12日、福岡県弁護士会に所属していた元弁護士・清田知孝被告の横領事件の第1回控訴審が福岡高等裁判所で行われた。
事件は清田被告が弁護士であった当時、依頼人の預り金等を着服したとして3つの事件について業務上横領の罪に問われたもの。第1審で検察側は執行猶予なしの懲役4年を求刑、弁護側は執行猶予付きの判決を求めていたが、4月の第1審判決で福岡地裁は、被告人に対して懲役2年6カ月の実刑判決を言い渡した。
今回の控訴審の第1回公判で弁護側は、控訴した理由について、被害者との示談を進めており、示談が成立していない被害者に対しても被害金の弁済をする意思を示しているにもかかわらず量刑が重すぎるなどとした。一方、検察側は控訴の棄却を求めた。
裁判官が提案するも被告人質問はなし
証拠調べで弁護側は、まだ示談が成立していない1つ目の事件と2つ目の事件について、被害者への慰謝料と被害弁済金などについて支払いの準備を進めていることや、被害者の代理人と示談に向けたやり取りをしていることに関する資料などを証拠として提出した。
第1審の判決の時点から被害者との示談は何ら進んでいないが、裁判官は、とりあえず今まで被告人が示談に向けて進めてきた被害弁済の準備状況などについて被告人質問で述べてはどうかと提案した。しかし、弁護側は、「今日はその準備ができておらず、示談が成立してから改めてお願いしたい」として質問を辞退した。その結果、被告人質問は行われなかった。
弁護側は判決期日に猶予を求める
裁判官は判決期日の設定にあたって、10月半ばに設定しようとしたが、弁護側は、「示談が成立しそうなので、もう少し判決期日に余裕が欲しい」と述べた。裁判官が再度10月下旬の期日を提案したが、弁護側はそれにも難色を示し、裁判官が「では、いつが希望か」と尋ねると、弁護人は「11月が希望」と述べた。
それに対して、裁判官は「今から1カ月後の判決までに示談が成立しないとすれば、さらに1カ月延ばしても事態が変わるとは思えませんが」と述べて、判決の引き延ばしを図る弁護人に対して疑問を呈したが、最終的には弁護側の希望をいれて、11月上旬に期日が設定された。
以下の日程で控訴審の判決が予定されている。
控訴審の判決予定日
日時:11月5日(水)午前11時
場所:福岡高等裁判所1015号法廷
【寺村朋輝】