料亭(5)名門廃業へ

 2020年10月末に廃業した老舗料亭・三光園は、業界においてトップの位置にあった。この三光園の跡地をめぐり、次のような提案を行ったことがある。「【三光園跡地】福住さん、「福住の里」をお願いします!」

 福岡市中央区清川1丁目にあった老舗料亭・三光園(1926年創業、2020年10月末閉店)の敷地・建物(約700坪)の今後の動向が注目されている。同館については、「博多の街の発展の歴史を体現する建物と庭の風情を残してほしい」という声を、これまで数多く耳にしてきた。要するに関係者たちは、この地が安易にマンション分譲に転用されれば、周辺環境が俗化してしまうことを危惧しているのである。
 今回確認したところ、20年11月に(株)福住(福岡市中央区天神)が買収していたことが判明した。関係者にとっては安堵材料となろう。福住は、不動産売買仲介やテナント仲介、マンション管理、コインパーキング管理において、地場業界のトップランナーとして知られている。「福住さんは、単なる売買のレベルを超えた存在であり、地域環境に適した開発をしてくれるだろう」という期待感が高まっている。
 福住さん!「歴史ある景観を生かした“福住の里”をつくっていただきたい」というのが世論である。
 現在のところ、福住は約束通り、買収から5年間、転売せずに保有を続けている。今後、周辺まちづくりにふさわしい企画が打ち出されることを期待したい。

相次ぐ料亭廃業

 当社の中堅女性社員と料亭について話したときのこと。「前の職場で一度行ったことがあります」と、彼女は必死に昔の記憶をたどっていた。「中洲だったかしら、いや西中洲だったかしら」と曖昧に思案していたので「きくしげさんではないか?」とこちらから投げかけると、「そうそう、きくしげさんだわ」と頷いた。この店も当時は繁盛していたが、西中洲入口という要所に立地したことで不動産価値が高く、結果的に土地売却で大きな利益を得たらしい。現在は飲食ビルに様変わりしている。

 一方、博多区中洲1丁目の料亭「満佐」は、現在すでに料亭営業を継続しているとは言い難い。聞くところによれば、一族は1,000坪ある敷地を「いかに高く売却・活用するか」を思案中であるという。いまなお本格的に料亭として営業しているのは、博多区住吉周辺に数軒ほど見られる程度である。

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