アビスパ福岡、新加入FW碓井聖生が鮮烈デビュー弾。新潟に3-2で勝利

紺野・碓井・北島の3ゴールにスタジアムが沸く

 6月21日、ベスト電器スタジアムで行われた明治安田J1リーグ第21節・アビスパ福岡対アルビレックス新潟の一戦は、序盤から激しい点の奪い合いとなるアグレッシブな展開の末、福岡が3-2で勝利を収めた。この勝利で福岡は10位に浮上。前節の岡山戦から2連勝となり、リーグ後半戦の巻き返しに向けて大きな弾みをつけた。

 まず、試合が動いたのは開始早々の4分、新潟のコーナーキックをゴール前でクリアするも、こぼれ球の処理が中途半端になったところを拾われ、稲村隼翔に先制点を奪われる。立ち上がりから1点ビハインドを負う難しい状況となった福岡だが、9分に北島祐二が相手のパスが甘くなったところを見逃さずボールを奪い、紺野にパス。中央で受けた紺野は態勢 を崩しながらも左足を振り抜き、ゴール右隅に決めた。「2タッチ目でうまくコントロールできた」という、紺野らしい狙いすましたゴールで試合を振り出しに戻す。

 そして16分、橋本悠が新潟の自陣内でプレスをかけボールを奪取。素早い判断で、ペナルティエリア中央近くに張っていた碓井聖生にパス。ゴールを背に右足でワンタッチコントロールした碓井は、そのまま反転しながら右足でシュートを放ち、ゴール左隅に決めた。

 勝ち越し弾を決めた碓井は、今月6日にカターレ富山(J2)から完全移籍での加入が発表されたばかりの新戦力。初出場の試合で挨拶代わりの一発を決めると、スタンドのファン・サポーターは総立ちで大きな “ショウセイコール”を送り、熱烈に歓迎した。

 その後、36分に新潟の谷口海斗にゴールを決められ追いつかれるも、45分に再び福岡が勝ち越す。自陣のハーフライン手前の深いポイントから松岡大起が繰り出したロングパスは、右サイドを駆け上がる岩崎悠人のもとへ。岩崎は、強靭な体幹を生かした絶妙なトラップで相手DFとGKをかわし、ペナルティエリア内に走り込んできた北島にパス。「相手が慌てて前に出てきたのが見えた」という北島は、滑り込んできたDFを落ち着いてかわし、得意の左足でゴールを決めた。

 このゴールがJ1リーグにおける自身初得点となった北島は、アビスパのアカデミー出身。2019年にトップチームに昇格をした、いわゆる生え抜き選手だ。一昨年に東京ヴェルディ(当時J2)への期限付き移籍で福岡を離れた北島は、チームの中心選手として活躍し、大きな経験を積んだ。昨年、福岡に復帰した彼のたくましく成長した姿に、多くの期待が寄せられている。

 また、この試合には同じくアカデミー出身で北島の2年先輩にあたるアーセナル(イングランド)所属の冨安健洋が観戦に訪れており、試合後にはゴールを祝福されたという。日本代表でも活躍する冨安の存在は、現在アカデミーに所属している選手はもちろん、北島をはじめとするアカデミー出身のプロ選手にも大きな夢と目標を与えている。

後半はシステムを変えてリード守り抜く

 両チームが激しい点の取り合いをした前半は、福岡が3-2とリードして折り返す。後半スタートから、上島拓巳に代えて前嶋洋太を投入し、3バックから4バックにシステムを変更。前半に再三チャンスをつくられていたダニーロ・ゴメスを封じることに成功し、さらには点を取りに前がかりになる新潟に対してスムーズに攻守の切り替えができる戦術が見事に“ハマる”展開となった。
 そして、このまま福岡がリードした1点を守り抜き、勝利を収めた。ホームでのリーグ戦勝利は、4月12日の横浜F・マリノス戦以来となる。
 金明輝監督は、試合終了後の記者会見で開口一番「疲れました」と本音を漏らした。試合内容について、早い時間帯からスコアが動く難しい展開のなかでしっかりと勝ち切れたことを評価しつつも、失点については「我々らしくない失点の仕方」と、ゲームの運び方と合わせて修正ポイントであることを挙げた。

ピースが揃った!新加入のFW碓井に期待

 この日、2点目を決めた碓井は、J2カターレ富山から完全移籍で加入したばかりの23歳のストライカー。プロ1年目となる昨年、J3リーグ全38試合に出場して9ゴールを記録し、チームのJ2復帰に大きく貢献した。とくに、J2昇格プレーオフ決勝の松本山雅FC戦で、0-2の絶体絶命の状況から後半アディショナルタイムに2得点を挙げ、富山をJ2復帰に導いた活躍は記憶に新しい。

 そんな注目の新戦力について金監督は、18日に行われた公開練習で「まだ合流したばかり。彼のプレースタイルを見ながら、どういう起用ができるのか考えながら、選手間でコミュニケーションを図っている段階。能力が高いのはわかっているが、すぐに試合に出て、すぐにボールをもらえるわけではない。まずは、今いる選手に信頼をしてもらうことからのスタートになる。近いタイミングで試合には出てくると思うが、もう少し時間がかかるかもしれない」と話していたが、初先発で初ゴール、さらにはパスを出した橋本と息ピッタリのセレブレーションダンスを披露するなど、懸念していた“信頼関係”は問題なさそうだ。

 前線でボールを収めるポストプレーもでき、右足はインパクトの強いストレート、左足はカーブをかけた技ありシュートと、両足を器用に使い分けることができる万能型ストライカーの加入が、これから上位を狙うチームの起爆剤となりそうだ。

【川添道子】

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