トリビュートの不動産再生（7）利回り倍に！？宿泊業へ新規参入

中央区と博多区でホテル開業予定

　前回（4月号）の連載で、「ホテル事業を検討する場合、新規開発のほかに、たとえば賃貸マンションからコンバージョンすることも可能です。立地や建物の状況から、ホテルにコンバージョン可能な賃貸マンションであれば、利回りは単純に倍以上となります」と話していた（株）トリビュート（福岡市中央区）の田中稔眞社長は4月中旬、福岡市中央区にて宿泊施設を開業した。

    開業したのは、昨年11月に同社が取得した賃貸マンション・レジデンス高砂の空室2室をコンバージョンした宿泊施設。38ｍ²の広めのワンルームにベッドなどの家具や家電を設置した客室には、最大4名が宿泊できる。「レジデンス高砂は容積消化しているため、全戸を宿泊施設とすることはできませんが、稼働した2室の状況を見極めつつ、空室が発生した際には追加でのコンバージョンも検討しています」（田中社長）という。

    同社ではすでに、博多駅から徒歩8分のオフィスビル・内山東光ビルでも5月の開業に向け、一部区画で宿泊施設へのコンバージョンを企画中。同ビルはオフィスビルにも関わらず、各区画にトイレなどの水回り施設が充実した珍しい仕様で、「比較的安価にコンバージョンができそうです」（田中社長）と話す。さらに福岡市中央区清川の木造アパートでも、宿泊施設へのコンバージョンを前提に取得への交渉を進めているという。

　「中央区なら高砂や春吉、清川、博多区なら博多駅を中心とした徒歩10分圏内は、宿泊需要が見込めるエリアです。もちろん、既存のビジネスホテルらとは異なる需要を取り込んでいく必要がありますが、日本ひいては九州、福岡の観光資源のポテンシャルは高く、観光客数も宿泊客数も伸びる余地があると考えています」と田中社長は分析する。

賃料・宿泊料でストック強化図る

    4月から運営開始したレジデンス高砂、5月からの運営開始を予定している内山東光ビルは、いずれも住居およびオフィスとしての賃貸で高い利回りを確保できている物件だ。「当社で手がける不動産再生ビジネスは、売買・仲介が主力ですが、保有による収益力強化にも力を入れていく方針です。賃貸マンションなどの取得およびコンバージョンで期待できる賃料や宿泊料を、ストック収益の柱としていければ」（田中社長）。

　同社では数年前から、売買に関わった物件の管理にも力を入れており、保有物件の賃料収益とともに、不動産の売却益や仲介手数料といったフロー収益に頼らないビジネスモデルの確立に注力してきた。田中社長はこの部分について、「管理事業を行うことで、立ち退き交渉や隣地取得といった不動産再生に欠かせない部分の強化という副産物もありました」と加える。

　また、新規事業・宿泊事業については、「宿泊施設のオペレーションは、しばらくは外注で行う予定ですが、規模が一定水準に達したら内製化も検討しているところです」（同）と話す。同社には、宿泊事業を中核とした新規ビジネスについても構想があるという。「天神・博多だけでなく、宿泊需要は福岡都市圏の一部エリアでも期待できると考えています。ニッチマーケットではありますが、戸建タイプなら比較的安価で企画できますし、アパートよりも短期で資金回収することが期待できます。まずは自社物件のトラックレコードを分析したうえで、その後は商品化も検討しています」（田中社長）。

【永上隼人】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：田中稔眞
所在地：福岡市中央区渡辺通1-1-1
　　　　サンセルコビル6F
設　立：2009年4月
資本金：1,600万円
ＴＥＬ：092-292-2313
ＦＡＸ：092-292-2314