないが、公費を支出する行政主体には、補助目的の達成可能性、事業継続性、返還リスクなどを確認する公金管理上の注意責任があると考えられる。

 豊村議員の問いに対する武雄市の企画部長の答弁は次の通りだ。

 企画部長「大学誘致は、市の将来を見据えた重要な政策として取り組んできたものであります。その意味において、大学設置によって、市民の皆さまにお示しした効果や成果の実現に向けて責任をもって取り組んでいく立場であると認識しております。そのなかで、教育に関することや学生の確保の取り組みなど運営に関することは大学が中心として担っていくものと考えており、市はそれら大学の活動や運営状況を把握しながら、大学を生かしたまちづくりを進めていくことで、大学誘致の効果を市内全域に波及させていくことが大事だと考えております」。

 企画部長は、善管注意義務という言葉自体には直接答えなかったが、市の役割として「大学の活動や運営状況を把握」することを挙げた。これを受けて豊村議員は、「運営ができるような財務状況に(旭学園が)あるのかというところは、大事だと思いますし、13億円を補助した側として、しっかり把握すべきと思います」と財務状況の確認の重要性を強調したうえで、話を学生確保の問題とからめて次のように続けた。

豊村議員と企画部長とのやり取り

 豊村議員「4月28日に記者会見で、市長が運営主体(旭学園)に対して、来年度の学生確保には確実な見通しを示すよう要請されました。(中略)次年度、頑張ってください、応援しています、(学生を)集めてくださいねといって、いざ蓋を開けたら、また少なかったというふうなかたちでは、学生の学びに影響してくる。学生が武雄でやりたいことがあっても、(旭学園が)財政的に動けなかったら元も子もない。私は市の責任としてしっかり(旭学園に対して)、大丈夫ですか、財務状況、運営大丈夫ですか、来年度募集しても大丈夫ですかといえるような確認とか協議、その辺は必要じゃないかというふうに思います。この点について答弁願います」。

 つまり、豊村議員は、学生の学びの機会を創出するには旭学園の財務状況が重要であり、市は次年度の学生確保を旭学園に要請する前に、まず旭学園が継続的に大学を運営できるだけの財務状況にあるのかを確認する責任があるのではないかと問うたのだ。それに続く企画部長と豊村議員のやりとりは次の通りだ。

 企画部長「学校法人旭学園は、武雄アジア大学だけでなく、保育園や高等学校、短期大学など複合的な運営をされており、市で旭学園の年度途中における財政状況を確認することは難しいと考えています。しかしながら、大学運営に関しては定期的に協議を行っておりますので、運営状況について把握に努め、旭学園に対しては、決算発表前の段階でも市が確認できるよう、依頼はしていきたいと思っております」。

 豊村議員「今までそういったかたちで、財務的な部分に関して、市と旭学園で確認しながら協議したことはあるのでしょうか」。

 企画部長「財務面に限っての協議は行っておりません」。

 豊村議員「(前略)財務状況を確認するというのは、先ほど言ったように、運営できるかできないかというふうなところがありますので、やはり13億円を補助した側の責任としても、そこを管理、確認しながら動くべきと思います。今後、協議していきますと先ほど言われたので、それに関して、いつ、どうやって、誰が協議をして、どういったかたちだったと、記録も残していかないといけないと思うんですよね。その辺、記録を残していくようなかたちで考えられているんですかね」。

 企画部長「先ほど答弁しましたが、市は旭学園の決算を通じて財政状況を把握したいと思いますので、決算の承認される理事会の後に確認したいと思っております。その確認方法につきましては、記録は残して、外への発信についてはどういった状況になるかは検討していきたいと思います」。

 豊村議員「記録を残しながら、そこはやっぱり議会にも示してほしいと思います。どういった協議があって、じゃあ、市としても来年度募集もオーケー出したのかというところもあるでしょうし、その辺、記録はしっかり残して見せてほしいと思います。(後略)」

武雄市は旭学園の財務状況を十分に確認しているのか

 ここでは2つの重要な論点を含めてやりとりが行われている。

 1つ目は、武雄市が旭学園の財務状況をどの段階で、どの程度確認しているのかという問題だ。

 やり取りのうち、これについての要点をまとめると、企画部長は、旭学園が複数の学校を運営していることを理由に年度途中で財政状況を確認することは難しいとし、旭学園とは大学の運営について定期的に協議を行っているので、将来的な対応として、決算発表前に市が確認できるよう依頼していきたいと答えた。これに対して豊村議員が、「財務的な部分に関して、市と旭学園で確認しながら協議したことはあるのか」と確認実績の有無を問うと、企画部長は「財務面に限っての協議は行っておりません」と答え、財務についての確認は行っていないことを認めた。そして市は基本的なスタンスとして、結局のところ、「市は旭学園の決算を通じて財政状況を把握したいと思いますので、決算の承認される理事会の後に確認したい」と述べた。

 当社の過去記事でも述べてきたように、旭学園は武雄アジア大学構想の以前から、財務的に潤沢な余裕がある学校法人というわけではなかった。その旭学園が開学した武雄アジア大学の入学生が37人と低迷したのであるから、資金繰りなどを含めて旭学園の財務状況を心配するのは、13億円もの補助金交付を決定した武雄市として当然のリスク管理である。にもかかわらず、この質疑が行われた6月15日まで、武雄市は旭学園の財務状況を確認していないとすれば、公費を投じた行政主体として十分な注意責任を果たしているといえるのだろうか。

 企画部長は「年度途中における財政状況を確認することは難しい」と答弁したが、3月末に締められた25年度決算について、4月1日に初年度入学生が37名に確定して以降、6月1日に武雄市議会の定例会が開会するまでに確認を行うことは十分に可能だったはずだ。

 そもそも昨年まで、旭学園の決算書は5月下旬の理事会で承認され、その後、ホームページで公開されていた。しかし、私立学校法の改正により、学校法人の計算書類作成・承認手続きのスケジュールが変わり、25年度決算分から会計年度終了後3カ月以内に作成される運用となったため、旭学園も今年は6月下旬以降の理事会で承認され公表される見通しとなったのである。その決算について、この重大な状況のなかで、せめて概算でも旭学園に提出を依頼し、リスク管理の検討材料にし、議会で説明することがなぜできないのか。

 旭学園の財務状況は、武雄アジア大学の事業継続性に重大な影響を与えるものであり、武雄市の説明責任の範囲内に含まれると考えるべきだ。旭学園の財務状況に向き合わず、その確認を後回しにする市の姿勢は、13億円の補助金を投じた政策執行の注意責任において、また、議会と市民に対する説明責任において、厳しく問われるべきだ。

 しかし、この日、豊村議員が問うたのは、旭学園の財務に対する市の確認状況ばかりではない。「地域における教育機会の創出」という武雄アジア大学誘致の大義にかかわる武雄市の姿勢について重大な懸念を示していた。

 続く記事でそれを見る。

▼下記のページで、武雄市議会の議事録と、豊村議員の一般質問の動画を視ることができる
令和8年6月定例会 本会議録(速報版)

 武雄市議会 R8.6.15 一般質問 豊村 貴司(武雄アジア大学についての質疑は39:13から。)

▼当社では旭学園の財務リスクについて検証を行っている
武雄アジア大学の収支計画が明らかに(3)懸念された旭学園の財務体質と、新設大学の採算ライン

(つづく)

【寺村朋輝】

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