ワンライフが浮き彫りにする
業界の盲点と透明性の課題
病院と葬儀業者が連携する紹介モデルが、地域の葬祭業界に波紋を広げている。とくに福岡都市圏を中心に存在感を高めているのが、もともと葬儀業を母体とし、近年大手葬祭企業(株)金宝堂に買収された(株)ワンライフである。
同社は、病院内で亡くなった患者に対するエンゼルケア(死後処置)を看護師に代わって担うかたちで病院に入り込み、遺族と接点をもつ。その過程で複数の提携先葬儀社を紹介し、葬儀契約へと誘導するスキームを構築している。こうした紹介は医療機関の業務負担軽減に寄与する一方で、白衣や制服を着たスタッフが病院関係者だと誤認されやすく、冷静な比較検討がなされないまま、案内された業者と契約してしまうケースも少なくない。
実は、病院を起点とする葬儀紹介の手法は過去にも存在していた。40年ほど前には、医療機関と葬儀社の結びつきによる送客モデルが一部で見られたが、消費者保護や倫理的観点から批判を受け、次第に淘汰されていった経緯がある。それが今、エンゼルケアという新たな入口を装い、別のかたちで復活しつつある点に、業界内外から懸念の声が上がっている。
実際の現場では、患者の逝去直後に“コーディネーター”と称するスタッフが現れ、他社と契約予定だった遺族が方向転換を迫られる事例が確認されている。なかには、互助会などで事前に積み立てを行っていたにもかかわらず、紹介業者の利用によって本来の契約が無効となり、結果として高額請求を受けたとする苦情も寄せられている。
こうした流れに拍車をかけているのが、葬儀仲介における「多重下請構造」の存在である。ワンライフがポータルサイト経由で葬儀を受注し、地域の提携業者へ再委託することで、複数の中間マージンが発生。結果的に現場を担う業者に届く予算は限られ、葬儀の品質低下や、内容が契約と一致しないなどのトラブルを招く要因となっている。見積書には「〇〇一式」といった抽象的な表現が並び、紹介料や中間コストの内訳を遺族が把握するのは困難である。
このようなスキームは、病院・仲介業者・提携葬儀社の間に見えにくい利権構造を生み出している可能性があり、営業協力費や紹介料などの金銭のやり取りが介在しているとも指摘されている。医療機関側は「関知していない」との立場を取るが、実質的に一定の経済的メリットが還元されていると見る関係者も少なくない。
全国規模でM&Aによるネットワーク拡大を進める金宝堂にとって、ワンライフは戦略的な“送客装置”といえる存在だ。病院起点で得られた遺族ニーズを、傘下の葬儀社へと割り振る構造が築かれており、これが同社の新たな収益モデルとなっている。
こうした仕組みは一見効率的に見えるが、遺族の判断力が最も揺らぎやすい場面に付け込むことで、情報の非対称性や選択の自由を損なう危険性を孕んでいる。はたして、看護現場の業務軽減と引き換えに、葬送の現場に倫理的な歪みが忍び込んではいないだろうか。業界全体で透明性の確保と公正なルール整備を進める必要がある今、私たちは「最期の選択」を誰が、どのように導いているのかを改めて問い直すべき時にきている。
【内山義之】








