ホテル開発用地なら「1種200万円」も
「天神や博多の中心から少し外れた周辺エリアでも、1種単価200万円で売買される事例が増えてきました」──不動産再生を手がける(株)トリビュート(福岡市中央区)の田中稔眞社長はそう話す。
1種単価とは、容積率100%あたりの土地の価格を指し、福岡市内の商業地域に多い容積率400%のエリアであれば、1種単価200万円=坪単価は800万円、容積率500%であれば1,000万円ということになる。博多駅至近や天神アドレスはさらに上回る価格が付いた事例も少なくないが、昭和通りより北のエリアでも「1種単価200万円」が付く事例が増えてきたという。
田中社長は続けて、次のように話す。「約10年前は、リーマン・ショックから脱して不動産市況も回復基調が顕著になっていた頃でしたが、その当時と比べても、このエリアの取引価格は5倍以上になっています。最大の要因は、ホテルアセットへの投資が増えたことが挙げられます」。
高容積エリアで増加 小規模ホテル開発
天神・博多の駅から徒歩数分圏内で、かつ敷地面積が200~300坪以上とまとまった土地であれば、比較的大型のホテル開発が可能となるため、坪単価2,000万円以上での取引も散見されるようになってきた。「こうした好立地のまとまった土地であれば、過去例を見ない価格での売買もかなり増えてきています」(田中社長)という。
また、博多駅~那の津通りの旧市街周辺、地下鉄・天神南駅~百年橋通りの日赤通り周辺、博多駅~西鉄・薬院駅の住吉通り周辺は、用途地域が商業地域で高容積となっており、さらに低利用かつ築年数が経過した物件も多いことから、ホテル用地としての売買が(コロナ禍を挟んで)ここ数年飛躍的に増加している。
「国内では、東京に比べるとまだまだ安い。客室面積40m2、14~16室の宿泊施設なら、敷地面積は40~50坪あれば開発可能です。建設コストが高騰しているなかでも、物件価格10億円、NOI(※)6~7%のホテル開発は現実的といえるでしょう。ホテルの宿泊単価も上昇していく余地は十分にあると思っていますし、在京・在阪のデベロッパーからの問い合わせは実際に増えています」(田中社長)。
※「NOI」はNet Operating Incomeの略で、営業収入から管理費、固定資産税、保険料などの運営経費を差し引いて算出される純収益
開発だけでなくコンバージョンも

すでに中心部の地価は、ホテル開発以外は検討しにくい状況になってきた。それでも、賃料が抑えられた賃貸マンションは売買市場に残っているほか、適正賃料のものも空室が発生するたびに1室を宿泊施設にコンバージョンすることで、収益を大きく向上させることも可能となる。トリビュートでも、博多駅から徒歩8分のオフィスビル・内山東光ビルや、天神周縁の賃貸マンション・レジデンス高砂といった物件の空室を宿泊施設にコンバージョンして運用しているが、「まだそれぞれコンバージョンは1室、2室程度ですが、コンバージョン前と比べて収益は大きく向上しています」(田中社長)と、運営は好調だという。

それでも、リーマン・ショックやコロナ禍を経験した同氏は、「宿泊事業はコロナ禍などのリスクに加え、地震などの自然災害や戦争をはじめとする政治的リスクもあります」と警戒するものの、「リスクもありますが、宿泊市場は拡大していく可能性は大きいと判断していますし、当社としても一定の投資を続けていこうと考えています」と加えた。
【永上隼人】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中稔眞
所在地:福岡市中央区渡辺通1-1-1
サンセルコビル6F
設 立:2009年4月
資本金:1,600万円
TEL:092-292-2313
FAX:092-292-2314

月刊まちづくりに記事を書きませんか?
福岡のまちに関すること、建設・不動産業界に関すること、再開発に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。
記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。
記事の企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は別途ご相談。
現在、業界に身を置いている方や趣味で建築、土木、設計、再開発に興味がある方なども大歓迎です。
また、業界経験のある方や研究者の方であれば、例えば下記のような記事企画も募集しております。
・よりよい建物をつくるために不要な法令
・まちの景観を美しくするために必要な規制
・芸術と都市開発の歴史
・日本の土木工事の歴史(連載企画)
ご応募いただける場合は、こちらまで。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。
(返信にお時間いただく可能性がございます)