パワハラ山中市長辞職の横浜市長選『カジノ推進の菅元首相 対 ハマのドン』第二幕か

 パワハラ問題での山中竹春・前市長辞職にともなう「横浜市長選(10月18日投開票)」の様相が、カジノ推進の急先鋒だった菅義偉・元首相の動きでガラリと変わったようだ。当初は前市長不信任案提出で一致していた自民・公明・立民がポスト山中の統一候補を出して楽勝と見られていたが、自民推薦の原沢敦美予定候補と菅元首相らが面談したことを立民が問題視、独自候補擁立へと舵を切り、波乱含みになったというのだ。9月8日に集英社オンラインは「自民は『元ミス横浜』の女性弁護士を擁立へ…“ハマのドン”は山中氏を支持、出直し選が大混戦に」と銘打って、立民離脱に関する地元記者の解説を紹介したのだ。

「原沢氏が自民党の擁立過程で、菅義偉元総理(77)らと面談するなどして“お墨付き”を得たとの情報が流れ、とくに立民が問題視しました。というのも菅氏ら名が上がった人物がいずれも、カジノを含むIR導入を国策として進めたり横浜に誘致しようとしたりした面々だったからです」

 この記事を読んだ途端、私は「菅元首相 対 反対のハマのドン」のバトル第二幕が始まったことを確信した。山中前市長が初当選した5年前の市長選でも、ハマのドンこと藤木幸夫・横浜港湾協会会長は「カジノ推進の菅元首相と俺の戦い」と熱弁をふるいながら山中氏を支援、自民支援候補に勝利することに貢献した。一方の菅元首相は、お膝元の市長選で敗れたことから「選挙の顔として失格」の烙印を押されて退陣に追い込まれた。そのリベンジをはたすべく菅元首相が動き出していたというのだ。

 この集英社オンラインの記事に符号する動きは、現地取材を始めるとすぐに確認できた。山中前市長が再出馬会見をした前日の9月28日、山中竹春後援会の臨時総会が非公開で開かれた。藤木幸夫氏は欠席したものの、四男の藤木幸吉・藤木企業代表取締役が会場出口での囲み取材に応じた。そこで「カジノがやっぱり最大の争点ですか」と聞くと、藤木氏は「もちろん大事です。またカジノ(誘致)の雰囲気が出てきました。これは断固阻止しないといけないので私はそう思っている」と答えた。

ハマのドンの息子藤木幸吉藤木企業株式会社社長
ハマのドンの息子
藤木幸吉・藤木企業(株)代表取締役

    続いて「(自民支援の予定候補)原沢さんは、今はやらないと言っているけれども、将来やるかもしれないと含みをもたせているので」とも聞くと、藤木氏は「心配です。また心配になってきました」と答えた。

 実は、菅元首相らが支援する原沢氏から問題発言も飛び出していた。9月10日の出馬会見でカジノについて「今やるつもりはまったくない」と答えて、神奈川新聞が「IR誘致『今やるつもりはまったくない』」という見出しで報じた結果、将来的に含みをもたせたという印象を与えたのだ。

 これに注目したのが、昨年の横浜市長選で次点になった田中康夫・元長野県知事で、9月11日のXで以下のように発信した。

<IR誘致「今やるつもりは全くない」と中見出しを冠した「神奈川新聞」エッ「今は」  「IRカジノ誘致は白紙にする」2017年の選挙選では断言しながら2年後の2019年8月22日にはIR推進と発表した林文子女史を彷彿とさせる発言 立候補表明の原澤(原沢)敦美さん>
※原文ママ

 要するに、カジノ推進の急先鋒だった菅元首相ら自民党関係者が5年前のリベンジをはたすべく、将来的なカジノ再誘致に含みをもたせた原沢予定候補を市長にしようとしている近未来図が浮き彫りになり、その危機感から山中後援会は再出馬を促したようにみえるのだ。

 そこで翌日(9月29日)の山中前市長の再出馬会見で聞いてみた。

 ――カジノが争点ということですが、自民支援の予定候補の原沢さんは「今はカジノはやらない」けれども、将来的な含みを残していると。かつての林文子元市長と同じように、今はカジノ白紙だけれども途中で(カジノ)誘致に舵を切った林さんと重なり合うところがあるが、同じような役割を自民支援候補がやるのではないかということが出馬の動機の1つになったのか。
 (山中前市長が)初当選をしたときに強力に応援をしたハマのドンこと藤木幸夫さんは、「カジノ推進の菅元総理と俺との戦いだ」という応援演説もしたが、今回、藤木さんからどういう言葉をかけられたのか。

山中前市長 再出馬会見
山中前市長 再出馬会見

    山中前市長 一番目の質問についてはカジノ再誘致の動きは私は感じています。また断固阻止しないといけないと考えています。特定の候補がカジノ誘致をするのかどうかについての言及は控えるが、街としてカジノの再誘致をする動きを感じています。
 藤木幸夫さん、私の後援会の相談役ですが、これまで話をさせていただきました。「私(山中前市長)がどのような道を歩もうと全力で応援する」という言葉をいただきました。「カジノ誘致の動きに対して撤回を山中さんはしてくれた。その思いがあるし、そのことは今でもありがたいと思っている」と(いう言葉もいただきました)。「またこの間進めてきた政策に関しては本当に良かったと思う」と。しかし一方で今回の問題については「反省すべきところはしっかりと反省しなければならない。パワハラは翻るものではないし、しっかり謝り、つぐなわせる」という言葉をいただきました。

 横浜市長選の構図が複雑になってきた。当初の主な争点は「パワハラ市長イエスかノー」であったが、菅元首相らの動きで「将来的なカジノ再誘致イエスか未来永劫ノーか」という新たな争点が加わったのだ。結果が注目される。

【ジャーナリスト/横田一】

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