日中ビジネス交渉人 徐静波の日本企業へのメッセージ~「排外」ではなく「排悪」とすべきだ

 30年以上にわたる日本での生活で、この国がいい国で住みやすいと思われる理由について、まず応対が礼儀よく親切(いわゆる「おもてなし」)であること、次に外国人も日本人と同じ社会保障を受けられること、そして四季がはっきりして風景もいいことの3点であるとかねてから思ってきた。

 しかし最近の日本は、政治面から社会の隅々まで、あれこれと理由をつけて外国人を「侵入者」や「社会のトラブルメーカー」と見なし、「線引き」対応をしたり、時に差別をしたりしているようだ。

 最近発生した外国人への「ラーメン事件」は、その典型例である。

 大阪市の中心部にある人気のラーメン店「我道家」が最近、外国人に「二重価格」を設定したことで論議を呼んでいる。券売機に複数の言語が設定され、日本語でメニューを選べばラーメンは安くて1,000円程度だが、英語など他言語であれば2,000円近くに跳ね上がる。ある中国人観光客が、食べ終わった後に値段が違うことに気づいて差額の返金を求めたが、30分近く言い争った末、店は警察に通報するなどと言った。

 店主の新井悠介さんはXで、「外国人はルールが分からず、要望も多くて、会話にお金がかかるので、『失敗しないスペシャル版』のラーメンをわざわざ作り出した。余分な代金は『サービス料』や『管理費用』だ」とコメントした。さらに、外国人(とくに中国人)はマナーが悪いので中国人の来店禁止を検討しているとも強調した。

 確かにその通りに聞こえるが、よくよく考えると差別への言い訳ではなかろうか。メニューと値段を別々にした理由をあらかじめ外国語表記しておけば済む問題ではないか。

 こうした事例は他所にもあって、外国人観光客、いわゆる「インバウンド」ブームに対する日本社会の複雑な心境の表れである。大勢の外国人が観光業や商業施設を活気づけてほしいとの期待も抱きつつ、「観光公害」を心配している。こうした背景で「二重価格」は、「高値」で外国人に足を運ばせないようにする「特効薬」だとも見られているようで、導入を検討している博物館・美術館が少なくとも11カ所あるらしい。

 二重価格は世界的には決して珍しくはなく、エジプト・ギザのピラミッドは外国人の入場料が約2,300円で、自国民の10倍以上である。こうした例は日本のメディアでしばしば、「適切な言い訳」として紹介されている。ただ日本は貧しい発展途上国であるエジプトと違い、経済水準も高く社会も安定している。財政負担やインバウンド対応費用を「日本語がわからずルールも知らない」外国人に押し付けるための「二重価格」制度を導入したがる理由は何なのだろうか。

 ラーメン店の料金上乗せは単なる民間の商業目的なものとしても、三重県知事の「国籍要件」表明は政治や制度の最低ラインに触れるものだ。一見知事は昨年末、県職員の採用基準について「国籍要件」の復活を検討すると述べた。つまり、日本国籍をもたなければ組織に加われない、というのである。これについては県内の複数の市長が、「こうした『安全保障』を理由とした外国人差別は多文化共生への努力とは真逆の動きで、社会の分断や不信をもたらすもの」と表明している。現に外国人の住民や技能実習生は増える一方であり、外国人職員抜きで各種の問題に対応やサポートをするとなると、行政機能にも支障が出てしまう。

 日本は今、労働力不足が大変深刻であり、高齢者の介護、工事現場、宿泊施設などで外国人労働者への需要が高まっているが、行政面で「締め出し」をしようとしている。「きつくて汚い仕事」をする外国人は歓迎するが、権力や社会保障という「核心」部分は除外したい、というダブルスタンダードな世の中を反映している。

 確かに日本には「外国人問題」が存在するが、これについて、日本の文化や制度を知らないか尊重しない外国人による「トラブル」もあれば、政府自体の政策面における「落ち度」も存在する。以前から取りざたされている問題の対応に着手するのはもっともで、必要なものだ。ただしこれで外国人を「トラブルメーカー」に仕立てたり、「侵入者」と見なしたりすることで、政府から社会全体まで世論がまとまってしまえば、「排悪」という悪い外国人を排除する当初の目的がたちまち「排外」への言い訳になる。日本に住む外国人の数は400万人で、日本人と同等の社会保障を受けている一方、納税や社会貢献といった同等の義務も負っている。国籍や肌の色が違うことで「外国人」と見下される状態が続くとなると、社会的ないざこざも高まり、感情面でも溝が深まる一方で、外国人に極めて不公平な「二重構造」の国となってしまう。「多文化共生」を単なる自治体庁舎に掲げられたスローガンとしてはならない。ラーメン一杯の値段を「ランク分け」するようでは、社会のぬくもりも失われてしまう。

 このような流れが急速に広まるようでは、日本は「おもてなしの国」ではなくなって、閉鎖的で守りの国になってしまう。管理も必要だが言い訳を差別への隠れ蓑にしない、というバランスのとれる世の中になってほしい。


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