高島福岡市政の16年(3)元市議の視点での評価すべき功績と、残された課題

元福岡市議会議員 藤本顕憲 氏

 私は福岡市東区から市議会議員を7期、福岡県議会議員を2期務めた。これまで長年にわたって福岡市政に携わってきた元市議としての私の視点で、4期・16年におよぶ高島市政の功績と課題について、評してみたい。

高島市政の最大の功績~特区による財政再建

藤本顕憲 氏
藤本顕憲 氏

    まず、高島市政の最大の功績は、財政の立て直しであろう。高島市長は、特区の仕組みを徹底的に活用して福岡市の財政強化を図り、その手段をまちづくりに求めた。その象徴的なものが、天神ビッグバンである。この天神ビッグバンによって民間投資を呼び込んで都心部の再開発を進めていった結果、市の固定資産税収は大きく伸び、市の借入金は急速に償却されていった。市民の「借金」がこれほど早期に減っていった市政は、私の記憶ではほかにない。

 そして、この呼び込んだ民間投資によって市財政を強化し、それを財源として、小中学校の給食費の無償化や子どもの医療費の無償化といった政策が実現していった。増税ではなく仕組みで財源をつくり、それを子どもに還元する。これが高島市政の1つの柱であり、私は率直にこれを評価したい。

 それにしても、高島市長からは、良い意味で「政治家の匂い」がまったくしない。元アナウンサーということもあるのだろうが、的確な言葉を選んでしゃべり、芝居がかった仕草も見受けられないなど、市民や外に向けての情報発信が抜群にうまい。私もさまざまな政治家を見てきたが、政治家の匂いのしない人間で、あそこまでやれるのは珍しい。また、メディア映えというか、とても「絵になる男」でもあり、醸し出す存在感がすごい。政策面だけでなく、そうした点も、非常に市民に受けたのだろうと思う。

 ただ、残念ながら欠けていたのは、人事面での采配である。市役所は事務、技術、医療福祉、教育と、さまざまな専門の役者で構成される。ところが高島市長はそういう筋を一切無視して、経済局長を土木局長に、市民局長を水道局長に据えるといった人事を断行した。水道局というのは、技術が命のポストである。にもかかわらず、事務畑の人間が水道局長に据えられてしまう──これでは職員の士気が上がらず、専門職は育たない。この16年で、市役所の縦の筋が削られたのは間違いなく痛手である。

残された課題──緑と光、安全なインフラ

 もちろん、これまでの16年間にわたる高島市政の政策を、すべて手放しで評価するわけではない。私の目から見ても、まだまだ課題は多い。

 その課題の筆頭は、緑と太陽の光だ。天神に限らず、福岡市内を回るたびに思う。昔はどこからでも太陽が、空が見えたのに、今は見えづらくなった。高層ビルが街の真ん中に立ち、そのビル陰が空をさえぎる。

 一方で、本物の緑は圧倒的に足りない。グリーンボーナスなどの緑化政策も進めてはいるようだが、ビルの窓枠に植栽を飾ることが緑化だと思ってはいけない。木は夜の間に二酸化炭素を吸い、昼、光合成で酸素を吐いて大気に還す。この循環こそがまちの空気をつくる。だから、街中には本物の樹木が必要だ。東京が人口の割に空気のきれいなまちなのは、都心が高層化しても周囲の緑地の厚みがあるからだ。

 福岡市は、市民生活のなかに緑や自然が入り込んだ地方都市の在り方を、もっと自信をもって目指していいのではないか。

 次に、災害の時代の安全である。水害や地震のリスクが一段と増すなか、上下水道や道路といったインフラ構造物の点検と更新は急がれる。電線の地中化も進めたい。公園は行政が管轄する土地なのだから、防災資機材の格納庫や備蓄を担う地下空間を組み込む、といった公園機能の見直しがあってもよいだろう。住宅については、今回の熊本地震の被害状況を見ると、近代的な建物はほとんど壊れていない。建物が軽いことは、地震への強さに直結する。軽量で新しい建築技術を採用する住宅への支援を、もっと強化すべきである。

都市圏の交通と、博多湾の計画的な埋め立て

 そして交通である。鹿児島本線や西鉄の立体化で、東西の幹線はほぼ改善されたが、残ったのが空港と渋滞である。現福岡空港は、市街地に南北に長く鎮座していて、どこから道路を引いても断ち切られる。幸いにして、今は滑走路部分の直下を除けば、空港地下に道路や地下鉄を通すことも、法律上はできるようになった。そのため、地下鉄を国際線ターミナルまでつなぐことも、技術的には可能になっている。

 さらにいえば、福岡の地下鉄は市内にしか走れず、バスは運転手の確保すら難しくなった。大阪メトロは民営化されて、都市圏のどこにでも地下鉄を走らせられる。福岡も将来的には地下鉄の経営の在り方を改め、糸島から春日市、大野城市、太宰府市など、都市圏全体に地下鉄を届かせる構想を描いてもいいはずだ。

 もう1つ、福岡市の宿命的な課題は、博多湾の浄化である。湾には、約5億トンともいわれる化石ヘドロが沈んでいる。掘ってもすぐ崩れ、深い喫水が保てず、大型船はなかなか入ってこない。

 このヘドロと永久に付き合い続けるより、私は計画的に博多湾を埋め立てて「大地」をつくることを提言したい。アイランドシティは、地下鉄工事の残土があったからこそ、人工島として成り立った。土を持ち込めばヘドロは固まる。その都度、場当たり的に埋めるのではなく、100年単位で博多湾の陸地化を進める設計を描くべきだ。100年後には、湾の3分の1ぐらいが陸地になっていても、おかしくはない。

 埋立てと自然保護は両立しないと思われているが、そうでもない。かつて雁の巣の埋め立て計画は、野鳥への配慮を訴える動議として議会にかけられた。私はその賛成者の1人として一役を担い、計画は人工島方式──つまり現在のアイランドシティへと転換した。埋立ては設計次第で、自然と共生できる。

単身世帯4割の時代、民生委員の増加・活用を

 今、福岡市の世帯の約4割が単身世帯であり、1世帯あたりの平均的な構成員は1.9人ほどだという。若い独身者が都心に集まり、老いた独身者が増える。そのため、人口増が続く福岡市内であっても、町内会や自治会は、どこも崩壊の寸前だ。

 だから私は、民生委員をもっと増やし、活用すべきだと訴えたい。地域を看取り、支える人間がいなければ、まちはもたない。

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 福岡市には、無限のポテンシャルがある。しかし、そのポテンシャルは、市単独の利己的な成長だけでは開花しない。周辺の自治体と手を取り合い、学生や高齢者、外国人も含めた多様な人々がその恩恵を享受できる「広域都市圏」としての誇りをもつこと。そして、目先の利益ではなく、100年後の市民に対して「私たちは最善を尽くした」と胸を張れる決断を下すことだ。

 高島市政の16年は、福岡に「都市経営」という発想を持ち込み、財政という土台を立て直した16年だった。そのうえで、次の100年の福岡には、都市に緑と光を取り戻し、安全なインフラを保ち、博多湾を計画的に未来の大地に変えていくという仕事が残されている。福岡市の次のリーダーには、高島市政の良い部分は継承しつつも、残された課題を解決していく気概を期待したい。

【文・構成:坂田憲治】


<プロフィール>
藤本顕憲
(ふじもと・あきのり)
1944年8月、福岡市出身。福岡高校および早稲田大学第一法学部卒業。83年に福岡市議会議員に当選。3期の任期の後に、95年から福岡県議会議員に2回当選。07年4月から再び福岡市議会議員に当選し、市議会議員を計7期務める。(一社)国土政策研究会理事九州支部顧問、(一社)福岡県空手道連盟会長、(協組)福岡卸売センター顧問などの要職も務める。

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