コロナ禍から復活し、再開発も徐々に 不動産管理で福岡・中洲を牽引

ラインビルグループ

コロナ禍からの復活後 中洲の客層に変化が

ライングループ本社ビル
ライングループ本社ビル

    “西日本屈指の歓楽街”として、その名を全国に轟かせる福岡・中洲。中洲1~5丁目にかけてテナントビルが林立しており、それらのビルにバーやスナック、クラブなどの夜を彩る数多くのお店が入居。ビジネスマンや観光客らの夜の遊興(ナイトライフ)需要の受け皿として、長きにわたって存在感を放ってきた。

 その中洲の発展を、不動産とビル管理で陰ながら支えてきた立役者が、中洲地区で30棟を超えるビルの管理や、約700店舗のテナントの管理を行う中洲最大手の総合不動産マネジメント会社・ラインビルグループだ。同グループは、グループ中核である博多地所(株)の安部洋代表がグループ全体の指揮を執り、ライン不動産(株)やラインビルマネジメント(株)などのグループ会社で体制を構築。60年超の長い業歴のなかで、これまで小さなバーから高級クラブまで出店ノウハウを提供するとともに、リース店舗による賃貸方式を中洲に普及させるなど、地元に密着した不動産のプロ集団として中洲のまちづくりに貢献してきた。

 その中洲は一時、コロナ禍という未曽有の事態に晒され、多くのテナントが事業存続の危機を迎えた。そうした状況下で同グループでは、自社所有ビルで事業を行う約220のテナントに対して、4カ月間にわたって家賃の大幅減額を実施。もちろんその間の家賃収入は落ち込みを余儀なくされたが、まずは耐え忍び生き残ることが先決と、顧客とともに支え合った。その甲斐もあって、コロナ禍という難局を乗り切った後には、中洲は全国の繁華街でも比較的早く復活。現在は再び、多くの人で賑わう元気の良い姿を取り戻している。ただし、以前と比べると、中洲に訪れる客層には若干の変化があったという。

 「コロナ禍前に比べると、年配の客層が減ったように思います。昔であれば、スナックやクラブ、バーなどの馴染み客が、会社の後輩を紹介するようなかたちでお客をつないでいく流れがありましたが、今はだいぶ少なくなってしまったようです。また現在、多くのインバウンド客が中洲中央通りを闊歩していますが、彼らの8~9割は繁華街としての中洲の雰囲気を味わおうと散策しているだけで、利用はせいぜい路面に面した飲食店やコンビニ、ドラッグストアなど。2階以上に入居しているスナックやクラブにまで足を運ぶインバウンド客は、ほとんどいません」(安部代表)。

進行する再開発でさらなる活性化に期待

 繁華街・天神とビジネス街・博多のちょうど中間地点に位置し、2つのエリアをつなぐ役割を担っている中洲。両エリアでは「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」といった大規模再開発プロジェクトが進んでいるが、中洲のビルは1970年代に建てられて築後50年を超過しているものも多く、大規模修繕や建替えの時期を迎えている。その一方で、事業主の世代交代が進み、元来は個人事業主が多かったが、近年は法人化して多店舗化する事業者も増えている。そうした状況下で今後、中洲で期待されるのは再開発による活性化だ。実際に現在、中洲エリア内のいくつかの場所で、新たな開発のほか、再開発に向けた解体工事などが進んでいる。

 施設老朽化などを理由に24年3月末に閉館した中洲4丁目の「福岡中洲 大洋映画劇場」の跡地では現在、「(仮称)H¹O中洲川端新築工事」が進行している。事業主は野村不動産(株)で、S造・地上10階・地下1階建、延床面積9,123m2の複合ビルには、主にオフィスや飲食店が入居する予定。工事完了は26年12月頃を予定している。

 中洲エリアで複数棟のテナントビルを所有するウインズビルグループ(北九州市小倉北区)も現在、3件の所有ビルで再開発を進めている。中洲4丁目の人形小路で「人形小路プロジェクト」(地上6階・地下1階建)の開発を進めるほか、中洲2丁目の松島ビルの隣では現在、「中洲2丁目プロジェクト」の開発を予定。同プロジェクトは地上10階・地下1階建、延床面積2,999m2のテナントビルの建設を予定しており、現在は25年6月末までの予定で既存建物の解体工事を進めている。さらに国体通りに面する中洲2丁目の中洲会館の隣では、既存建物の解体工事が一段落したばかりで、こちらでは「中洲2丁目プロジェクトⅡ」の開発を予定している。

 「これまではなかなか老朽化ビルの建替えが進んでいかなかった中洲ですが、現在は少しずつですが、再開発も進んできています。天神と博多を結ぶ立地特性を生かしながら、中洲のさらなる活性化につながる再開発やまちづくりが進んでいくことを期待しています。当社グループも不動産管理事業を通じて、より良い中洲の未来のために、テナント事業者の皆さまとともに頑張っていきたいと思います」(安部代表)。

【坂田憲治】


<COMPANY INFORMATION>
ラインビルグループ

代表企業:博多地所(株)
代 表:安部洋
所在地:福岡市博多区中洲2-2-8
設 立:1979年5月
資本金:5,000万円
URL(ライン不動産(株)):https://line-realestate.com

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