中央区
1,000戸割れも計画多数
24年下半期は2年ぶりに1,000戸超えをはたした中央区だったが、25年上半期の計画戸数は959戸にとどまり、再び1,000戸割れとなった。それでも計画戸数は博多区に次いで2番目に多く、市内における人気のエリアであることは間違いない。
舞鶴公園と大濠公園を一体的に整備する、セントラルパーク構想が進むなかで、両公園にも近い港、荒戸などのベイエリアでの計画も増えてきている。注目されるのは、地場ゼネコン・(株)内藤工務店による(仮称)港2丁目プロジェクト。同社の本社側で計画されている事務所兼賃貸マンションで、建築物の概要はRC造・地上12階建、延床面積4,100m2のワンルーム64戸・ワンルーム外4戸。設計者はリーメック(株)で、7月頃の着工を予定している。大濠公園側では、(株)ラ・アトレによる(仮称)大濠公園プロジェクト(RC造・地上15階建、延床面積1,999.95m2のワンルーム外25戸、設計者は(株)JIN建築設計)のほか、(株)LANDICによる(仮称)地行1丁目計画(RC造・地上14階建、延床面積4,997.80m2のワンルーム外62戸、設計者は(株)エヌプラスアーキテクトデザインオフィス)も計画されており、セントラルパーク化後を見据えた開発は断続的に続いている。
このほか、七隈線・六本松駅から徒歩5分程度の場所では、(株)レーサムによる(仮称)六本松ホテル(RC造・地上10階建、延床面積2,407.75m2の客室数18室。設計者は(株)マツダグミ、営業予定者は(株)BEAD)も計画されている。
南区
OHASHI HILL開業
南区の計画戸数はタカラレーベンによる(仮称)レーベン平尾新築工事(ワンルーム外145戸)もあり、24年下半期比で131戸増となる395戸となった。西鉄天神大牟田線・大橋駅前に新たなランドマーク、複合商業施設・OHASHI HILLがオープンしたことで、同駅を起点に、大橋エリア全体の新陳代謝が促されることが期待される。すでに(株)アライアンスがCLUB THE. HOUSE大橋(RC造・地上10階建、延床面積3,947.98m2のワンルーム外33戸、設計者は(株)エムクラフト)を計画しており、同駅周辺には解体中の物件も複数見受けられることから、街並みの更新がさらに進むことは間違いない。
このほか、大橋駅から徒歩10分程度の向野2丁目の元祖肉肉うどん大橋店側では、(株)オートバックスセブン(東京)による(仮称)南区向野2丁目が計画されている。建築物の概要はRC造・地上4階建、延床面積1,464.67m2のワンルーム外15戸。設計者はスターツCAM(株)大阪支店で、8月頃の着工を予定している。塩原3丁目では個人による(仮称)塩原3丁目ビル(RC造・地上5階建、延床面積1,364.36m2のワンルーム外16戸、設計者は照栄建設(株))が計画されており、引き続き大橋駅周辺エリアの動向が注目される。

西区
姪浜・周船寺駅近の計画
24年下半期は姪浜以西エリア、とくにJR九大学研都市駅周辺エリアでマンション開発が盛況を博し、計画戸数446戸で市内7区中4位に躍進した西区。25年上半期はその勢いにも一服感が見られ、計画戸数は190戸減となる256戸に落ち着いた。
注目されるのは、姪浜駅まで徒歩10分圏内の場所で計画されている、サンヨーホームズ(株)(大阪)による(仮称)姪の浜一丁目。建築物の概要はRC造・地上12階建、延床面積2,864.37m2のワンルーム外31戸。設計者は(株)work3となっている。このほか、同駅にほど近い場所では、個人による(仮称)内浜1丁目プロジェクト(RC造・地上7階建、延床面積2,118.11m2の、ワンルーム外23戸、設計者は(株)ア・ライズ)や、recensによる(仮称)modern palazzo姪浜3丁目(RC造・地上9階建、延床面積999m2のワンルーム外18戸、設計者はゴマアーキテクツー級建築士事務所)などが計画されており、西区の玄関口でもある姪浜駅周辺エリアでの開発が、再び盛り上がりを見せている。

また、JR周船寺駅側ではセントラル総合開発(株)九州支店による(仮称)福岡周船寺プロジェクト(RC造・地上9階建、延床面積2,237.23m2、ワンルーム外30戸、設計者は(株)ATOM建築設計室)が計画されており、同駅南側の再開発(23年11月末発刊・本誌vol.66参照)に合わせた動きも出始めている。
城南区・早良区
城南区100戸超え
城南区・早良区の24年下半期における計画戸数はそれぞれ95戸・377戸だったが、25年上半期は132戸・395戸となり、両区ともに増加。とくに城南区は、23年下半期以来の計画戸数100戸超えとなった。早良区においては七隈線沿線エリアの橋本、賀茂などでマンション開発が着実に増えてきているほか、西新や原など従来から一定の開発需要があったエリアでも再び開発が目立ってきている。
城南区で注目されるのは、七隈線・別府駅から徒歩10分程度の場所で計画されているエクシア・クレイズ別府。建築物の概要はRC造・地上5階建、延床面積885.20m2のワンルーム23戸。建築主は(株)OZホールディングス、設計者は(株)エムクラフトとなっている。
早良区で注目されるのは、空港線・室見駅から徒歩10分程度の業務スーパー室見店側で計画されている(仮称)南庄計画。建築物の概要はRC造・地上5階建、延床面積1,011.51m2のワンルーム外15戸。建築主は個人、設計者は上村建設(株)で7月頃の着工を予定している。
25年下半期は官庁施策の波及効果に期待
福岡市の25年度一般会計当初予算は、過去最大の1兆1,128億円となり、5年連続で1兆円を超えた。注力する取り組みとして、公共施設やビルの緑化などを通じた、都市の景観や魅力の向上が挙げられた。市役所本庁舎緑化整備事業の公募と、合わせて公開されたイメージ画像は話題を呼んだ(優先交渉権者には(株)中村緑地建設を代表企業とするグループが選定された)。
また、Fukuoka Art Nextを掲げて文化・芸術を推進する市は、福岡アジア美術館の分館を警固公園地下に整備にする方針を打ち出している。須崎公園も、福岡市民会館跡地に水辺に開かれた公園として再整備される計画で、現在は27年3月の供用開始を目指して工事が進められている。天神ビッグバンも水鏡天満宮の那珂川沿いへの移設、新天町商店街と福岡パルコの共同再開発、福岡中央郵便局とイオンショッパーズ福岡の再開発といった注目プロジェクトが残されている。
天神ビッグバンや博多コネクティッドを契機とした老朽化したビルの建替えによる高層化と複合化が、国内外からの企業誘致と雇用創出を加速させたことで、福岡市は次代の中枢拠点としての地位を確立しつつある。国家戦略特区の活用やアジアの玄関口としての立地特性による強みで、街は今、新たな成長曲線を描き始めており、25年下半期の開発動向も注目される。
(了)
【代源太朗】

月刊まちづくりに記事を書きませんか?
福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。
記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。
企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。
ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)