武雄アジア大学をめぐる監査、市長、議員それぞれの認識(4)朝長議員「期待ではなく根拠を」
朝長議員は市の「曖昧な期待」を追及
11日の一般質問では、朝長勇議員が武雄アジア大学を取り上げた。前日の豊村貴司議員が、市には大学を「応援」するだけでなく「チェック」する役割も必要だと指摘したのに続き、朝長議員は、そのチェックの中身を具体的に問うた。
朝長議員は、「経営が行き詰まって撤退というような事態になれば、連携もできなくなる」と述べ、大学の経営見通しや継続可能性を取り上げた。
出所:武雄市の公式YouTubeチャンネル
「感触」ではなく具体的な「根拠」を
まず焦点を当てたのが来春の学生確保だ。大学側は次年度200人の学生確保を目標としている。市側によると、2026年3~8月にオープンキャンパス6回、ミニオープンキャンパス8回を開催し、参加者は1,285人。ただし、高校生は132人、保護者・家族87人、留学生17人で、一般参加者が1,049人を占めた。市側は、オープンキャンパスに参加した高校生が前年の約1.8倍となり、資料請求や高校生との接触数も増えているとして、大学側が志願者増に期待しているとの認識を示した。
これに対し朝長議員が求めたのは、「感触」ではなく学生確保を判断できる数字だった。 大学設置認可申請時には、高校生などを対象に学生確保の見通しを確認するアンケートが行われていた。朝長議員は、現在も同様の調査によって学生確保の見通しを検証すべきではないかと質問した。
市側は、設置認可申請時と同じアンケートは実施していないと回答した。申請時の調査では、有効回答1万2,129件のうち、「第1志望」で「合格すれば入学する」と回答した高校生は169人だった。それでも実際の初年度入学者は37人にとどまった。朝長議員は、200人の確保を目指すのであれば、前年より募集活動が活発になったというだけでは判断できないとして、学生確保の見通しを数量的に把握するよう求めた。
この点は小松市長にも向けられた。小松市長は4月28日の記者会見で、旭学園に学生確保について「確実な見通しや道筋」を示すよう求めていた。しかし、この日の答弁で小松市長が挙げたのは、前年と違って1年間を通じて募集できることや、オープンキャンパス、進学ガイダンス、高校訪問などの取り組みが増えていることだった。その実績が前年を上回っているとして、「今年以上の入学者数増が期待できると判断した」と答えた。
朝長議員は、目標200人は初年度37人の5倍以上になるとして、「昨年よりもいい感触だというレベルで2倍になったというのでも全然足らない」と指摘した。募集活動が強化されたことは確認できても、それが200人の学生確保につながることを数量的に示す材料は、この質疑では示されなかった。
財務評価は「市が分析」 外部専門家の確認なし
次に朝長議員が取り上げたのが、旭学園の財務状況だ。前日の豊村議員への答弁で、市は旭学園の25年度決算について「直ちに経営上の支障が生じる状況ではない」と評価していた。
朝長議員は、その評価について、公認会計士など第三者の専門家による確認も行うべきではないかと質問した。
市側は、大学から説明を受けた資料を「武雄市の方で分析をして評価した」とし、「公認会計士の方などにお聞きしたことではなく、こちらで分析をいたしました」と答えた。つまり、市の「直ちに経営上の支障はない」との評価は、外部の財務専門家による検証を経たものではなく、市自身による分析だった。
朝長議員は、「当事者が言うことをそのまま丸飲みで受け取るっていうのは、それは確認検証ではない」として、専門知識をもつ第三者による確認を求めた。
大学が撤退した場合、13億円はどうなる
朝長議員はさらに、学生確保が進まず、大学が撤退あるいは経営破綻した場合の備えにも踏み込んだ。
市が交付した補助金について、現時点で返還額を試算しているのかと尋ねたところ、市側は「旭学園が補助金の返還が必要となった際に、市の方で算定いたしますので、現在額の方は試算しておりません」と答えた。朝長議員は、最悪の場合を事前に想定しておく必要があるとして、試算を求めた。
さらに問うたのが、補助金を「請求できる」ことと、実際に「回収できる」ことの違いだ。市はこれまで、学生が集まらず閉校した場合には補助金や用地を返還してもらい、「市民の皆さんにご負担をかけない」仕組みをつくっていると説明してきた。これに対し朝長議員は、「返還の請求ができることと、実際に返還されるかどうかはまた別の問題」と指摘。法人に返還能力がなくなった場合にも回収できるよう、資産保全など補助金返還を担保する仕組みがあるのかを尋ねた。
市側は、補助金交付規則や交付要綱に基づき、経営破綻や財産の目的外使用、第三者への譲渡などの場合に「補助金を返還していただく仕組みを整備しております」と答えた。しかし、これは返還を請求する制度の説明である。相手方の資力が失われた場合にも実際の回収を担保する具体的な仕組みについては、この質疑では示されなかった。
「期待」と「備え」を分ける
朝長議員の質疑に共通するのは、大学への期待そのものではなく、その期待を裏付ける根拠と、期待が外れた場合の備えを確認しようとした点だ。
学生確保では、募集活動の「手応え」に対して数量的な見通しを求めた。財務では、市の評価を外部専門家が検証しているのかを問い、撤退・経営破綻については補助金返還の実効性を確認した。この質疑で、市が設置認可申請時と同様の学生需要調査を行っていないこと、財務評価について外部専門家による確認を行っていないこと、撤退・経営破綻を想定した補助金返還額を試算していないことが示された。また、補助金を返還請求する制度はあるものの、相手方の資力が失われた場合の回収を担保する具体策も示されなかった。
武雄市は、学生募集の取り組みが前年より強化され、入学者増が「期待できる」としている。しかし、期待することと、その実現可能性を検証することは別である。そして、期待が外れた場合に備えることもまた別の問題だ。
朝長議員の質疑で浮かび上がったのは、市が大学への「期待」を語る材料は示している一方、その期待を検証する客観的な根拠と、期待が外れた場合への備えについては、なお十分な説明が示されていないということだ。
次期武雄市長に求められること
武雄市は12月に市長選を控える。次期市政にとって、武雄アジア大学の学生確保や事業継続性にどう向き合うかは、重要な政策課題の1つとなる。
8日の一般質問で小松市長は、大学評価の1つの節目として「4学年がそろう時期」を示すとともに、次期市長選への出馬を表明した。小松市長は、その評価時期まで武雄アジア大学が安定して運営される見通しを、市としてどのように確認し、また、その間にどのようなリスクにどう備えるのかを、「期待」だけではなく「根拠」をもって武雄市民に具体的に示す必要がある。
(了)
【寺村朋輝】









