【異色の芸術家・中島氏(33)】アトリエメモランダム「大天使ミカエル」

 福岡市在住の異色の芸術家、劇団エーテル主宰の中島淳一氏。本人による作品紹介を共有する。

大天使ミカエル
大天使ミカエル

 白き炎の裂け目に生まれる世界。作品の中央に広がる光のような白の噴流。それは光の海ではなく、裁きの瞬間に開く、天と地の裂け目。ミカエルの剣は、炎の剣と呼ばれるが、ここでは炎ではなく、超温度の白く燃える氷として表現されている。

 上部の青黒い層と、下部の金茶から黒に向かう大地の層が、白光によって切り裂かれ、両世界は存在することを強いられている。この光は甘く慰める光ではなく、「我、汝を計る」と宣言する天上の秤。だからこそ、この絵は冷たく、激しく、同時に慈悲深い。ミカエルは火の神でありながら、ここでは氷の裁きとして現れている。それこそがミカエルの本質。天の意思をそのまま地上に通す純粋透明な意志を強烈に浮かび上がらせている。ルドルフ・シュタイナーの神智学では、ミカエルは“Cosmic Intelligence”(宇宙的知性)の保持者であり、人類の思考をエーテル体へと純化させる働きを持つ存在とされる。この絵はその働きを視覚化している。

 上層の青黒い領域は、コスモス的精神界。流動的でありながら深い青、これは人間がまだ触れられない天上の知性の領域である。そこから白光が裂け目のように流れ出す。これは、天上の知性がミカエルの働きによって下降する現象である。中央の白光はミカエルの働くエーテル界の剣。白光は単なる色彩ではなく、エーテルの流動そのもの。流れ・凝結・氷結・融解。そのすべてが一瞬で起こっている。これは光の動きをもつミカエルの働き。人間の思考を、個人的欲望のアストラルから切り離し、宇宙的意志へと整えるプロセスを描いている。

 下部の金茶・黒の大地層はアーリマン的領域。割れ目、亀裂、硬い地殻のような沈み込み。これは物質化・凝結・凍結をもたらすアーリマンの力。しかし、この作品ではアーリマンの領域が対立しているのではなく、白光に照らされて浄化されようとしている。シュタイナーは「アーリマンを追放するのではなく、対話せよ」と語っている。

 この作品のミカエルは、まさにその“対話的光”として降りている。キリスト教神学でミカエルは、最後の審判のラッパを吹く天使として登場するが、同時に時間を開く天使とも呼ばれる。作品の白光は裂け目として、その神学的性質を視覚化している。

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