福岡市在住の異色の芸術家、劇団エーテル主宰の中島淳一氏。本人による作品紹介を共有する。
作品の表面を流動する宇宙の呼吸。金と紫、群青と白の渦が交錯する神秘の迷宮への誘い。混沌(カオス)の奥から秩序(コスモス)が生まれようとする聖なる胎動。絵の中央に降り注ぐ白光は、神の息吹。あらゆる色を超越する存在の純粋形相の顕現。画面は単なる色の混合ではなく、アルケミー(錬金術)的な変容の場である。金色は太陽の意志、紫は精神の王国、青は霊的直観、白は再生の清浄を表す。それはライプニッツのモナドが宇宙を映し出す鏡であるように、1つの色面のなかに全宇宙が投影されている。人間の意識はそのモナド的中心にあり、作品を観る行為そのものが、王国への参入である。構図の下部に向かって拡散する白と紫の波は、ゴルゴタの丘を思わせる苦悩の地でありながら、同時に天界へと上昇する光の流れにも見える。
「神の王国」とは、来世に待つ楽園ではなく、今ここに開示されうる内なる王国である。ルカによる福音書にはこう記されている。「神の国は、見えるかたちでは来ない。見よ、神の国はあなたがたのうちにある」と。芸術とは、人間のなかにある神的エネルギーを呼び覚ます聖なる行為である。その意味では、この作品は描かれたものではなく、生成し続ける神的現象そのものだとも言える。芸術とは神の創造に連なる人間の創造、すなわち「the Kingdom of God」への参入儀式なのである。《the Kingdom of God》は、色彩の宇宙を通して、描いた精神的曼荼羅だ。そこには生も死も、苦悩も歓喜もすべて溶解し、一条の光に還元される。その光は、神の声なき声、沈黙のうちに語られる創造の言霊である。
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