2024年11月25日( 月 )

シェールガスの台頭、パイプライン~LNGの未来は?(後)

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まず、世界最大の液化天然ガスの輸入国である日本は、アメリカからシェールガスの輸入を準備している。アメリカはアメリカでシェールガスが供給過剰になっていて、お互いの利害が合致。日本はアメリカからのシェールガスの輸入に備えて、パナマ運河の拡張工事にも多額の投資をしている。パナマ運河の拡張工事の総工費は52億ドルであるが、日本は10億ドルを投資、外国人投資額の約半分を占めている。ガスの場合は超大型船で運搬することになるが、今のパナマ運河では狭くて船が通過できないため、拡張工事を急いでいるのである。パナマ運河を通過できない場合、ガルフ湾を通過し、アフリカの希望峰を回るルートを選択するしかないが、そうなると、40日もかかり、運送費がかさんでしまうからだ。

 日本の年間液化天然ガスの消費量は112.5Bcm(Bcm=10億立方メートル)だが、アメリカから年間22.5Bcmのシェールガスの輸入契約を結んでいる。今後、現在の消費量の5分1がシェールガスで代替されることになる。アメリカからの輸入量は今後拡大する可能性も高い。

 中国とエネルギー政策で緊密に協力することになったロシアは、韓国にもラブコールを送っている。ロシアはヨーロッパとの関係が悪化しているため、ヨーロッパの代わりになる取引先を探す必要に迫られているのだ。ロシアはパイブライン経由で韓国にガスを供給する計画を推進しているという内容が何回もメディアで取り上げられた。実際、韓国ガス公社とガスプロム(ロシアの天然ガス生産、供給企業。生産・供給量は世界最大)は2011年9月に年間10Bcmのガス供給契約を締結している。韓国の年間ガス消費量は47Bcm なので、その5分1に相当する量である。しかし、このパイプラインは北朝鮮を経由しないといけないため、政治的な課題もあり、実現されてはいない。韓国側としてはとてもエネルギーコストを削減できる魅力的な提案なので前向きである。

 中国にも変化が予見されている。中国は液化コストと運送費がかからない中央アジアとロシアからのパイプラインでガスを供給してもらう方向で着々進んでいる。その量は170Bcmということだ。現在、中国は27bcmの液化天然ガスを使っているが、それもいつ別のものに代替されるか分からない状況である。それに、中国はシェールガスの埋蔵量が世界一の国でもある。中国はアメリカのシェールガス掘削の技術を持っている企業を買収することによって、急激にシェールガスを掘削できる技術を保有するようになったようだ。

 価格の安いシェールガスへのシフトをはじめ、液化コストと運送費のかからないパイプラインでの供給に各国は動いている。この観点からすると、液化天然ガスの未来は明るいとは言えない。日本と韓国などが別の資源にシフトしても、それを穴埋めできる需要があれば別問題だが、それがないので、液化天然ガスの産出国にとっては経済に大打撃になる可能性をはらんでいる。それはまた造船、機械などの関連産業にも影響が出てくるだろう。

 ガス契約は20年の長期契約が基本で、転売が禁止されていたが、このような市場環境にも変化が訪れようとしている。市場は売り手市場から買い手市場に変わっている。しかし、このような時期こそむしろエネルギー戦略を見直す時期である。例えば日本は夏場の発電にガスが使われる反面、韓国は冬場の暖房にガスが使われるため、日韓の協力によって需給を対応できる側面もある。アジアはガス価格が高いという指摘もあるが、日韓の協力でこの問題を解決していく方法もきっとあるはずだ。
(了)

 

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