福岡空港、第2滑走路が供用開始~過密空港の根本解消には課題も
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3月20日、福岡空港において増設整備が進んでいた第2滑走路が供用開始となった。これにより、「日本一の過密空港」といわれる福岡空港の混雑緩和への期待が寄せられているが、その一方で、発着処理能力の向上が限定的なため、根本的な解決にはつながらないとの見方もある。
福岡空港は西日本地域の拠点空港として、離島を含む国内外の各都市との人・物の流動を支えているほか、九州およびアジアの玄関口として社会経済活動の中心的役割をはたしている空港だ。都心部に近く、地下鉄・都市高速道路などのアクセスが整備されていることで「日本一アクセスの良い空港」としても知られている。
だが、これまでは1本の滑走路で国内線および国際線の両方を賄っているにもかかわらず、羽田、成田、関空に次いで国内4位の乗降客数を集めており、滑走路1本あたりの離着陸回数は日本最多。その過密ぶりから慢性的な遅延が常態化しており、2016年3月には航空法107条3項に基づく「混雑空港」に国内5例目として指定された。
そうした状況から、混雑緩和のための発着回数拡大に向けた機能強化策の1つとして、15年度から国土交通省を事業主体に、総事業費約1,643億円を投じて福岡空港滑走路増設事業に着手。なお、先行して進んでいた平行誘導路の二重化整備事業は、20年1月末に完了している。
今回新たに増設された第2滑走路は、既存滑走路(延長2,800m)の西側210mの位置に並走するかたちで整備されたもので、延長は2,500m。滑走路の配置は、空港の敷地が狭くても2本目の滑走路を設けることが可能な「クロースパラレル方式」を採用している。
ただし、滑走路が1本から2本に増えたといっても、発着処理能力が単純に2倍になるわけではない。事業着手時の滑走路処理能力は年間16万4,000回で、それが平行誘導路の二重化整備によって年間17万6,000回に上昇し、第2滑走路の供用開始で年間18万8,000回まで上昇。事業着手時と比べて、約1.15倍となる。1時間あたりの発着回数も、これまでの38回から40回とわずか2回の増加に過ぎず、混雑緩和に過度の期待はできない状況となっている。
この発着処理能力の上昇幅が小さい理由は、2本の滑走路の距離が近いため、同時進入・出発は原則として不可となっているからだ。一方の滑走路で着陸を行うと同時に、もう一方の滑走路で離陸に備えて待機するなど、空港の地上交通および離着陸機の調整によって運用効率を上げることは可能となっており、今回供用開始となった第2滑走路は、原則として国際線の離陸にのみ使用される。
なお、地元の理解を得たうえで進入方式を高度化することで、理論上は年間21万1,000回、1時間あたり45回まで増加することは可能とされているが、それでも依然として増加傾向が続いている福岡空港の航空需要を考えると、決して十分な数値とはいえないだろう。19年4月から滑走路を含めた空港運営を行っている福岡国際空港(株)(FIAC)では、24年3月に24年度から28年度までの5年間の中期事業計画を発表。それによると、今後も東南アジアのリゾート路線や中国の未就航都市、欧米路線などの誘致に取り組むなど、航空ネットワーク拡充に努めていく方針を示しており、将来にわたる航空需要増を考えると、今回、第2滑走路が供用開始となったものの、依然として混雑状態は緩和されることなく続いていくと考えられる。
一方で、福岡空港では滑走路増設以外にも、施設面を含めたさまざまな機能強化が進んでいる。
たとえば国際線ターミナル側では、23年2月には従前の駐車場を立駐化し、収容台数を約1.4倍に拡大させた新立体駐車場の供用が開始。同年12月には国際線旅客ターミナルの北側へコンコースを延伸し、PBB(旅客搭乗橋)を従前の6基から12基に倍増させた。さらに24年12月には、国際線ターミナルビル側で新たな管制塔の運用が開始されたほか、国際線1階到着ロビーにおいてバスターミナル機能を有したアクセスホールも供用開始となった。
そして間もなく3月28日には、増改築工事が進んでいた国際線旅客ターミナルビルが、グランドオープンを迎える予定だ。今回のグランドオープンでは、国際線旅客ターミナルビルの床面積が従来の約2倍に拡張され、保安検査場および出国審査場を移設・拡張するとともに、保安検査・出国審査通過後のエリアに、従来の約4倍の広さとなる新免税店、フードホールをオープン。今後は今年12月にも、搭乗待合室内にさらに商業テナントを拡充する計画となっている。
一方で、24年4月には国内線ターミナル側で、新たな立体駐車場がオープン。この新立体駐車場の完成にともない、旧立体駐車場は閉鎖となった。この旧立体駐車場の跡地では、4月から国内線ターミナルビルと一体となった商業・ホテル・バスターミナル機能を有する複合施設の整備がスタートする予定。27年夏ごろの開業を目指している。
福岡空港(国内線ターミナル) こうして施設面の機能強化が進む福岡空港だが、都心部に近接してアクセスに優れている半面で、市街地に近接していることで周辺の拡張余地が乏しいほか、航空法に基づく高さ制限によって、都心部の開発をある意味で阻害してきた面もある。また、市街地に近接していることで周辺への騒音問題がつきまとうほか、朝7時から夜10時までしか離着陸できないという時間制限──俗にいう“門限”の問題もあり、さらには旅客機の誤進入や立ち往生、衝突懸念の離陸取りやめなど、過密状態が常態化していることに起因するトラブルもたびたび発生している。
こうした諸問題を抱える福岡空港ではあるが、これまで福岡の“空の玄関口”として都市圏全体の成長を牽引してきた役割は非常に大きい。今回の第2滑走路の供用開始が混雑緩和に対してどれだけの効力を発揮できるかは定かではないが、福岡空港がさまざまな機能拡充を進めるなかで諸問題を解決していき、都市・福岡のさらなる発展に寄与していくことに期待したい。
【坂田憲治】
法人名
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