武雄アジア大学をめぐる監査、市長、議員それぞれの認識(3)必要なのは「応援」と「チェック」の両立
「応援」と「チェック」の両立を問う豊村議員
前回は、小松政市長が「大学を生かしたまちづくり」を武雄アジア大学構想の重要な柱として掲げる一方、大学の持続可能性やリスク管理をどこまで検証するのかという問題を取り上げた。では、武雄市は大学を「生かす」だけでなく、運営状況をどこまで「チェック」しようとしているのか。10日の一般質問で、豊村貴司議員がこの問題を取り上げた。
豊村議員は、武雄市と武雄アジア大学との関係には2つの側面が必要だと指摘した。1つは、すでに学生が入学している以上、大学を地域に生かし、武雄市にとってプラスになるよう支えていくこと。もう1つは、多額の公費を投入した以上、大学の運営状況を市が継続的に確認していくことだ。豊村議員は、「チェックだけでも、応援するだけでもなく、両方が私としては必要じゃないかなと思います」と述べた。
出所:武雄市の公式YouTubeチャンネル
学生確保は「蓋を開けてみるまで分からない」ではダメ
そのうえで問題にしたのが、学生募集をめぐる市の関与だ。武雄アジア大学の初年度入学者数については、小松市長が実際の人数を把握したのが年度末ぎりぎりだった経緯がある。豊村議員は、次年度以降の学生確保が大学経営にとって重要になるとして、市が大学側と積極的に情報交換を行うよう要求。「もう蓋を開けてみるまでわからないではなくて、しっかりと大学と向き合ってほしい」と求めた。
これに対して市側は、「来春の学生確保に向けた活動を強化するよう大学側に強く要望する」とともに、今後、定期的な情報交換を申し入れる考えを示した。豊村議員はこれを受けても、「応援したくても、やっぱりそこが運営できないことには応援できない」と述べ、大学を地域に生かす前提として、大学そのものが安定して運営される必要性を改めて強調した。
ここに豊村議員の問題意識がよく表れている。豊村議員は大学を地域に生かすこと自体には異論を唱えていない。むしろ学生には、「せっかく武雄に来たんだから、武雄で思い出を残してほしい」「武雄よかったなと思ってほしい」と語り、将来地元に帰ったとしても、再び武雄を訪れたいと思える関係を築いてほしいとした。そのうえで、大学という組織そのものも「武雄市にあるものは、武雄市にとってプラスになるような形」になってほしいとして、市が大学とどう関わるべきかを問うている。
これに対する市側の答弁からうかがえるのは、武雄市と大学との役割分担についての認識だ。市の担当部長は、「大学は、教育・研究や学生募集をはじめ、大学の運営に責任をもって取り組み、市は大学の自主性を尊重しながら、地域や企業と連携を促進し、大学が持つ人材や知見をまちづくりに生かす役割を担う」とした。つまり市の認識では、教育や学生募集、大学経営そのものの責任は大学側にある。一方の市は、大学を地域や企業につなぎ、その効果をまちづくりに生かしていく役割を担うという整理だ。
しかし、市は約13億円の補助金を投じて大学を誘致した立場でもある。大学の自主性を尊重することと、公費を投入した自治体として運営状況を確認することを両立させることは可能なはずだ。
「直ちに経営上の支障なし」で十分か
この質疑のなかで、市の担当部長は旭学園の2025年度決算について、市が行った財務確認の結果を次のように説明した。
まず財政面の方から答弁いたします。
(学)旭学園は、令和7年度の財務状況について、7月3日にホームページで公表されましたが、市は旭学園に対し、公表前に財務状況を確認したい旨を依頼し、公表前に資料を共有してもらっております。
令和7年度決算状況につきましては、大学設置に伴う校舎整備や設備投資が完了したことから、資産が令和6年度末約64.8億円に対し、令和7年度末約81.4億円と大幅に増加しております。
一方で、過去からの収支差額の合計である繰越収支差額は悪化しております。こちらにつきましては、一般企業のように投資が将来の収益獲得を目的とするものではなく、教育の公共性を確保するための必要投資であり、短期的な利益を求めない学校法人で、投資結果として累積赤字が計上されることは、制度上・構造上起こり得る通常の現状であり、これ自体が経営危機を意味するものではないと説明を受けております。
また、現金収支につきましては、現金預金は令和6年度末約6.6億円から、令和7年度末6.3億円と約0.3億円減少し、特定資産は令和6年度末に約2.7億円から、令和7年度末約0.9億円と約1.8億円減少しておりますが、こちらの残額につきましては、学校法人の退職金として確保されており、現金預金は約6.3億円を保有されております。
なお、借入金につきましては、令和7年度末約2.75億円で、総資産に対する借入金は3%程度であり、財務の安定性は比較的高いと評価しております。
さらに、大学では文部科学省私学部局と意見交換を行った際、人口減少のなかで地方における大学の意義を踏まえ、期待しているとエールをいただいたとの話をうかがっております。
以上のことから、旭学園の令和7年度決算において、武雄アジア大学の設置にともなう大規模な支出があった一方で、同法人が運営する短期大学や高校の学生・生徒数が増加するなど、法人全体として収支が改善したことに加え、法人の資産保有の状況を見ると、直ちに経営上の支障が生じる状況ではないものと評価しております。
この答弁には、いくつか検討すべき点がある。まず、市側が説明するように、繰越収支差額が悪化していることだけをもって、直ちに学校法人が経営危機にあるとはいえない。大学設置にともなう施設・設備への支出が財務数値に影響することも踏まえる必要がある。また、借入金が総資産の約3%にとどまっていることも、負債の大きさを見るうえでは1つの材料となる。
問題はそこから先だ。市が今回示したのは、あくまでも2025年度末時点(26年3月末)の資産や現金預金、借入金、法人全体の収支状況などを基にした「直ちに経営上の支障が生じる状況ではない」という評価である。しかし、これは今後も学生を確保し、大学が安定して運営を続けることができるのかという、中期的な持続可能性を確認する「チェック」にはなっていない。
直近の財務評価と「4学年そろって評価」の時間軸
ここで、小松市長が8日の一般質問で示した「大学は4年生までそろって、まず評価されるもの」という考えに戻る必要がある。この考えに立つのであれば、武雄アジア大学が4学年そろった段階で評価を受けるためには、当然ながら、そこまで大学が安定して運営を続けていなければならない。そのために必要なのは25年度の決算に基づく評価だけではない。来年度以降の学生確保が想定を下回る場合も織り込んだ、収支・資金繰りの検証が必要だ。それを行わなくては、大学を安定的に運営しながら地域に生かしていくことも、小松市長がいう「4学年がそろった段階」での評価も、その前提が揺らぎかねない。
当社が学生確保数を複数のケースに分け、旭学園の今後の資金繰りを試算してきたのも、まさにそこにある。
『武雄アジア大学の事業継続性を問う(2)学生確保費用が左右する旭学園の資金繰り』
大学を地域に生かすのであれば、大学そのものが安定して運営されていなければならない。その運営責任を大学側が負うことと、公費を投入した武雄市が大学の状況を継続的に確認することは矛盾しない。大学の運営状況を継続的に確認することも、市が果たすべき重要な役割の1つだ。
翌11日の朝長勇議員の一般質問では、この点がさらに具体的に問われることになった。
(つづく)
【寺村朋輝】









