2016年国際政治展望~公式声明・報道の裏側(前)
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2016年の国際政治は、世界を震撼させた、北朝鮮による第4回目の核実験(1月6日に水素爆弾実験)で幕開けした。北朝鮮の金正恩最高指導者はなぜこの時期に核実験に踏み込んだのか。一方、日本の安倍総理は地球儀を俯瞰する外交と称して、50、60の国々を回っているが、隣国である中国、韓国、ロシアなどとの外交関係は上手くいっていない。進展かと思えた「慰安婦問題」は、14日に元慰安婦を支援する韓国挺身隊問題協議会など386の団体が少女像の撤去や昨年末の慰安婦問題をめぐる日韓両政府の合意に反対する声明を発表、先行きが不透明になっている。
2016年の国際政治はどのような展開を見せるのか。隣国との関係はどうなるのか。国際政治経済学者である浜田和幸参議院議員に聞いた。
国際政治経済学者・参議院議員 浜田和幸氏「なぜ、核実験にゴーサインを出したのか?」を考える
――驚きました。今年の国際政治は、北朝鮮による第4回目の核実験(1月6日の水素爆弾実験)で幕開けをしたと言っても過言ではないと思います。同日すぐ、国連安全保障理事会は緊急会合を開き、過去の核実験で採択した安保理決議に対する「明らかな違反」とする非難声明を出し、新たな制裁措置を盛り込んだ新決議案をすみやかに作成することでも一致しました。中国を含む安保理のすべての参加国(15カ国)が合意しています。先生はこのニュースをどのようにご覧になられましたか。
浜田和幸氏(以下、浜田) 今、アメリカ、それに追随する日本、韓国では「水爆実験ではない」、「地震の規模が小さい」などと事態を過少評価、またはその火消しに大わらわになっています。さらに、アメリカはグアムから核を積んだ米軍機を発進させ、日本と韓国に「万が一の時にはコミットメントしますよ」というポーズを見せました。しかし、本件の善悪はともかく、事態を冷静に分析できないと、今後の判断を誤ってしまう危険があります。
誰が考えても非難轟々になると分かっている新年早々に、敢えて北朝鮮の金正恩最高指導者は「なぜ、核実験にゴーサインを出したのか?」今回の行為によって、経済制裁を受けることは明明白白で、北朝鮮にとって得するものが何もないと見えるからです。日本の衆議院、参議院でもすぐ、北朝鮮への非難決議「国連憲章を踏みにじり、6者協議の原則に反する行為」が採択されています。しかし、その「なぜ」の分析ができていなければ、全く意味がなく、まして何の抑止力にもなりません。今の安倍政権は、マスコミも含めて肝心なところに踏み込んでいません。
アメリカは今後30年間で核兵器開発に100兆円計上した
先ず、金正恩最高指導者が、一貫して軍事力の近代化を主張し、核兵器開発に邁進しているのは軍事専門家の間では常識になっています。
その北朝鮮にとって、今回の核実験は何回目に当たるかと言いますと、わずか「4回」目です。では、国連非難決議の先頭に立ったアメリカが核実験を何回やったかと言うと「1,000回」を超えています。アメリカだけでなく、ロシアも約「1,000回」、フランス、中国は約「43回」、イギリスも、インドも、パキスタンも核実験を行っているのです。今、米露間の戦略核兵器削減条約(START)によって、2018年までには、各々が持っている核弾頭(現在は2,000発以上持っている)をそれぞれ「1,500発ぐらいまで減らしましょう」という合意ができています。しかし、アメリカもロシアも核弾頭の数は減らすことには合意したのですが、ミサイルの性能、精度をどんどん上げてきているのです。アメリカは、今後30年間で、核ミサイルの開発に、天文学的数字とも言える1兆ドル(100兆円を超える)の予算計上を決めています。
この予算計上を決めたアメリカのオバマ大統領は、2009年に「核なき世界」に向けた国際社会への働きかけが評価され、「ノーベル平和賞」を受賞しています。つまり、言っていることと、やっていることが全く逆なのです。さらに、アメリカは昨年10月には、日本ではほとんど報道されていませんが、重力を使った、従来の誘導ミサイルと全く違う新しいミサイルの開発実験にも成功しています。
【オバマ大統領の「ノーベル平和賞」受賞】ノルウェー・ノーベル賞委員会は2009年10月9日、ノーベル平和賞をオバマ米大統領に授与すると発表した。その理由として、2009年4月5日にプラハで表明した核廃絶に向けた国際協調外交推進の理念、そして同年6月にカイロで行ったイスラム世界に対する融和と対話の呼び掛けなどを挙げている。そのプラハで、オバマ大統領は「今日、私は核兵器のない世界の平和と安全保障を追求するという米国の約束を、明確に、かつ確信をもって表明する」と演説している。
(つづく)
【金木 亮憲】<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員を歴任。参議院では、外交防衛、経済産業、内閣の各委員会に所属し、ODA特別委員会や憲法調査会でも主導的な役割を果たしている。関連キーワード
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