見木の得点で先制。攻守に光る椎橋の存在感
4月11日、明治安田J1百年構想リーグWEST第10節がベスト電器スタジアムで行われた。アビスパ福岡はV・ファーレン長崎を1―0で下し、PK戦勝利を含む3連勝を飾った。直近数試合で見せた粘り強さと試合運びの成熟度が際立ち、チームは着実に状態を上げている。
立ち上がりから積極的に攻撃を仕掛けたのは福岡だった。最終ラインから落ち着いてボールを動かし、中盤でリズムをつくる。なかでも光ったのは、前節の広島戦から加わったMF椎橋慧也の存在だ。守備では危険なスペースを消し、攻撃では精度が高いワンタッチの配球でアクセントを加える。早くも攻守のつなぎ役として機能し、チーム全体に安定感をもたらしている。
また、椎橋の加入によって前線の自由度も高まった。MF見木友哉は攻撃時の動き出しに専念でき、MF名古新太郎も中盤でボールを受けて前を向く場面が増加。両選手の本来の持ち味である推進力やアイデアが随所に表れ、攻撃に厚みが生まれた。
前半は23分とアディショナルタイム5分に見木が決定機を迎えるもスコアは動かなかった。しかし、試合は後半に入っても福岡ペース。押し込み続けた末の62分、見木が均衡を破る。ペナルティエリアの外から相手をかわして放ったグラウンダーの一撃が決まり、待望の先制点をもたらした。
この得点は、見木にとっても福岡にとっても大きな意味をもつものになった。というのも、ここ最近はPKの失敗や決定機を決め切れない場面が続き、得点という結果が出ているとは言い難い状況だった。それでも本人は試合後、「特に気にはしていなかった」と淡々と振り返る。しかし、ゴールが決まった瞬間に沸き起こったスタジアムの歓声や、駆け寄ったチームメイトの表情からは、見木自身よりむしろ周囲のほうがこの一撃を待ち望んでいたのかもしれないと思わせる一体感があった。
先制後も福岡は守備の強度を落とさず、相手に決定機をほとんど与えず試合を終えた。福岡の特徴でもある堅守が際立ち、1点を守り切る“福岡らしい”勝利となった。
さらに明るい材料となったのが、コンディション不良から復帰したFW碓井聖生の復調だ。球際の強さやスピード、運動量が戻り、対人強度は一段と向上。攻撃時のポストプレーでも存在感を示した。
これで福岡はPK戦を制した試合を含めて3連勝。単なる勝利の積み重ねにとどまらず、内容面でも守備の安定をベースに、攻撃の連動性が高まり、試合ごとに成熟度が増している印象だ。ただ、次節の対戦相手は、ホームで1-5と大敗を喫した名古屋グランパスだ。しかもこの試合では、名古屋から期限付き移籍中の椎橋が契約上出場できない。ここまで中盤のバランスを支えてきた存在を欠くなかで、どのようにゲームを組み立てるのかが焦点となる。
福岡と長崎、新しい「バトルオブ九州」のかたち
長崎は今季からJ1に昇格し、福岡と長崎の対戦は実に6年ぶり。さらに、これまでの対戦はJ2であったため、J1での対戦は、この百年構想リーグが初めてとなる。これまで、各カテゴリーで九州同士の対戦が幾度となく繰り広げられてきたが、福岡と長崎の一戦は単なる「バトルオブ九州」の枠を超え、新たな可能性を感じさせるものがあった。
その熱量は、対戦カードが発表された直後からすでに高まっていた。3月15日に長崎のホームで行われた一戦では、チケットが即日完売。多くの福岡サポーターが長崎の地へと乗り込み、PEACE STADIUM Connected by SoftBankには2万人を超える観客の熱気に包まれた。そして迎えた今回の福岡のホームゲームには、今季最多の1万3,935人が訪れ、長崎サポーターのアウェイ応援席は完売となった。
九州という同じ地域に根差すクラブ同士だからこそ生まれる、負けられない“バチバチ感”がありながらも、どこか温かみを感じさせる空気が漂うスタジアム。対戦前には天神地下街にPRの掲示を展開するなど、一種の祭りのような高揚感が印象的だった。
また、試合を盛り上げたのは選手やサポーターだけではない。両クラブのマスコットも大きな注目を集め、イベントの登場時には多くの来場者の視線を釘付けにした。当日販売されたマスコットの限定グッズも早々に完売するなど、試合そのものだけでなく、対戦の雰囲気を楽しむ空気がいつもとは違っていた。
近年、Jリーグでは地域性を生かした対戦カードの価値が改めて見直されている。そのなかで、この福岡と長崎の対戦は、両クラブにとって「バトルオブ九州」の新たなモデルを示しつつあるといえるだろう。福岡と鳥栖のようなダービー関係にとどまらず、互いの存在が集客や交流を生み出し、クラブと地域双方に好循環をもたらす可能性を秘めている。ピッチ上では勝敗をかけて選手とサポーターが激しく競い合いながら、ピッチ外では人と人、街と街をつなぐ。そんな新しい「バトルオブ九州」のかたちが、今後もJ1の舞台で継続されていくことを願う。
【川添道子】








